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02


「任務終了…名無しさん、お疲れ様」

「いえ、隊長こそ。…サクッと着替えてきます」



どうやらあの料亭全てが黒だったようだ。行方不明になった者、主に美しい女性達は大名の性欲処理として弄ばされたりと非道な事が行われていた。その中では人身売買もあったらしい。直ぐさまそちらの方も人を派遣しなければいけない。先に木分身で報告を出そう。その間に彼は普段の暗部の服装へと着替える。

…全く、金持ちや地位のある人の考えは理解し難いな。嫌悪しながらも無事、里に帰還。



「一足先にボクの木分身が報告に行ったんだけど、詳しい報告書は後でいいってさ。だから今日はもう解散で問題ないよ」

「分かりました、オレもなるべく早く報告書作っておきます」

「出来たら教えて、纏めて出すから。…そういえば、もう君の顔知ったから里で会っても分かるね?」

「その時は無視させて頂きますね」

「あはは、それは悲しいから挨拶くらいはして欲しいかな」

「オレと里で会ったからと、別に喜ぶ事でもないでしょうに」

「喜ぶとかそういうのじゃなくて…まぁいいや、とりあえずこれからもよろしくね」

「えぇ、それでは」

「…また里で会えるのを楽しみにしている、じゃあね」



興味が無いと言わんばかりの反応、ボクの言葉はきっと右から左へと受け流されているのだろう。もう少しコミュニケーションを取りたいんだけどなぁ。そんな虚しさなど知る由もない彼は、軽く頭を下げて瞬身の術でその場から去っていった。



「さて、ボクも帰るか…っと、しまった。名無しさんのクナイ預かったままだったな」



ポーチに手をやると自分の物ではないクナイが数本。クナイは里から普及されるが、やはり使い慣れたもの一番手に馴染みしっくりくる。戦闘が始まれば一瞬の隙が命取りになる事だってある。たかがクナイと、舐めちゃいけない。報告書を出す時に会えるが早いに越した事はない、ボクは名無しさんを追う事にした。

彼の気配は既になかったが、任務の前にボク特製の発信機を飲んでいたのでチャクラを練ると名無しさんの居場所を探る事が出来た。



「ここから、そう遠くはないな。よし」



移動を開始。すぐに彼を見つける事は出来たが───なにか嫌な胸騒ぎがしたので敢えて声は掛けずにそのまま尾行をする事にした。少しばかり気が引けるが、直感を侮ってはいけない。



「……ボクの杞憂であってくれよ」



少し離れた場所から監視。
すると一人の女性が彼に寄り添う姿が視界に入った。その人は相当酔っているのだろうか、足元が覚束ない様子。

名無しさんの苦手そうなタイプだな…

そんな事を思った矢先、ボクは驚愕する事に。
其れは一瞬の出来事。彼は躊躇なく女性の首筋に手刀を当てて気を失わせると同時に、そのまま担いで何処かに立ち去ったのだった。



「拉致…?」



一般人に手を出すことはタブーだ。下手をすれば処罰モノ。しかし状況がイマイチ掴めない、いくら絡まれたからとはいえ気を失わせるだなんて。もしかしたら、なにかの極秘任務かも知れない。それならばボクが安易に首を突っ込んではいけない案件だ。



「とりあえず、様子見だね」



さすが現役暗部、厳重な門の監視をいとも容易くすり抜け里外へと出向く。だけどボクだって負けちゃいない。同じように監視をすり抜け、一定の距離を取りつつ彼を尾行。
辿り着くのは森の中にひっそりと佇む廃屋。まさか尾行されてるなんて思いもしないだろう、周りに気を配る事もなく中に入る名無しさん。

物音を立てず屋根に上ると、運よく小さな穴が開いていたので其処から細心の注意を払いつつ中の様子を探る。拉致された女性が意識を取り戻したようだが会話はあまり聞こえない。ただ思わしくない雰囲気には違いないだろう。

平常心を保ちつつ、どうすべきか考えていると唐突に聞こえる名無しさんの高笑いと、途切れ途切れに聞こえる言葉。



「…ほ…く…だろ。これはふ…しゅ…だ。醜い…アンタ…れた…醜いわ…オレ…ははっ!!!」



これはマズイ、今にも手を掛けてしまいそうだ。まだ会話は続いていたがそんな事は気にしてられない。慌てて止めに入ろうと屋根を破壊し駆け出すと───ボフンと煙が舞い立ち、シルエットが浮かんだ。
長身で細身、そこは変わらない。だけど胸の膨らみに、程よく脂肪が乗りツンとなったお尻。
全体的に丸みを帯びたものが其処にはあった。

それは明らかに一人の女性。



「…名無しさん?」

「…隊長!?」

「た、たすけ…」

「…っ、来い!」

「そうはいかない!木遁、四柱牢の術!」

「!!」



まさかのボクの登場に焦り、横にいた女性の腕を掴み逃げようとする名無しさんと思しき女性。彼が男か女か、今は問題ではない。
ここで逃がすと大事になってしまうと判断し、彼ではなく拉致された女性の方を術で囲む。人質のいきなりの制止に体勢が崩れた瞬間、鳩尾を殴ってその場に押し倒し流れるように片手で関節を決めながら四柱牢の術を解く。



「今のうちに逃げるんだ!」

「っ!!」



青ざめ震えていた女性は、その一声で我に返り拙い足取りで駆けていく。



「…念のために付けておくか」



人質である人を怪我もなく無事に逃がす事は出来たが、見る限りヒステッリクな一面がありそうなのでなにを仕出かすか分からない。チャクラを練り素早く印を結んで木分身を作り尾行をさせた。



「っ、離せ…がはっ…」

「…この状況で離すと思うかい?」



思ったより深く入ったのか、咽る名無しさん。冷静に言葉を掛けはしているが、内心かなり焦っている。
改めて、押し倒した人物を見る。顔は紛れもない名無しさん。しかしその身体は特有の柔さかを持った正真正銘、女性のもの。



「はぁ……っく、ははは!」

「…なにがおかしい。いや、そんな事より今までの君はそれこそ変化の術だった…と?」

「ふふふ…そうさ、変化の術だ。オレは物心ついた頃からずっと男として生きてきたんだ」

「なんの為に…」

「復讐の為だ!!」

「復讐の、為に?」



目を見開き、変貌した姿。
自分が知っている名無しさんはすでに其処にはいなかった。



「…一体、君になにがあったんだ」



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