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「#エロ」のBL小説を読む
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01


自分は至ってノーマルだ、それは色んな意味において。だけど最近その思考が変わってきた。正確には歪んできた、の方が正しいかも知れない。



「やぁ、久しぶりだね名無しさん。元気にしてたかい?」

「お久しぶりです。ええ、いつも通り走り回ってますよ」



ペイン襲撃後、里は荒れ果てていた。
ボクは復旧に回りつつも、里の均衡を保つ為に里外の任務に就いたりと多忙な日々を送っていた。そして、久々に暗部の任務に就く事になった今日。



「それは元気というのかい?」

「生きているから元気の類になるのでは?」

「まったく君って奴は…変わらないね」



2マンセル、パートナーは暗部時代によく組んでいた名無しさん。
長身で細身、だけどしなやかな筋肉がついて、その華麗な動きに人々は翻弄され魅了される。顔は面で隠れているので素顔は知らないが、きっと整ったものがそこにはあるのだろう。その所為か、彼は女性と間違われてもおかしくないほどに美しいという言葉がすんなりと当てはまるような気がする。



「オレは変わりませんよ。だけど、テンゾウ隊長は少し変わったような気もしますね…あぁ、失敬。今はヤマトでしたか?」

「そうだね、今はヤマトだからその名で呼んでくれると助かるよ。…というよりボク、そんな変わったかい?」

「えぇ。どこが…と言われると答えにくいですが…曖昧ですみません」

「はは、謝る事でもないだろう?」



相変わらず律儀というか…

この子はいつだって相手を敬う。
その謙虚な性格が気に入られて、暗部内でも性別問わず人気がある。もちろんボクだってその中の一人、むしろボクの中では彼が一番のお気に入りだ。変な意味じゃなく、人として好いている。性格も人当たりもよく、実力だってある。そんな人を嫌うわけがない。



「そうですか?」

「そうだよ、本当に君は変わらないな」

「そりゃ変わりませんよ。ずっと任務なんですからね」

「それはボクもだけど?」

「はは、そうでした」



他愛ない会話をしながら任務にへと駆ける。

今回言い渡された内容は行方不明になった者達の詮索と救出。普段なら正規部隊に回される案件だが状況が状況だった。いなくなる者達は決まってある場所───それは大名ご用達の店。



「見た目は普通の高級料亭ですか」

「あぁ…。行方不明になった人はみんな此処に食事をしに来た。が、そこから誰も姿を見てないそうだ」

「明らかに黒。だけど此処が大名お気に入りの場所なので迂闊に手を出せない、と」

「そんな所だね、だからボクらの出番ってわけさ」

「やり方は?」

「こっそり潜入して…」

「待って下さい。それじゃいつになるか分かりませんし、下手をすればまた被害にあう者が出てしまいます」

「…それはそうだけど」

「隊長の慎重な所は変わってませんでしたね、一つオレにいい案があります…。まずは必要なものがあるので、その調達を」

「名無しさんの案ね…よし」



慎重に勝るものはないと思うが、長年組んでいたパートナーの名無しさんは昔から頭の切れる子だった。そんな彼のいう事を信じるのもありだろう、ボクはその案に乗る事にした。



***



「…で、必要なものって…女性の服一式と化粧道具?」

「まぁ、見てて下さい」



頭の切れる者は言い方を変えると、常識的な考え方に囚われないという事で…つまり変わっているとも言えるわけで、彼もそうなのだろうか?
意図が理解出来ずに調達した物を名無しさんに渡すと、おもむろに暗部の服を脱ぎ出す始末。



「ま、さか…君」

「ふふふ」



不適な笑みを見せた名無しさん。
すぐさま、引き締まった上半身が露になった。
そこへパットをつめた女性の下着を着けて胸の膨らみを作り、露出の控えめな服とロングスカートを着用。クナイの装備はもちろん怠らない、しかし目立たないようにあくまで数本。残りはボクが預かる事に。最後に面を外し軽く化粧を施して出来上がり。



「化けたね…」

「どうも」



彼の案、ボクの予想は当たった。
それは女性になりすまし正面から出向くという…ある意味、荒業。



「変化の術もありですが…そんなチャクラ勿体無いですしね」



暗部は基本は面を外す事はしない、しかし今回は任務の為なので顔を晒すのは仕方ないが…
始めて見る素顔に息を飲んだのはいうまでもなくて。パッチリとした瞳に、長い睫、憂いを帯びた表情。もちろん化粧をしているからだが、これはどこから見ても女性だ。
もちろん彼が男だというのは知っている。見た目の振舞いや身体の華奢さにより、よく女と間違えられる事も多々あったが、怪我をして露になるペッタンコの上半身を見たりしてみんな、落胆…いや、男だと納得するのだ。



「なんていうか、すごいね」

「声は少しハスキーですが、問題ないでしょう」

「うーん、男でも化けるもんなんだね」

「まあ、元々オレは女顔のようですし」

「初めて君の素顔見たけど、確かにそうだね。だけど改まって男なんだと認識したよ」

「あぁ、着替えですか…いやにジロジロ見てましたね?なんですか、隊長ってもしかしてソッチの気あったんです?」

「なっ…そんなわけない!」



慌てて反論するも、目の前にはどこからどう見ても一人の美しい女性がいる。男だと分かっていても、この美しさには惹かれてしまう。



「へー、その割にオレの裸を凝視してたじゃないですか?」

「…」



確かに見てしまった。
妙に色気があって、つい凝視をしたのは認めるが…これは口には出してはいけない。



「隊長?」

「…ボクはノーマルだっ!」

「くくっ…あれですね、やっぱ変わりました」

「え?」

「オレの知ってる隊長はこんな風に反論も大声を出す事もなかった」

「…忍び失格だな、ボクは」

「なぜそう思うんですか?オレはそうは思わない。感情を出せるのは素晴らしい事じゃないですか。あれだ、きっと隊長の周りにいる人の影響ですね」

「周り…」

「ええ、オレはそんな風に感情を晒し出す相手がいない。暗部を長くやってると自然と他人との関わりが減っていく。…いつ死ぬか分からない自分と関わってもね」

「名無しさん…」

「あぁ、別にこの道を選んだ事は後悔してませんよ。…で、周り人達に覚えはあるんですか?」

「…そうだね、仲間のお陰かも」

「仲間…ですか」

「もちろん、君もボクの仲間だよ?暗部を離れたからといってそれは変わらないし、現役の頃は一番信頼していたしね」

「…どもっ。そうやって人は成長して前を向いていくんですんね…オレも出来るかな」

「あぁ、出来るよ。大丈夫、ボクが保証するよ。…さて、そろそろ動こうか。一応これ飲んでおいてくれるかい、発信機だ。名無しさん、悪いが後は任せたよ」

「了解…」



なにやら妙な雰囲気になってしまったが、互いに気持ちを切り替える。

普段から死線を乗り越えてきた彼にとって、容易い任務だろうが油断は禁物。ボクは屋根裏から侵入し、彼を見守る。
だが、それは余計な心配だったようだ。

名無しさんの美しさに大名は魅了され、すぐさま本性を現し…そこからはあっという間。







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