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肩書きなんていらない


自分で言うのもなんだが、ワシは【四代目火影の師】【伝説の三忍】【蝦蟇仙人】やら色々と讃えられる。

生ける伝説といえばいいのか…
それでも、行き着く先はただ一人の男。


「ふぅ、疲れたのォ…」


いつものように取材をしていると、覗きがばれて追いかけられ…
いやいや、サインを求められて。

行きつけの茶屋に腰を下ろし一息をつく。


「どうもインスピレーションが湧かん…そろそろ引退か?」
「それは忍として?それも作家としてですか?」
「ん、おぉ、名無しさんではないか。もちろん、どちらも冗談じゃ!」
「ふふ、お久しぶりです自来也様。里に戻ってらっしゃったんですね」


声がした方向を向くと、スラリとしたおなごがいた。
彼女の名前は名無しさん、この里の上忍。
その実力はあのカカシと肩を並べる。


「つい先ほどな、しかし何年振りかのォ?今日は非番か?」
「三年振りくらいですかね?ちなみに今任務から戻ってきた所です」
「そうか、そうか」


任務帰りということは、これから綱手の所に行って報告をするんだろう。

時間があれば、一緒に茶でも誘おうとしたが…


「あの、これから何か予定はありますか?」
「ん?いや、今日は特にないぞ」
「じゃあ良かったら、私に付き合ってくれませんか?」
「…なに?」


まさか、名無しさんからお誘いとは。

今日のワシはついてる?
 

「任務報告、さっと終わらせて来ますので…どうでしょう?」
「フハハ、このワシが名無しさんのデートを断るとでも?」
「デート…ってもう、じゃあ交渉成立ですね。また後で」 


ドロンっと煙を立てて、名無しさんはその場から消える。

 
「交渉成立…も、どうかと思うぞ」


彼女は自由奔放。
何にも囚われず、己が路を行く。

その凛とした瞳には何が映っているのか、その瞳にワシの入る余地はあるのだろうか。


「はぁ、情けないのォ…」


いつから、こんな臆病になったのか。

もうずいぶん前からワシは名無しさんを好いている。
それも本気の恋。いつもの様に、のらりくらりと手を出すなんて出来るわけもない。

何故なら彼女は、ワシの事を尊敬すべき忍としてしか見ていないから。


「この関係を壊したくない…」


尊敬すべき忍なら、それに応えなければ。
ワシは目を閉じ、名無しさんの望む存在になる。



***



「お待たせしました」 
「うむ、随分時間がかかったの…って、その格好は…」
「…浴衣、似合いません?」
「い、いや…!よォ、似おうとる…」 


一刻ぐらい経ち、あまりにも遅いと心配になった矢先に現れたのは…

忍装束ではなく、落ち着いた感じの浴衣を着た名無しさんだった。いつも無造作に括られていた髪は、上で纏められ、綺麗なうなじが姿を見せる。
顔もほんのりと化粧をしているようで、色っぽい。


「良かった…。ね、自来也様…今日お祭りがあるんです、一緒に行きましょう?」
「お、おう…」


これはまさしくデートでないか。

ゆっくりと祭りの場所へ移動する。
チラッと横目で名無しさんを見る、凛々しい瞳は健在で、だが今日の彼女は嫌というほど、女を醸し出していて。

顔に熱がこもる。


「どうしました?」
「あ、いや…美人になったと思うてのォ…」
「自来也様にそう言われるなら自信持っても良さそうですね」
「あぁ、それは保証してやる!しかし…ワシとで良かったのか?」
「私が傍にいるのは迷惑ですか…?」
「…そういう意味じゃないんだが」


そりゃ嬉しいに決まっている。
が、こんなに美人なら他の男が黙っているはずもないだろう。


「…じゃあどういう意味です」
「恋人の一人くらい、いるだろう?」
「いた事も、あります…けど、ずっと慕っている人がいて…」  
「なんと…」


それはつまり名無しさんが、ずっと片思いをしていると?

こんな非の打ち所がない女に、靡かない男いるとは。羨ましくも、腹立たしい。

ワシは…名無しさんの悲しむ顔なんて、見たくない。


「誰なんだ、その男は?言うてみろ、力になれるかもしれん」
「…その人は…」
「…もしや、カカシか?」
「えっ」
「そうなのか?」
「ち、違」


あのドスケベめ…

ワシの書いた本でムフフとしている暇があるなら、名無しさんの気持ちに応えてやらんか。
それが男ってもんだろう。


「案ずるな、ワシに任せろ!名無しさんはちと、ここで待っておれ」
「ちょ、自来也様!」
「何だ、庇うのか?」
「庇うも何も、カカシじゃありません!」
「…じゃあ、誰だというのだ。そんな必死になって…ワシの知らない奴か?」
「…バカ」
「?」
「バカ!自来也様のバカ、バカ!!」
「なっ!?」


驚いたのは、罵声を飛ばされたからではなく。
涙が零れ落ちていたから。


「もう、知らないっ…!!」
「っ、名無しさん!!」


彼女よりも素早く動き、腕を掴んで引き寄せる。
こんな形で抱き締めたくなかったが、逃げられても困るからの。痛くない程度に力を込めると、ビクッとなる身体。


「…何故、泣く?」
「…自来也様が…」
「ワシが?」
「私を、女として見てくれないからっ…!」
「…!?」
「分かっています、あなたに相応しい女じゃない事なんて…!歳も離れてるし、名声だって天と地の差だもの…。それでも、私は…あなたが、自来也様が好きで、好きで…!」
「な、ならば…名無しさんのずっと好いておる男とは…ワシ?」
「っ…ごめんなさい…好きになってしまって」


まさか、名無しさんの想い人がワシだったとは。
これは相思相愛?

というか、何を言っているんだ。


相応しくない?
天と地の差?

馬鹿者。


「…名無しさん、ワシは臆病者だ。ずっと好きな女がいたが、振られるのが怖くて自信がなくて…自分を偽ってきた。その者が望む存在になろうと」
「…その人が、羨ましい…」
「そやつの名は…名無しさん」
「えっ…」
「…尊敬すべき忍として、讃えられてるものばかりと思ってのォ」
「…それが、恋愛感情になるのはダメですか…」
「そんなわけない…名無しさん、こんなワシで良ければお前の恋人になりたい」
「…自来也様っ…!」


どうやら、ずいぶんと遠回りをしてしまったようだ。

もう、これから離しはせん。


「愛しておるぞ」


fin


***
初、自来也!スイマセン、口調曖昧。





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