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あれから幾年が流れた、過ぎ去る怒濤の日々。
仲間も失い、己も失いそうになった。

だけど何処かで
【帰りたい】
という想いが胸の中にあった。


それはきっと…



---

 

「くっ…」


任務内容は他国へ潜入調査のちの、殲滅。
だが精鋭達が立ちはだかるその国は隙を一切見せることなく、月日だけが無情に過ぎた。
いつしか此方が飲まれてしまいそうになり、とうとう戦火への火蓋が落とされたのだった。
長引く戦いに苦戦し、武器や医療品、そして精気さえも消え失せていく。

ここで死ぬんだ、そう悟る。
忍として色々名を残し、悔いのない人生だったと目を閉じて思う。
だけど、男としてはどうだ。

想いは伝えた。
けれど君の記憶からは…
そう、だったら最初から何もなかったのと同じ事。
今、ここで朽ち果てても…


「…そんなの、男としてダサ過ぎでしょ…っ」


生きて帰れるに越したことはない。

いや、本音は生きて帰ってまた君に逢いたい。
さよならをしても、君がオレを忘れたとしても、オレは君を忘れられなかった。


そうさ【帰りたい】のは君に逢いたかったからだ。


「女々しいね…」


その想いを糧に、最後の力を振り絞り無事帰還。
そのまま火影様に任務報告をする。

時刻は夜。
それでも周りが何処か明るいのは月が満ちていたから。


「……」


足が勝手に進む。
其処は、いつもの場所。
いつも、二人で話していた秘密の場所。


「あぁ…」


視界に入るのは、あの日と変わらない君の姿。
遠くを見つめる儚げな瞳は、何を映しているのか。


「……カカシさん…?」
「…っ!?」


涙が零れた。

物音に反応した君がこちらに気付き、覚えているはずのない言葉が、その口から放たれたのだから。


「カカシさん…だよね…?」
「うん…」


記憶が消える病は治ったのか?
オレの事を知っているのか、覚えてるのか?

色々聞きたい事はあった。
でも言葉にならず、そのか細い身体を抱き締めていた。


「…逢いたかったよ、名無しさん」
「…私も…」
「分かるんだね、オレの事?」
「うん…」


ねぇ、もう一度伝えていいかな。

逢いたいという気持ちだけだったけど、オレを覚えているなら話は別でしょ?


「…何年離れても、オレの気持ちは変わらなかった。今回は帰って来れたけど、またいつ離れるか分からないし帰って来れるかも分からない。だけど、もう名無しさんを離したくない…傍にいたい」


いくら月日が流れても気持ちは変わらなかった。
君への想いは募るばかり。


「好きだよ、ずっーと昔から変わらない、だから今度こそオレに君を守らせて?名無しさんの特別な人でいさせて?」
「でも……断片的に記憶が戻っただけで、いつ消えるか分からない…」
「その時はその時、分からなったら、いつだってオレはまた色々話すよ。…愛を囁くさ」
「…ありがとう」


見つめ合い、自然と交わす口づけ。


空を見上げると、月の光が優しく降り注いでいた。
それは、まるであの日から見守っていてくれていたかのように───


fin




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