生まれ変わったら
▼生まれ変わったら
生まれ変わってもを先に読んだ方が分かりやすいかもしれません。
今日も今日とてオレの友人は絶賛ミニスカ女装中。
「ねぇユキちゃん、これどう?可愛くなぁい?」
「可愛くない」
昼休みに短いスカートをヒラヒラなびかせてターンする友人、もとい鈴之助に即答してやると、もうっ!と憤慨して椅子にドカリと腰掛けた。
いちおう女装してんだから足を乱雑に組むんじゃない。見えるだろ。見たくもないもんが。
「なによぅ!昔は綺麗綺麗って顔赤くしてたくせに!」
「うわ…人聞きの悪い事言うなよ」
眉をひそめて少しだけトーンを落とす。
今は昼休みの教室だ。
「それは前世の話だろ。あの時のスズは確かに綺麗で清楚で今で言うマドンナ的な存在だったけど」
「むしろその言い方古くない?」
鈴之助が惣菜パンを食べながら口を挟む。
「そっか?まぁとにかく前世は確かにオレの憧れのお姉さまだったけど」
オレも弁当の唐揚げを食べながら口を開く。
お互い前世じゃ考えられないガサツさだ。
まぁオレは前世からそんな行儀良く出来るタイプじゃなかったけど。
「190の男な時点で女装はアウトだろ。今でも綺麗な顔はしてるけどさ」
「やだもう惚れていいわよ」
口紅を引いた顔がニヤリと笑う。
前半聞いてたか?
「こんなデカい男に惚れねぇよ」
笑って言えば、鈴之助もケタケタと声を上げた。
「ねー。昔は男に生まれてちょう嬉しかったからー、調子に乗って伸ばしまくったの。今マジ後悔してるわー」
「なに。男に生まれたかったん?」
意外だ。
女装なんてしてるから前世の女を捨てきれないでいるんだと思ってたのに。
「そーそー。でも女のが良かったよねぇー。ほらアタシ綺麗だし?」
「デカいけどな」
でも確かに、女の人なら大した美人さんになってただろうな。
それこそ前世みたいに。
「そうだな、スズが前世のまんまだったらオレ惚れてたかも知んないなぁー」
「!」
軽く口に出したその台詞に弾かれたように顔を上げた鈴之助。
に少しビビったけど、まばたきの間にいつものニヤリ笑いに戻っていた。
「なぁに?もしかしてアタシと結ばれたくて男に生まれて来たとかぁ?」
突拍子のない鈴之助の戯れ言に笑いながら戯れ言で返す。
「そうそう!いやーだって女同士じゃ無理だからさぁーオレ頑張ったんだよ!」
「やだアタシ愛されてるぅー」
「でも結局また男同士っていうねー」
「ユキは何したって裏目に出る子だったもんねぇー」
「うっせぇそれは前世の話だ!」
頭を撫でてくる鈴之助の手をはたいてやると、楽しそうにクスクス笑う。
「そぉねー今は今だもんねぇー。色々予定は狂ったけど」
そしてオレの指先を掴んだかと思うと、それを口先へと運んでいった。
「弘之」
久々に呼ばれたフルの名前。
指先に鈴之助の吐息を感じる。
くすぐったくて手を引こうとしたけれど、逆に強く掴まれて叶わなかった。
「今度は絶対、オレが幸せにしてみせる」
ニヤリと笑うその顔に、何だか嫌な予感を覚えた。
END
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