生まれ変わっても


▼生まれ変わっても



『生まれ変わってもまた一緒に―――』



オレは小さい頃からよく前世の夢を見ていた。
夢だからどうしたって断片的で、しかも起きると大抵忘れている。
けどずっと見てればそれなりに記憶に残る時もある訳で、それによるとどうやら自分の前世は女だったらしい。

ちなみに、オレはごく普通の男子高校生だから昔は前世なんて思わずに「ただの夢じゃね?」で済ませていた。
でも今は前世ってものを疑ってはいない。
なぜって、前世で友だった奴が目の前に現れたからだ。

ちなみにそいつも自分と同じで前世は女、現世は男だった。
ただ、奴は前世の影響を多大に受けてるらしくて絶賛女装家中だ。
以前、目の毒だから止めろと言ったら

「だってこれマジ可愛くない?」

と返ってきた。
誤解のないように言っておくと可愛くはない。
元が綺麗だから見られなくはないけどあんなデカい女は嫌だ。
前世に捕らわれるとロクな事ないな。

さて、性別も容姿もまるで違うオレたちが何故お互いを認識したかと言えば、それはもう「なんとなく」としか言いようがない。
なんとなく、あ、こいつ夢に出てくるあの子だ。と思った訳だ。
190の男を見て。

…前世ではもうちょっと可愛げがあったのになぁ。

さてさてだいぶ前置きが長くなったけれど、そんな訳でオレはいま目の前にいる男を不審者だとも頭おかしいとも思っていない。

「じゃあ早川、挨拶を…え?おい早川?」

「やっと会えた…運命の人…」

例え初対面で顎に指をかけられてクラスメートの前で甘ったるい声を出されてもだ。

こいつとオレは確かに前世で清いお付き合いをしていた。
なんで分かるかって言われても、やっぱり「なんとなく」としか言いようがないんだけど。

「ゆき、可愛い…」

顎を上げられて引き寄せられて、目の前には綺麗な顔。
昔とは違うけど、端正な顔立ちなのは変わらない。
そうだ、オレは昔から不思議だった。なんでこんな綺麗な好青年がオレなんかを選んでくれたのか。
理由を尋ねたら「私にはおゆきが一番可愛いからだよ」と優しく微笑まれて、よく顔を赤くしたものだ。

変わらない。

姿形は変わっても、その目の奥は昔のまま愛情が籠もっていて、オレは口付けようと引き寄せる彼の手を取り。
引き離した。

「いやオレ男だから」

オレはもう立派に男で、女の子と何度かお付き合いもして、その快感を知っている訳で。

「男を性的対象に見れる訳がないっていう」

「お…おゆき…?」

「いやもうおゆきじゃないんで、とりあえず戻りましょうか。先生困らせちゃいかんよ君」

前世は前世。現世は現世。
前世に捕らわれてもロクな事にならないっていうのに。

相変わらず友人はこの男子校でただ一人ミニスカートを翻し、転入生は横からチラチラ憂いを帯びた目を寄越し。

全くロクなもんじゃない。



END


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