家族なんていらない


▼家族なんていらない



オレの父親は母が死んでから男に目覚めた。

そう男にだ。

これが息子としてどうかといえば、一言で言うと気持ち悪い。
差別とか言うな。
どこの誰がホモでも構わないが、父親となれば話は別だろ。

それをカミングアウトされた日、オレは項垂れてごめんと呟く父親に一瞥もくれずに家を出た。
別に家出とかじゃなくて近所のコンビニ行っただけだけど。

薄々感じてはいたから突然の告白って訳じゃなかった。
それでもショックは大きかった。一人になりたかった。頭を整理したかった。

そして整理なんて仕切れないまま家に戻った。

オレの父親に対する評価は相変わらず気持ち悪いで、そんな父親と二人きりの家は重苦しかった。
何より事ある毎にごめんと言う父親を見ているのは辛かった。

オレがまだ小学校のガキだった時、母さんといた時のあんたはそんな顔してなかっただろ。
いつもニコニコして叱るときは叱って、息子のオレが言うのもなんだけどいい父親だったじゃないか。
オレはあの頃のあんたが好きだったよ。母さんが生きてた時のあんたが。



そしてそれはオレが高校にあがる年、この家にいるのも辛いしバイトでもして一人立ちの準備を初めようと考えていた矢先に起こった。

「智基、あの、実は今日からお父さんのお付き合いしてる人と同棲、あっ、いや同居する事になったから」

そう言って紹介されたのは凄い妖艶な雰囲気の男だった。
一目見た瞬間、親父は騙されてるんじゃないかと思うほどのフェロモンだった。

「これからは家族五人で頑張ろうな」

しかも二児の父親だった。


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