隣人5
▼隣人05
「田中くんさぁ…宇田川さんとこ行くときとモチベーション違いすぎない…?」
オレの食卓に乗ったネコマンマを見てしょんもりする山なんとか。
もう流石に名前覚えたけどお前なんぞ山なんとかで十分だ。
「別にあんたに関係ないでしょう食う訳でもあるまいし」
「えっ食べさせてくれないの?」
いい加減こいつ殴ってもいいだろうか。
いや、もう何度か殴ってるけど。
「一膳しか無いのになんであんたの分だと思えるんですか」
「だって明日も夕飯お願いねって言ったじゃん」
「知るか」
「えー酷いひもじい一口だけ!ねっ?」
「知りませんインスタントでも買ってくりゃいいでしょ」
すげなく言うと山なんとかがむくれた。お前いくつだ可愛くねぇよ。
宇田川さんならいくつになっても可愛いけどな。
「宇田川さんにはインスタントじゃダメって言ってたくせにぃー」
「……何の話ですか」
「宇田川さん、田中くんすごいいい子だよねーってニコニコしてたのになぁー。本当はこんな人だなんて知ったらどう思うかなぁー」
そんな訳でオレは不本意ながら山なんとかを部屋に招き入れる事になった。
はなはだ不本意である。
「田中くんはいあーん」
「殴りますよ」
「えぇー全部もらっちゃ悪いっていう優しさなのに」
「…もういいからさっさと食べてください」
「っていうかあんまり美味しくないから全部はキツくて」
「殴りますよ」
宇田川さんに作る時は美味しいのにね…としょんもりしながらネコマンマをつつく山なんとか。
本気で殴っていいだろうか。
「田中くんって大学どこだっけ?」
ネコマンマをちまちま摘まみながら、山なんとかがそんな事を聞いてきた。
「なんでまた急に」
「んーきょう進路希望調査があってさぁ」
「…は?」
「今までは大学とか興味なかったんだけどねぇ」
「…はぁ?」
「田中くんとのキャンパスライフっていうのも面白いかなぁって」
「いや待て、ちょっと待って」
なに?と首を傾げる山なんとか。
こいつまさか。
「…年下?」
「ピチピチの高校三年生でぇす」
ひらひらと手を振る山なんとかに顔がひきつる。
確かに歳を聞かなかったオレもあれだけど、いやそもそもコイツと仲良くやる気なんてないんだからそれは仕方ない。
でもオレが大学生だと知った上でのその口のきき方なんだから同い年かもしくは年上だと思うだろう。
えもいわれぬ苛立ちのままに、ネコマンマをつつきながら「カップラーメンない?」とか聞いてくる奴の頭をとりあえず遠慮なく殴ってみた。
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