んなこと言われても6
▼歓迎会
「今日は新入生歓迎会だそうだ」
朝のホームルームでそう言われた。
アバウトだなホスト。そういうのって事前に決まってるもんじゃないのかホスト。
いいけど。
「歓迎会なんてあんのー?」
案の定ざわめくクラスメイトさん。
ですよね。もう五月も半ばだしね。
「例年はないんだがなんか理事長が言い出したらしい。昨日の夜」
急だな理事長。学校行事を思い付きで作るなよ理事長。でも授業が無くなるならナイスだ理事長。
ところで理事長って言われたとたん隣の宮沢がそわそわし始めた気がするのは気のせいか理事長。
いや心の中で理事長に問いかけても仕方ないんだけど。そもそも理事長知らないけど。
「という訳で今日の夜は全員参加の立食パーティーだから六時に体育館に集合な。一応出欠も取るからちゃんと来いよ」
なんだ授業が無くなる訳じゃないのか。
でもタダ飯か。素晴らしいな。
「ちなみに服装は自由らしい。お前らせいぜいオレをたぎらせる格好をしてこいよ」
キャーという黄色い声を上げた男子諸君、君たちは本当にそれでいいのか。
セリフだけならただのセクハラオヤジだぞ。顔か。顔なのか。
「なんでまたこの時期なんだろうなぁ」
「さあー。飯代浮くからいいけどな」
ホストが出ていって北島が寄ってきた。
掛けられた声に適当に返事を返すと、宮沢が弾かれたように立ち上がった。なんだなんだ。
「かかか加山、行くのか…?!」
「いいい行くだろ。タダ飯食わない手はないだろ」
真似してどもってみた。アフロで表情は見えないけどなんか焦ってるっぽい。
「うぅぅ、でも」
「なに、宮沢なんか用あんの?」
「いや無い、けど」
「けど?」
「それって、あの、昨日の…生徒会の人たちも来るんだろ?」
あぁなるほど。
「あの人たちなら大丈夫だろ。こういうイベントの時は忙しくてオレらに絡んでる暇ないって」
「そ、そうなのか?」
「いや何となくイメージだけど。何なら絡まれる前にさっさと飯食って帰っちゃえばいいし」
「いやまぁ、でも…なんか…」
なんでかグルグルと葛藤しているらしい宮沢。
そんなにアフロを取れって言われるのが嫌なのか。
それともオレが絡まれるのを不憫に思ってくれているのか。
前者なら激しく同意して頭をワシャワシャしてやりたい。
後者ならお前の友情という名の青春っぷりに頭をワシャワシャしてやりたい。
アフロ最高。
オレがアフロに狙いを定め手をソロソロと伸ばしていると、宮沢がキッと顔を上げた。
「かかか加山っ」
「ううううん?」
「オレがお前を守るから!」
「うん?」
どういう事かと首を傾げると、北島が「ちょっ二人の世界禁止!」と茶化してきた。
「違っ、あのほら、もし生徒会に絡まれたら加山困るだろうしっ」
アフロから覗く顔を真っ赤にして手をワサワサ動かす宮沢と、それを真似して「圭吾を手に入れたくばオレの屍を越えていけ!」と手をワサワサ動かす北島。
楽しそうなのでオレもワサワサ動かしてみた。青春だね。
しかし気持ちはありがたいが宮沢くん、オレは君といる方が目立つと思うぞ。アフロ的に。
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