んなこと言われても4


▼食堂



「宮沢、オレらこれから購買行くんだけど昼飯どうする?」
「あ、えっと、オレはちょっと、食堂行こうかなーって…」

昼休みに宮沢に尋ねると、挙動不審にアフロを揺らした。

「食堂…?あー、じゃオレたちもたまには行くか」

一応面倒見ろと言われた身だし、と連れの北島にそう提案していたら、なぜか宮沢に拒否られた。

「いやっ!いいっ!いいから!食堂にはオレ一人で行くから…っ!」

なぜに。
そのあまりの慌てように、北島と顔を見合わせる。
北島はめっちゃ背高いからオレはめっちゃ首が痛い。
ちなみにオレは身長172。普通。
北島は187。でかい。しかもまだ伸びてる。

「そうは行っても宮沢食堂の場所も分かんないだろ?オレもたまには食堂行きたいし」
「そうそう。オレたちの仲を気にしてんなら心配しなくていいのよ?間に誰が入ったってオレと圭吾は運命の糸で結ばれイテっ」

背伸びして北島の頭をはたいてやった。
奴は痛くもないくせに頭をさすって圭ちゃん酷い…とか涙を浮かべてる。
うざい。
出会って間もない宮沢を前にその手の軽口を言うな勘違いされたらどうすんだこの野郎。

「オレ久々にラーメン食いたい」
「オレ牛丼ー」

早々に嘘泣きを止めた北島は、オレの肩に手を回して廊下へ進んで行く。
北島はこの手のスキンシップが好きだ。
いいね。なんか男の友情だね。
たまにうざいけど。

宮沢も慌てて後ろに付いてきた。
可愛い奴め、とアフロをわしゃわしゃしてやると、へへ、と嬉しそうな声が聞こえてきた。
可愛い奴め。



久々の食堂は相変わらず混んでいた。
わいわいガヤガヤ。
こういう空間は嫌いじゃないから、生徒会の奴らが居なきゃもっと利用したい所だ。
飯うまいし。

なんとか空いてる所を見つけてラーメンと牛丼とオムライスを注文する。

「いいなー美味いよなオムライス。一口くれよ」

若干言いづらそうにオムライスを注文した宮沢にちょっとしたフォローを含めてそう言うと、宮沢はぅえええええ、あ、うん、とか吃りまくって北島は圭ちゃんカワイーとか茶化してきた。
北島うざい。

しばらくしてウェイターさんが料理を持ってきてくれた。
ラーメンからは湯気がもわもわ。
ちょう旨そう。

三人でいただきます、と言ったその時、宮沢の携帯が鳴った。
先に食べてて、と一言断って電話に出る宮沢。
オレはラーメンだから遠慮なく先にいただく事にした。

「うん、いま食堂で…。うん…オムライス…。いや、三人。は?いや意味分かんないよ、と、とととととも、だち…?だよ」

いちおう口許を隠して小声で話してるけど、けっこう聞こえる。
ともだち、っていう時にオレたちの方をチラチラ伺ってるのが横目に見えてちょっと面白かった。

「えっ?あー、加山くんと北島くん。えっ、そう加山圭吾…なんで知ってんの?」

待て宮沢それ相手誰だ。
なぜオレを知っている風なんだ。
チラッと北島を伺ってみれば、北島もオレの方を見て肩をすくめた。

「はぁ?んなこと言ったってもう料理来ちゃってるし。食べてるし。いや意味分かんないから。ちゃんと説明してよ。いやなんで加山だけ?」

あまりに連発するオレの名前に、失礼だとは思いつつもどうかした?と電話中の宮沢に聞いてみた。
宮沢は通話口を手で塞いで首を傾げる。
目はアフロで見えないけど、たぶん怪訝な顔をしてるっぽい。

「いやなんか、食堂から出ろって」

そりゃ確かに意味わからんな。
と思ったその時、食堂に何かもうすごい悲鳴が聞こえてきた。
歓喜の。

久々に聞いたこの悲鳴はやっぱり耳が痛くなる。
北島は隠すようにオレの頭を押してきたし、宮沢なんてびっくりし過ぎて椅子を倒していた。

「なななななに?!」
「生徒会」
「アイドルじみた美形集団なんだよなー。関わりたくないから小さくなってようぜ」

オレの簡潔な説明を補足して、宮沢にウインク付きでシーっていうジェスチャーをする北島。
似合わなくないのが何とも言えない。
まぁその意見にはすこぶる賛成だから、オレはさっさと帰るために顔を伏せてラーメンを啜る。

「あぁー圭ちゃんだぁー」

何か無駄だったらしい。
チャラ男会計の声にしぶしぶ顔を上げれば、役員の皆様が嬉々として近づいてきた。

何かすごい面倒くさい予感がした。


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