居酒屋せんべろ2 おかわり


せんべろ2が思いのほか好評だったのでオマケの小話



居酒屋せんべろの個室にて。
やっぱり正座で手を握るオレ。
目の前には前と同じキラキラ店員。

「お客様、お姫様だっこさせて頂けませんか?」
「………………」

ご注文はお決まりですか、の聞き間違いでは恐らくない。

「そんなに引かなくても」
「……何なんですか開口一番」
「だって私は王子様であなたは私のお姫様でしょう?」

面倒だからツッコまないぞ。

「無理でしょう、オレのが高いし。割と筋肉あるし」
「そうなんですよね、割とありますよね。何かスポーツされてたんですかお姫様」

ずい、と近づいてオレの腰を抱き込んでサワサワするキラキラ店員。

「……してないです、けど」
「けど?」
「ケンカを…」
「…するんですか?お姫様が?」

意外だ、とでもいいたげな声音。
その反応が意外だ。けど、実は正解だ。

「売られた時に逃げ切るための走りこみとかは、してました」
「………………」

常に睨むような目つきのオレは、みも知らぬ赤の他人に幾度となくケンカを売られ続けてきた。
おかげで逃げ足の速さは人一倍。
長いことそれで生きてきたから、もう慣れたけど。
うん。そう、慣れた。

「まぁオレこんななんで。その辺の不良とか、酔ったおじさんとか、酷いときはヤーサンとか、目が合うと怖い顔して向かってくっから、なんか、やむにやまれず」
「………………」

さっきからキラキラ店員がだんまりだけど、あれか、引かれたんだろうか。
それならそれでも別にいいや。変態だし。
もう、慣れたし。

思っていたら、キラキラ店員の綺麗な指がオレの顔をすくい上げて。

ちゅっ

「…………えぇ……なぜいま」
「そんなに引かなくても」

気持ち背をそらせて距離を取るオレの手に、キラキラ店員の手が重なって。

「私が、したいと思ったので」

ちゅっ、ちゅ、ちゅっ。
角度を変えて、啄むように何度も何度も。

「ちょっ、オレまだ頼んで、ン…っ」

キラキラ店員の体重がどんどんオレにかかってきて、床に倒れて、のしかかられて、キスもどんどん濃くなって。
抵抗するオレの手を、いつかのように恋人つなぎで押さえつけるキラキラ店員。

「んっ私がしたいだけなので、ちゅっ、ちゅ、お金は結構ですよお姫様」
「あふ、んん…っ」
「はぁ、ね、力を抜いて下さいお姫様。ちゅぷ、ンっ、私はあなたの、ちゅぷ、王子様なんですから」

くちゅ、ちゅ。

「ね…、オレの前では強がんないで」



何だろう、泣きそうなくらいゾワゾワした。





「じゃあ私がしたいだけなのでお金は大丈夫ですから生中1つよろしいですかお姫様」

一目散に個室から逃げ出した。


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