レベル100のつよつよ淫魔があらわれた!


 淫魔に触られるとエッチな気分になるらしい。
 特に顔の綺麗な淫魔は効果が凄くて、ちょっと手の甲を撫でられただけでセックスの事しか考えられなくなるんだとか。しかも淫魔の性別も相手の性別も関係なく。
 そんなのがもし満員電車になんて乗ったらとんでもない事になる。だから通勤ラッシュの時間帯は淫魔専用の車両が出来る。オレも淫魔の端くれだから一応そこを使わせてもらってる。
 とはいえオレは普通の顔だし、誰かと接触して事故が起こった事もない。友達は人間ばっかりだし、淫魔だって言うと最初は冗談だと思われる。
 そんなだから、専用車両に乗るのはちょっと気が引けていたりする。こっちを見る淫魔の視線が「なんで人間が乗ってんの?」って言ってる様に感じるから。

 だから一般車両にギリギリで乗り込んだ時、まぁ別にいいかって思ったんだ。けど360度から人の体に押し潰されて秒で後悔した。
 周りは上背のある男ばかりで圧迫感が半端ないし、腕は人と人の間に挟まれて抜けないし、踏ん張るために脚を開こうとして誰かの足を踏みそうになるし。満員電車ってこんなにキツいものなのか。完全に舐めてた。
 明日からは絶対淫魔専用の車両に乗ろう。他の淫魔の視線なんてこの苦行に比べたらなんて事ない。と目を瞑って決意してたら、お尻にある誰かの手がゆっくりと上下している事に気が付いた。
 まじか。オレも一応淫魔だったんだな。今まで一度もそんな事なかったけど、これだけ密着していると流石にエッチな気分になる人間もいるらしい。
 恐らく不自然に目を逸している右のサラリーマンだろうか。ジッと見てたら顔を背けられたのでたぶん当たりだ。
 痴漢なんてさせてしまって申し訳ない、と心の中で謝罪してたら後ろから他の手が伸びてきて今度は太ももを撫でられた。まじか。二人もか。オレってちゃんと淫魔だったんだな。

 これ以上被害を広げない為にも早く外に出たい所だけど、この電車は特快でしばらくは止まらない。
 せめて少しでも距離を取ろうと身をよじったら痴漢の手が弾かれたように一瞬離れた。お、これは行けるか? と思ったけどすぐ周りに押されて隙間が埋まる。とはいえオレが抵抗の意を示したからか、撫でるような動きをする事はなくなった。よしよし、もう大丈夫だろう。

 なんて楽観してたら二分もしない内にまた手が怪しく動きはじめた。まぁさっきみたいに身をよじればすぐに引っ込めてくれるだろう、と少し強めに身じろぎしたけど、人がギュウギュウすぎて痴漢の手に尻や足を擦り付けるだけに終わってしまった。
 仕方ない、オレが少しの間耐えればいいだけだ。そう諦めて身体から力を抜いた時、尻を撫でていた指が割れ目を辿って穴に触れて、ほんの少し、変な声が漏れてしまった。
 そしたら太ももをさすっていた手が一瞬止まって、また動き始めたと思ったらスルスルと股間の方へ伸びてきた。咄嗟に掴んで止めようとしたけど、乗客の間に挟まれた腕を引き抜くのに時間を取られ、ズボン越しにちんこをいやらしく撫でられて、「ア……っ」。

 恥ずかしい声が車内に響いた。

 すぐに口を塞いだけれどもう遅い。
 元々オレの身体に触れてエッチな気分になっていたらしい人達が、上擦った声に感化され四方から手を伸ばしてくる。

「ふっ、ぅ」

 膝を左右に開かれ、耳をくすぐられ、シャツの上から乳輪をくるくるなぞられて、オレまでエッチな気分になっていく。

「は、ひ、やめ、やっ、ぁっ、ンっ」

 何とか制止しようと声をあげるも、足の間に膝を入れられ股をズンズン突き上げられて言葉が切れる。逃げようとつま先立ちしたら咎めるように乳首を摘まれ膝が震えて自分から腰を落としてしまった。

「ふっ、っ」

 突き上げに耐えきれず目の前のサラリーマンにしがみつく。そしたら耳に舌を這わされて濡れたそこにフゥッと息をかけられた。

「ひっ、ぁ、ぁ、や……」

 顔を背けても耳たぶをしゃぶられ中に舌を差し込まれてグチュグチュ水音を立てられる。耳を直接犯されるような感覚に口端から涎が垂れた。

「ぁっ、ぁっ、だめぇ、えっちしちゃ、やっ、ぁっ、ぁっ、ぁっ」

 まずい、このままじゃほんとに―――。

『間もなく〇〇駅ー』

 車掌の声にハッとしてしがみついていた身体から距離を取る。周りの男達もビクッと身体を強張らせて手を引いた。
 電車が速度を落として止まり、開閉音と共に扉が開く。逃げるなら今しかない。

「降ります……!」

 大きな声で宣言してギュウギュウ詰めの満員電車を抜け出した。



「はっ、はぁ……っ」

 プシュッと音を立てて閉まるドアを振り返る。一人二人とは目が合ったけど、流石に引き止めるような仕草はなかった。
 いくら淫魔のオレに非があるとはいえ痴漢がバレたら不味いもんな。オレもあの人達も、さっきのは事故としてなかった事にするだろう。
 いやオレはなかった事にしちゃ駄目だ。二度とこんな事がないよう肝に銘じなければ。オレも淫魔。一応淫魔。満員電車だめ絶対。

 とにかく早く大学に行って落ち着こう、と気を取り直してホームを歩く。そしたら後ろから突然ボディバッグを掴まれて、びっくりして振り返ったらマスクをした男の人が立っていた。一瞬さっきの痴漢かと思ってバクバクしたけど多分違う。
 手には黒い皮の手袋をしてて、その手がグレーのマスクを顎にずらす。立ち姿からしてイケメンだろうとは思ってたけど、マスクを取ると更にイケメンだ。
 顔のいい淫魔には事故防止のため手袋をつけることが推奨されてる。恐らくこの人も淫魔だろう。

「さっき、何してたんですか?」
「えっ」

 まさか見られていたんだろうか。ボディバッグのベルトを握り締めてドクンと鳴る心臓を抑える。

「今日は珍しくいないなと思ったらそんな姿で出てきて」
「そ、そんな……?」

 この目、そうだ、見覚えあるなと思ったらウチの大学の淫魔の人だ。ちょこちょこ同じ電車に乗ってて、オレが乗り込むといつもこんな風にジッと見てきた。
 多分オレを人間じゃないかと疑ってるんだろう。その上さっきオレが一般車両から出てきたもんだから、「やっぱり人間じゃないか」ってなってるのかも。そうだ。そうに違いない。別にあれを見られた訳ではないはずだ。
 でも「そんな姿」ってなんだ。特に服が乱れてる訳でもないはずなのに。まさかどこかに体液でも……、と青くなって足元や尻を見回したけど別に何も付いてない。

「気付いてないんだ?」
「えっ、えっ?」

 イケメンの目がすぅっと細くなってオレの顎に手をかけた。途端に身体がゾクゾクして慌ててその手を振り払う。
 淫魔同士は耐性があるはずなのに、しかも相手は手袋もしてるのに、ちょっと触られただけでチンコが反応しそうになった。イケメン怖い。

「ふぅん」

 手をはたかれたイケメンが更に目を細くして意地悪く笑う。

「人間の男に触られるのは良くてオレに触られるのは嫌なんだ?」

 決定的な一言に弾かれるように走って逃げた。
 バレてる、見られてたんだ。でもあのイケメンは淫魔専用の車両にいたはずなのにどうやって。

「はっ、はっ」

 改札を出て階段を駆け降りながらイケメンに触れられた顎をグイッと拭う。そしたら手の甲がヒヤッとして、見たら僅かに濡れていた。そういえば涎が出てたんだった。
 ハッとして耳を触る。ヌルッと不快な感触がした。舐められた跡だ。なるほどあのイケメンはこれを見て、いやそれより顔、顔洗わなきゃ。でもトイレは改札の中だし、とオタオタしてたらまた後ろからイケメンにガッと掴まれた。今度はボディバッグじゃなくて、腕を。

「っぁ……」

 熱い。掴まれた所から全身が熱くなってゾクゾクとした快感が走る。
 嘘だろ、たった一瞬でこんなに? 混乱した頭で掴まれた腕に目を落としたら、さっきしてたはずの皮の手袋が外されていて全身からブワッと汗が吹き出した。

「酷いなぁ逃げるなんて」
「ぁっ、はな、離し」
「泣くほど? まぁ淫魔に耐性なさそうだもんな。淫魔のくせに」

 あざけりながら指を絡め取られて脳が痺れる。腰を抱き寄せられてセックスの事しか考えられなくなっていく。

「はひ、ぁひ……」

 顔のいい淫魔の催淫効果がこんなに凄いなんて。知識としては知ってたけど分かってなかった。想像以上の性衝動に涙がこぼれる。

「そんな顔じゃ大学なんて行けないな」

 舐められたのとは反対の耳に「休憩しような?」と囁かれ、腰をビクビク跳ねさせながら絶頂した。



「いっつも人間とばっかつるんで、誘惑してんのかと思ったけどそんなんじゃ無さそうだから見逃してやってたのに」

 気付いたらどこかの一室でイケメンに組み伏せられていた。後で知った所によると駅近くのラブホだったらしいけどそれどころじゃない。オレもイケメンも裸だ。さっき服着たまんま触られただけでイッたのに、今は裸で触れ合っている。まずい。これはまずい。

「満員電車に乗るってなんだよ。は? 犯されたかったの? 人間の男にあんあん言わされて気持ちよかった? なぁ」
「ちが、とめ、止めたぁ」
「へぇ? どうやって?」

 残った理性をかき集めて反論するも馬鹿にしたように返される。確かにイケメンの腰に足を絡めてチンコに尻を擦り付けながら否定したって説得力はないだろう。
 けどさっきは本当に止めてたはずだ。イケメンに触れてるせいでセックスの事しか考えられなくて上手いこと思い出せないけど、そうだ、確か、確か。

「ぇ、えっちしちゃ、やって、言っ、ぁぁぁぁあ……ッ」

 話の途中でぐぷぐぷとイケメンのチンコが入ってきた。反り返った竿で肉壁をミチミチ拓かれて、奥の腸壁を亀頭でグリグリ潰される。
 やばい。これはほんとに、セックスの事しか、考えられなく―――。

「はひゅっ、はひっ、ぁっ、だめぇ、えっちしちゃ、ゃっ、ぁっ、おくっ、ぁンっ、しゅごぃぃ」
「っはは、ンなおねだりされて誰が止めるかよ……っ」

 ごちゅっと強く奥を打たれて「ぉンっ」っと間抜けな声が出る。

「ぁっ、ンっ、ねだって、な、ぁっ、えっち、だめって、いっ、ぉっ、ぉっ、ぉっ」

 間髪入れず何度も奥を穿たれて、今にも中イキしそうなオレに「へぇ?」とイケメンが意地悪く笑う。

「じゃあ本当に止めて欲しいんだ?」

 腰の動きを止めてオレの指に艶(なま)めかしく手を這わせ、いわゆる恋人繋ぎをしながら聞いてくる。
 顔面偏差値100の淫魔にこんな事されて正気を保てるやつなんているんだろうか。まぁ同じくつよつよの淫魔なら行けるのかもしれない。けどレベル1の雑魚淫魔には無理だった。

「や、やだぁ、もっと、えっちもっとぉぉ」

 絡んだ指をぎゅうってしたらイケメンが「ふぅん?」って目を弓なりにした。

「じゃあキスして」
「きす……?」

 きす。きすって何だっけ。バカになった頭じゃ一瞬理解できなくて、そしたらイケメンが喉で笑って鼻先が触れそうな距離まで近づいてきた。そうだ、口を付ければいいんだ。
 いっかい、にかい、さんかい、はやくエッチして欲しくて何度も何度も唇を突き出す。

「んっ、んっ、きす、したぁ」
「ははっ、子供かよ」

 そしたらなんか噛み付かれて凄いキスされて三回くらい中に出されて、終わった後も抱き締めてくるからエッチしたいの止まんなくて、結局その日は大学にも行かずフリータイムが終わる夜六時までずっとセックスし通しだった。



「ヒッ」
「なんだその反応。おいこら逃げんな」

 数日後、いつもより早い時間に出て専用車両に乗ろうとしたら居ないはずのイケメンがいた。
 慌てて回れ右したけどボディバッグを掴まれて引きずり込まれた。無情にも扉が閉まる。これでこの電車は大学の駅までしばらくは止まらない。

「まさかまた一般車両に乗るつもりじゃないだろうな」
「や、それは無い……無いから離れて……」

 オレが隣の車両へ移るのを阻止するためか、扉の脇に押し込められて囲われる。しかも何の脅しか右手につけている手袋を目の前で外された。なにそれ怖い。
 両手でショルダーベルトを握り締め、イケメンに、特にその右手に触れないように縮こまる。明らかに絡まれてるのに他の淫魔は助けてくれない。
 あっ、いま座席のお兄さんと目が合った。
 助けて! と必死の形相で見つめてみたけどスッと目を逸らされた。
 その上イケメンに見咎められてグイッと顎を掬われた。

「なに他の男に色目使ってんの? この場で犯すぞ」

 物騒な発言よりも顎にかけられた手の催淫効果に「ひっ」と小さく声が出る。一瞬のうちに全身が甘く痺れ、カウパーがじわりとパンツを濡らした。
 まずい、これじゃこの間の二の舞だ。

「や、め……っ」

 顎を掴むイケメンの手を振り払って、けど逆にその手を取られてしまって、握られた手首から全身にブワッと熱が回っていく。その上「おしおき」と意地悪く笑ったイケメンがオレの耳に唇を寄せてきて。

「駅に着くまで離さねぇから」
「ひ……っ、ゃ……っ、ぁっ」

 低くいやらしい声で吹き込まれて身体がビクビク波打った。

「はは、なにえっちな声だしてんの」

 楽しそうに笑ってオレの手首を親指の腹で優しく撫でる。それだけの刺激で内ももが震えて立ってるのがやっとになる。

「ぁ、はなし、はなして……」
「離すわけないだろお仕置きなんだから」
「ぁ……っ、はっ、やぁ……やぁぁ……」

 お仕置きと言いながら耳にチュッとキスされる。掴まれた手首は親指でずっとスリスリされて、時おり甘く爪を立てられ引っ掻かれて。エッチな気持ちが溢れすぎて涙が出てきた。

「ンっ、はぁ……っはぁ……っぁ……っ」

 我慢出来ずに尻の割れ目を手すりに押し付け上下する。それでもイケメンは手首を離してくれなくて、駅に着く頃には息を吹きかけられるだけで甘イキするエッチな身体になっていた。


「電車でオナニーって何だよエロすぎだろ万回犯す」
「ふぉっ、ぉっ、ごめ、なしゃ、ィくっ、ィくっ、ぁんっ、イくのっ、とまンな、ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁー……ッ」

 結局その日もずっとセックスし通しだった。

 その後、イケメンと電車で鉢合わせる事がないよう大学近くの友達の家に泊まらせてもらって、でもそれがイケメンにバレて朝から晩まで密着放置(※)される事になるのはまた別の話。





※電車でやってたお仕置きの密着バージョン。逃げられないように後ろから抱き込んで耳元で囁いてチュッってして延々とエッチな気持ちにさせておきながら決定的な手出しはせずにイキ狂わせるとても怖いお仕置き。普通の人ならおかしくなっちゃうけど受けくんは仮にも淫魔なので離れれば正気に戻れるはず。なおお仕置き中は攻めくんも耐えなきゃいけないのでお仕置き後のセックスはとんでもない事になる。



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