五番くんのくちびる


 その唇には見覚えがある。大学のレクリエーションの時に同じ班になった奴だ。ふっくらしたその唇は、癖なのか常に薄く開かれていて、誘ってるのかと思った。あと時折チロリと唇を舐める舌。あれはもう誘ってた。正直ムラムラした。相手が男で、真っ昼間で、レクリエーション中で、周りに初対面の他人がいなければちょっと不味かったと思う。でなくても酒が入ってたら終わってた。学科主催の健全なレクリエーションで本当に良かった。
 そして今オレの目の前には、ネギしょった鴨がいる。ちゃんと言うと例の唇がオレにキスをねだって突き出されている。もうちょっとちゃんと言うとポッキーを咥えた唇が誘うようにオレに突き出されている。

「ほら光夫、王様の命令は?」

 割り箸に書かれた歪な王冠をひらつかせ、意地悪くニヤニヤする悪友。オレへの問いに、ぜったーい! と合唱する酔っぱらい共。
 サークルの新歓で男同士のポッキーゲーム。オレの引いた一番が指名されて、周りも盛り上がっていて、いつもならさっさとブチュッとして笑いを取る位するんだけども。なにせ相手は魅惑の唇。果たしてそれだけで済むだろうか。
 中々応じないオレへの催促か、五番を引いたふっくら唇がポッキーを卑猥に上下させた。下半身にきた。周りの囃し立てる声とか、五番くんの凡庸な顔とか、その眉間に嫌そうに刻まれた皺がなければ、正直まずかったと思う。
 いや本当に不味いのか? だって周りはこんなにもオレ達のキスを求めてる。このエロい唇を舐めて吸って真っ赤にして唾液でとろとろにするのを求めてる。五番くんだって表情は嫌そうだけど酒で頬が赤くなって見ようによっては誘っているような、というか確実に誘っている。もう唇が誘っている。そしてオレはいま酒に酔っている。よし不味いことは何一つない。

「おいこら光夫ー! いつまで引っ張るんだよさっさと――」

 五番くんを押し倒しながら咥えたポッキーをぺきっと折ってその唇にむしゃぶりつく。一瞬のチョコの味に恋して口の中の酒の味に酔って熱くてぬるぬるの舌に脳が痺れて見た目通りのふっくら唇にあらぬ所がジンジンした。

「ンンー! ンンンー!」

 座敷で手足をバタつかせる五番くんの身体を拘束、もとい抱き締めて逃げる頭を固定して唇と舌をぐちょぐちょにする。もがいて腰を浮かせるのが卑猥すぎてそこに固くなったものをゴリゴリと押し付けた。キスから逃げるのに精一杯でそれに抵抗する素振りがないので暴れて振り上げられた足を取ってM字開脚させて唇を貪りながらズコズコして服越しの疑似セックスにますますあそこが固くなる。

「ンっゃ、ン……ッ! ンン……ッ!」

 ビクッ、ビクン……ッ

 逃げる舌を執拗に追ってふっくら唇を押し潰しながらジュルルと吸うと五番くんの身体が大きく震えて抵抗がなくなった。そこでようやく唇を離して見下ろすと、しゃぶられ過ぎて真っ赤になったぽってり唇が二人分の唾液でトロトロになって、そこから覗くぬるぬるの舌も五番くんの顔もとろけていて。

「ぁ、ン……」

 弛緩した身体をヒクッと余韻のように震わせて発したその吐息は卑猥な唇から出るに相応しいだけのエロさがあった。よしお持ち帰りしよう。

「金二人分置いときます」
「……あぁ、うん」

 ポケットの財布から多めの札を出して幹事の先輩に暇を告げ、くったりした五番くんに肩を貸して退席する。
 そういえばあれだけ騒がしかった飲み会が途中から静かになってたな……どうでもいいか。
 そんな事より、と店を出て周辺のホテルを検索していたら、それまで静かだった五番くんがもぞりと動いた。

「……も、いいんで、……離してください」

 肩に回った腕を引っ込められそうだったので離さないよう力を込める。検索も中断してスマホをしまい、グイっと腰を抱き寄せた。

「離せ……ってかあんた、やり過ぎ……」

 オレを睨み付けてるはずなのに若干目の焦点があっていない。足元も覚束ないし、オレを突き飛ばす事もない。これはさすがにキスの余韻ではないだろう。

「五番くんそんな酔ってたっけ」
「…………一番さんが……あんなのするから酒が、回って……」
「なるほどオレのキスで酔ったと」

 五番くんは言い返す気力もないのか、無言でオレの足を踏んできた。

「も……あのサークル行けねーな……」
「あー、確かに」

 公開疑似セックスはさすがにやり過ぎた。でもそんな事よりこれからホテルでやる非公開のガチセックスのが大事な訳で。腰を抱く手はそのままに、肩に回した腕を開放して検索を再開する。

「まぁいっか……なんかノリ、合わねーし……」

 ぽしょぽしょと呟きながら腰に回したオレの手を外しにくるので逃がさないよう力を込めた。酔ってて力入ってないし、これで諦めたかと思ったら今度は指一本一本を外しにきた。こそばゆい。思わずふふって笑ってしまった。

「なにしてんの」
「……コンビニ行きたい……離してください」
「あぁ、下着買うの? やっぱりさっきイってたんだ」
「イっ……てねーし……離せもー!」

 酔っ払いの渾身の一撃でバランスを崩す。

「っぶね!」

 倒れそうになる五番くんを慌てて抱き止めた。そしたらやたら顔が近くにあった。そんでドラマみたいに数秒間見つめあった。のでドラマみたいにキスをした。
 うん、やっぱふわふわだわ。

「なッ、にし……ぅン……ッ」

 さすがに往来なのでチュッてしてすぐに離した。けど我慢できずにまたチュってして舌を入れてちょこっと中をかき混ぜて、したら「ゃ、ぁン……っ」なんてエロい声が漏れたもんだから店の脇の路地裏に引きずり込んでぐちゅぐちゅと音を立てて唇と舌を貪った。

「ンふっ、ンッンーッ」

 貪りながら五番くんのパンツの中にズボッと手を差し込んでみた。したらそっちからもグチュリと濡れた音がした。

「ふふ、やっぱりイッてたんじゃん」
「ぁ、も、はな、せ、ばか…!」

 ヤバい馬鹿って言われて興奮するの初めてなんだけど。だってキスでとろとろになった唇で「ばか」って。卑猥すぎるわ。

「もう無理ホテルとか待てねー」
「は? ホテ、ぇ、ぁっぁ……っ!」

 五番くんのちんこを取り出して扱く。他人に扱かれるのに慣れてないのかすぐに足をプルプルさせて口端から涎を垂らす。目の前でとろとろ唇から涎が溢れてこぼれていくの卑猥すぎてヤバい視覚の暴力すぎる。思わず涎を舌で掬い取ってそのまま五番くんの唇にねじ込もうと、したら察したのか五番くんがオレの顔を手で押し退けてきた。ムッとしてちんこを強く扱いたら「ひぐゥ……ッ」てデカい声が出た。
 とっさに手の甲で口を押さえる五番くん。確かにここはただの路地裏だから、今の声量だと表に聞こえるかもしれない。だがしかし。

「五番くんダメじゃん唇隠しちゃ」

 オレが視姦できねーだろ、と手をグイッと退けつつ片手でちんこを扱き続ける。

「ふっぁ、も、やめ、離せ帰るぅ……ッ」

 涎でヌレヌレの唇で駄々をこねる五番くん。あーヤバ。やっぱ見てるだけじゃ収まんない。けどさっきから五番くんがオレの顔おし退け続けてるからキス出来ない。出来ないと思うと余計したい。もうグチョグチョにしてオレとキスしないと生きていけない身体にしたい。そんでオレのキス強請らせたい。あ、そうだ。

「五番くんからキスしてくれたら帰してやろう」
「はっ? ぁっ、そこ、やめ」

 なに言ってんだこいつ、と言わんばかりの五番くんのカリを包み込んでズリズリする。

「この後ホテルでセックスしまくる予定だったけど、五番くんからキスしてくれたらここで解散してやるっつってんの」
「ひぁっ、ァッ誰が、あ……ッ」

 先走りどろどろのくせに強がる五番くんを思いっきり擦りまくる。

「ほら、このままじゃ声聞かれんぞ? いいの? ん?」
「ぁっァッぁっぁっァッァッァッァッ」

 ヌメヌメの舌から涎が糸を引いて垂れていく。声の間隔が短く大きくなってきて、目の焦点もちょっと怪しい。あと一押しかな、と思った所で五番くんが自分の下唇に噛みついた。

「ふ……っ、ンンー……ッ」

 ……は? オレ以外がその唇をそんな乱暴に扱うとか。チッと舌打ちして両手でズチュズチュ扱いてやる。

「ひッ?! ぁっおっぉっぁっはっふっぁンッぁンッ」

 堪らず口を開いて仰け反る五番くん。足もビクビク痙攣していて限界が伺える。

「ほら、どうすればいいか分かるよな?」

 オレにキスすれば止めてやると我ながら悪い顔で笑ったら、五番くんがまたしても唇を噛みやがった。おいこらオレの許可なくなにやってんの? ムカついてお仕置きとばかり先っぽをグリュッと擦った。そしたらビュクンッと仰け反って射精した。

「ヒャァ……ッ! ぁん……ッ、ァん……ッ!」

 さすがに今の声は表に聞こえたろうな、と思いながらなおも先っぽを弄り続ける。

「ひぁ、ァッも、やめ、ひぃ……ッ」

 内股でビクビクしながらオレの手を退かそうと抵抗する五番くん。もちろん更に激しくグリグリする。

「ぁっ! ァんッ!やっ、やめ、ハッぁア……ッ!」
「んんー? 止めて欲しいならどうすんだっけー?」

 仰け反って突き出した舌から唾液をぼたぼた溢す五番くんに興奮して両手でめちゃくちゃに扱きながら先っぽを指で押し潰す。

「ふぉっォッんんッ、ンンー……ッ!」

 したら潮を吹きながら堪らずオレにキスをしてきた。あの唇が、自ら、オレに! そんなのむしゃぶりつかない訳がない。



「ンンっきしゅ、した、ンッ帰すってぇ、ンふっ、ンッンッ」

 オレにパンツ脱がされて指マンされてまんこになった穴にちんこ擦り付けられてる五番くんがベロちゅーの合間に何とか言葉を絞り出す。

「はっ、ン……っ、帰してやるよ。ホテルじゃなくてここでセックスしまくってから……ッ」
「はっ?! ぁっはっひ、ぁっぉっぉっぉっぉっ」
「ほら声漏れないようにチューしような」

 五番くんの唇を貪って舌を奥まで捩じ込んで口のなか圧迫して喉マンして五番くんの舌をバキュームしてひきつった身体をちんこで突き上げて上も下もグポグポしてオレのちんこに潮吹きまくって快感で目がイッちゃってる五番くんの一番奥に膨らんだ亀頭をねじ込んでグリグリして中出し精液を叩きつける。

 パンパンパンパンドチュドチュドチュドチュびゅくっビュルルゥゥ……ッ!

「ンーっンッンッンンンー……ッ!」

 ビクンビクン跳ねる身体を押さえつけて最後の一滴まで中に注いで唇を甘噛みしてから顔を離した。

「っはぁ……ぁーヤバい出た……はは、五番くん大丈夫?」

 大丈夫な訳ないけどな。さすがに理性キレすぎてたわ、と反省をして、あとはホテル行ってからと思った訳だが。

「ァッ、ァは……ぉわ、ったぁ……?」

 安堵でか快感でか、口にへにゃっと笑みを浮かべてるもんだから五番くんの中のナニがまたグンと反り返った。

「ひは、な、で……ぉっき……ぁヒッ?!」

 そのうえ卑猥な唇で「おおきい」なんて言うもんだからそのまま路地裏セックスに突入した。

「ふぉッふぉぉ……ッぁっあっぉッおッしゅごッ、ひゅごぉぉお……ッ!」



 けっきょく朝まで路地裏セックスしまくった。


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