恋バナラジオ


「CM明けまで五秒前ー」

 スタッフの声に雑談をやめ、麦茶をひと口含む。

「はい、ぼく加藤卓と西園寺健人さんでお送りしてますサンデーナイトフィーバー。残すところあと一時間となってしまいましたー」

 タイトルコールが流れて、加藤くんがお決まりのあいさつをした。加藤くんの声は耳に馴染むいい声だと思う。顔と同じで地味だけど安心できる感じ。まぁオレは声にも顔にも華があるハイパー人間な訳ですが。

「いやー、さっきの話は衝撃でしたね」
「うん。オレが親の立場だったらもう、どう消化すればいいか分かんないもん」
「えー今日のテーマは『今年一番のサプライズ』です。まだまだ募集してるので、みなさんぜひ番組のホームページからお便りください」

 CM中の雑談と同じ話を繰り返して、加藤くんが仕切りなおす。そこに間をおかず、マイクに向かって「待ってるよ」と囁いた。

「ふは、ちょっと! 無駄にいい声撒き散らかさないで下さい!」
「撒き散らかすって」
「もーこれだからイケメンは! イケメンのイケボイスは!」
「イケボイスって」

 加藤くんの言い様に小さく笑う。この流れはこのラジオでもはや鉄板になっていた。オレの声は万人受けしそうな加藤くんとは違って、主に女性に支持されている。ツイッターでエゴサすると『イヤホンで聞いたら耳が溶けた』とか『やめろ子宮に響くw』とか意味の分からない呟きが間々あって面白い。

「次のお便り読みまーす。ラジオネーム恋バナ大好きさん。『西園寺さん加藤くんこんばんは。』こんばんはー」

 ラジオネームに少し引っ掛かりを覚えながら、マイクに顔を近づけて低く囁く。

「こんばんは」
「だから撒き散らかさないで! ぶれる! 主旨が!」
「ははは」
「もー。えー『私の今年一のサプライズは、文化祭のイケメンコンテストで優勝したクラスメイトにその場で告白された事です』?! えっ?! 凄くない?!」
「へぇーそんな漫画みたいな事あるんだ」

 あーもうこの流れはあれだな。ちょっと舌打ちしたい気分になりながら無難なコメントをする。

「『周りに観客が沢山いたので恥ずかしかったですが、一生忘れられない思い出になりそうです』」
「そりゃ忘れられないでしょ」
「すごいなー。西園寺さんこういうのした事あります?」
「ない」
「えーあるでしょイケメンなんだから」
「告白って自分からしたことないんだよね」
「ふは、さすがイケメン!」

 こう言ったメッセージが来ると決まって加藤くんがキャッキャする。基本的に恋バナが好きらしい。今もオレが「加藤くんは?」と聞くのを待ってるのがありありと顔に出てるけどぜってー振ってやらねーぞ。

「…………はい、えーでは」

 オレの目に固い決意を見たのか、加藤くんが折れて次に進む。

「西園寺さんが振ってくれないので自分から言います!  オレも昔付き合ってた子とね」

 チッ。

「加藤くん付き合ってた事あるの」
「いや何回も言ったしバカにし過ぎでしょ! イケメンじゃなくても付き合えるんですよ世の中!」
「へー、そうなんだ」
「えぇ……えぇ……? 世の中イケメンなんて早々いないんですよ知ってます……?」

 と戸惑う加藤くん。実はこれもこのラジオの鉄板だったりする。やたら恋バナしたがる加藤くんと、塩対応なオレ。たぶん今頃ツイッターに『だから恋バナはやめろとあれほど』とか『安定の塩』とか書かれている事だろう。
 一つ言っておくとオレは別にそういう話が嫌いなわけではない。ただ加藤くんに彼女がいたってのがムカつくだけ。理由は、なんだろう。なんとなく。

「とにかく昔付き合ってた子がね、いたんですよオレにも。その子は大学時代に付き合い初めてー、四年位かな」

 別に加藤くんが嫌いなわけではない。むしろ性格いいし顔の造りも悪くはないから彼女がいたのもまぁ分かる。ただ何かムカつく。生理的嫌悪? それも違う。さっきも言ったけど嫌いではない。ただ一生童貞でいればいいのにって思う。いやもう童貞じゃないんだけど。

「……結構長かったし、オレこの人と結婚すんのかなーとか思ってて」

 今まで聞いた感じだと高校以降に三人は彼女はいるんだよな。加藤くんの分際で何でオレの許可なく女にちんこ突っ込んでんの? あ、なんか考えてたらイライラしてきた。

「……ねぇラジオで黙るの止めて下さいよ放送事故だよ!」
「あぁごめん。あまりに興味なくて」
「笑顔でなに言ってんの?! もー!」

 はははと笑いながら右の靴を脱いだ。イライラした腹いせにちょっと悪戯してやろう。

「それでね、プロポーズをしようと考えたわけですよ」
「へぇ」

 適当な相槌をうちながら、テーブルの向かいに座る加藤くんのあそこを刺激する。

「ふぁっ?」
「ん? どうかした?」

 一瞬驚いた声を出した加藤くん。でも流石に「相方に性器をいじられてます」とは言えないらしく、「いや……」と小さく否定してプロポーズ話を続けようとする。そもそもプロポーズとか何それ加藤くんの分際で生意気じゃない?

「あの……彼女と遊園地デートして……」

 まさか観覧車でとかベタな事言う? 足の親指と人差し指を広げて少し硬くなってきたそこを挟むようになぞり上げる。その刺激でピクッとした加藤くんが焦った顔でこっちを見て、せせら笑うオレに「マジかこいつ」みたいな顔をしてガラス向こうのスタッフたちに助けを求めて目配せする。けど机の下の様子なんて彼らには分からない。

「それで、観覧車に……」

 ほんとに観覧車かよ。ちょっと笑いながら、うんうん、と相槌をうって、ベタ過ぎる内容にお仕置きする意味を込めて加藤くんの先っぽをグリグリした。

「…………っ」

 服越しでもキツかったらしく押し黙る加藤くんに少し溜飲が下がる。だから足を戻しながらどうしたの? と優しく声をかけてあげた。

「ラジオなんだからしゃべらなきゃ、放送事故だよ?」

 さっきの自分の言葉を返されて、キッとこちらを睨む加藤くん。へー、いい顔するじゃん。とニヤニヤしてたら、あらぬ所にフニ、と何かが触れる感触が。なんと加藤くんがオレのあそこをフミフミしている。エロさも何もない踏み方だから全く実害はないけど、さすがに目を丸くした。したらそんなオレを見た加藤くんが物凄い勝ち誇ったザマァ顔をした。
 は? 何その顔犯したいんだけど。
 と思ったその衝動に自分で戸惑う。いや犯したいってなんだ相手は加藤くんだぞ。目の前の凡庸な顔した加藤くんだぞ。しかも今は小憎たらしいザマァ顔した加藤くんだぞなんだその顔マジで犯してぇ。じゃなくて。
 別に加藤くんの事は嫌いじゃない。けど好きでもない。だって好きな相手に一生童貞でいろとか……あぁ思うな。オレなら思うわ。オレ以外の奴が加藤くんのヤり顔知ってるとか面白いわけがない。
 なるほどこれは一種の征服欲だ。今もオレに反抗する加藤くんを上から押さえつけて喰らいついて自分のものにしたくて堪らない。

「じゃあ加藤くんのプロポーズは無かった事にして、次に行こうか」
「えっ、ちょっと西園寺さん勝手に……」

 長い事なんとなく感じていたイライラが解けてオレ史上最高の笑みを加藤くんに向ける。そしたら失礼なことにビクッて震えて、けどすぐ楯突くように睨み付けてきた。
 いいねその反応。犯した過ぎてぞくぞくする。



 という訳で収録後、個室トイレに暴れる加藤くんを投げ込んだ。

「イ……ッた! ちょっと西園寺さん! 収録中になにしてくれてんですか!」
「加藤くんだってしたろ。あんな挑発的な顔で」

 個室に鍵をかけてベルトを外す。

「それは西園寺さんが……ってかなんで個室に二人で入ってんですか隣行って下さいよオレ今から」
「ああ、オレの足コキで勃ったのを扱かなきゃいけないもんな」
「うっ……ちょっと反応しただけですから! 暫くすれば収まりますしそれを言ったら西園寺さんだって……!」
「うん。加藤くんのしたり顔が可愛すぎてさ、泣かせたくて泣かせたくてフル勃起しちゃったよ」
「は?! えぇ?! なんでそんな反り返……っ?!」

 ずりおろしたパンツからブルンと飛び出したオレのそれに大きくもない目を限界まで見開く加藤くん。

「なんでって、加藤くんのせいだろ? だから泣いて啼いてなきじゃくってたっぷり責任とって貰わないと」

 反り返りすぎて腹についてる勃起ちんぽにドン引きした加藤くんが便座を跨いで後ずさる。それを追ってオレのナニをその股間にズリズリする。

「ヒっ?! ちょっ、え?! なに?! ハァ?!」

 便座を跨いでてどこにも行き場がないのに何とか逃れようとしてバランスを崩す加藤くん。トイレタンクと壁に手をついて便座に座り込むことは避けたけど逆に股間を突き出す形になっている。

「服越しに擦り付けてるだけなのに焦りすぎだろ。オレのちんぽ怖い? 確かに人よりデカイとはよく言われるけど、加藤くんのはどうかなぁ? ……はっ、いいね可愛い。いっぱい泣かせてやろうな?」

 加藤くんのジーンズを脱がせてオレと比べると小ぶりなそれをオレのと一緒に扱いてやる。

 ぐじゅっずりゅッじゅちゅっぶちゅっ

「ちょっやめ、あんたマジで何やって……ッ!」

 しばらくオナニーをしていないのか、オレの手と竿に扱かれてだらだらと先走りをこぼす加藤くん。

「あーあ可哀想に号泣だなぁ」

 座り込んだら逃げられなくなると思ってるのか、がに股の足を震わせて必死に快感に堪えている。その我慢汁あふれる号泣ちんぽと、その一・五倍はあろうかというオレのちんぽを更に激しくこすり合わせる。

「ふっ、も……ッマジで、やめろ、ってぇェ……ッ」

 声には力がこもっているけど身体はだいぶキツイらしい。手も足もプルプル震えて今にも座り込みそうだ。もうイくかな。と思って手を止める。そう簡単にイかせてなんてやる訳ない。それを察したのか加藤くんが恨みがましくこちらを見ている。あー、ヤバい。グチョグチョにしてやりたい。でもまだまだイかせてやんない。

「加藤くんの先走りで指がベトベトになっちゃった」

 濡れそぼった指で加藤くんの頬をテラテラと汚す。ものすごく嫌そうな顔をした加藤くんの下唇に親指を押し付けてそのまま先走りまみれのそれを口の中に捩じ込んだ。

「んぐっ?!」
「どう? 加藤くんの先走りの味」
「ふはへ……ッ!」

 眉根を寄せて全力で嫌がる加藤くんにゾクゾクして別のモノを連想させるエロイ声で「おいしい……?」と耳元に低く問いかけた。すると「ふぅぅン……ッ」とこれまでとは明らかに違う質の反応が返ってくる。おや? と思って加藤くんを窺うと本人も動揺したようだった。もしやと思って「どうしたの?」と耳に吹き込んでやると「ひゃぁん」と鳴いて崩れ落ちた。なるほど女子の言う『子宮に響く声』はどうやら男にも通じるらしい。いや加藤くんの耳が敏感なだけかもしれないけど。

「ほら加藤くん、どう? 自分の味おいしかった?」
「ぁっやぁ……ッみみ、みみやっ、ヒャッ、ぁ……ッわかんな、わかんなぃィイ……ッ」

 意識してエロく囁くと、今までの反抗的な態度は何だったのかって位に甘く卑猥な声が出る。

「じゃあもう一回確かめようか」
「ぁッあ……っ」

 未だにトロトロと流れている先走りを纏わせて、ぬらぬらと光る指を加藤くんの唇に押し付ける。「しゃぶって」と耳に吹き込むと「ンンン……ッ」とイったような声を出しながら内腿を痙攣させる加藤くん。その姿にゾクゾクして指を口に突っ込んでぐいと横に引き隙間から加藤くんの口に舌をねじ込んでぐちゅぐちゅに舐め回して更に指を突っ込んでひっぱり出した加藤くんの舌を甘噛みしてしゃぶりついてずろろろっとバキュームした。

「ンッンッンンンー……ッ!」
「っは、ン……ちょっとしょっぱいかな」
「ひァ……はひ……っ……ッ」

 加藤くんの先走りを評して本人を見下ろすと、全身を痙攣させて便座からずり落ちそうになっていた。

「はは、キスだけでトんじゃった? でももっとぐちょぐちょになろうか」

 垂れた先走りを指に纏って、晒された穴にヌプリと触れる。

「はっ、ひぃ……っ?!」

 異物感に恐怖した加藤くんがオレの腕を止めにかかった。

「ふふ、いいねそういう無駄な抵抗。オレの大好物」

 ズ……ッ

「ひっ?!」

 ぐぷぷぅぅ……ッズチュッズチュッヌチッグチッバチュバチュバチュバチュパンッパンッパンッパンッ

「ぁ……っんぉ……ッ! ァひッ、ィイッイイッァッはッォッォッォッォ……ッ」

 加藤くんの手をものともせず尻たぶが揺れて外にまで音が漏れるくらいに力強い指マンをする。加藤くんは反らした喉をひきつらせて、ジーンズの絡んだ膝をビクンビクンと突き上げるように痙攣させた。

「ヒッもっむりっィぐっィッィ……ッ」
「ん? 加藤くん中イキするの? じゃあオレのちんぽでイこうな」
「ヒィィ…ッ?!」

 ずりゅゥッと指を抜き、ヌチュゥとちんぽを穴に塗りつける。

「む、むりむりそな、バカか! バ、ァっ」

 その感触で正気に戻ったらしい加藤くんがくぽくぽ吸い付く穴とは裏腹にバタバタ暴れて抵抗するのでジーンズの絡まる足をぐいと持ち上げてまんぐり返ししてせせら笑う。

「そういう無駄な抵抗、オレ大好きだよ加藤くん」

 耳元に低く囁きながら挿入したら加藤くんが中イキした。
 
 そこからはもう耳攻めしながら中イキさせまくっている。

「奥のここ、ここを先っぽでゴリゴリされるのがいいんだよな?」

 ゴッゴッゴッゴッグリュリュリュゥゥ……ッ

「待っ、ぁはっぁはっちんぽっちんぽっしゅごっァッはひっらめっらめェェ……ッ」
「初めてのちんぽで中イキしといて何言ってんの? いいって言えよ。ほら、いいんだろ?」

 ゴチュっゴチュっバチュッバチュッパンッパンッパンッパンッズニュゥゥゥ……ッ

「ひぎっァひっはひっふぉッぃイッぃぃッちんぽっしゅごいィイ……ッ」

 素直な加藤くんの耳にイイ子、と吹き込んでやると、ふぉっふぉオ……ッと痙攣してまたイった。その収縮でオレのちんぽもそろそろ限界になってくる。

「じゃあ次は初の中出ししてやろうな」
「ぁひっ、ぁっ、な…なかだしぃ……?」

 その声に戸惑うような色が見えたので、加藤くんの耳を軽く噛んで舐めて濡れたそこに直接口をつけてダメ押ししてやる。

「オレの精液ほしいよな?」
「ぁひあっぃぃッィイッァンッほひぃッ出してぇえ……ッ!」



「加藤くん、お疲れ」
「あぁ、どうも」

 一週間後、加藤くんから普段の人当たりの良さが消えていた。

「加藤くーん、今日も頑張ろうねー!」
「はい、よろしくお願いしまーす」

 違った、オレ限定で塩になってた。まぁ当然の反応な訳だけど。でもなぁ。

「加藤くん」
「なんですか」

 対面に座って台本に目を落とす加藤くん。オレを無視したいのは分かるけど、オレに注意を払わないのは愚策だな。例えばオレが少し身を乗り出して耳元に囁けば。

「今日もシような」
「ひゃぁン……っ」

 パッと口を覆う加藤くんにクク、と笑う。いくら塩対応してたって、オレがエロい声吹き込んだら即アウトだもんなぁ。

「間違えた。今日もよろしくな」
「……どーも」

 ニヤニヤするオレを恨みがましい目で睨みつけてくる加藤くん。ほんと堪んないな。下手したらオレの声だけでイッちゃうド淫乱なのに懲りずに抵抗してくる所。
 ただそんな反抗的な加藤くんが、ラジオの本番中にオレのキメ声で腰砕けになるのはちょっと想定外だった。


『今日の加藤くんどうした』
『聞いてはいけないものを聞いている気がする』
『え? 喘いでない? これ喘いでない?』


 さすがに反省した。


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