AVスタッフの憂鬱3
『スタッフくん、名前教えてよ』
「いやですって」
『いいだろ名前くらい。あ、オレはシゴキ匠ね。本名は白木匠』
「聞いてませんよ。あの、もう切っていいですか?」
オレは相変わらずAVスタッフのバイトをしている。
あれ以来ゲイ物に当たる事もなく、普通にスタッフしたり汁男優したり平和に過ごしていた。ちなみにシゴキさんとも会っていない。
平和だ。
別にシゴキさんが嫌な訳じゃない。
でも仕事とはいえシゴキさんはオレに突っ込んだ訳で、オレは監督に騙されたとはいえシゴキさんに突っ込まれた訳で、やっぱりなんか気まずいだろ。
でもシゴキさんはさすがに慣れてるだけあって気まずいとかないらしく、こうして頻繁に電話がかかってくる。
最低だ。
そもそもいつの間にオレの携帯を登録したんだ。
『駄目。まだイってないから』
「………オレで抜かないでください」
しかもシゴキさんは何でか毎回オレとの電話中にオナってる。
らしい。
『今更だろ。オレあのDVDで毎晩抜いてるし』
「…仕事で散々出してるでしょう」
呆れて言えば携帯から喉で笑う音がした。
『スタッフくんは別腹なんだよ』
「ん…っ」
耳元に囁かれる擦れた声に、思わず変な声が出てしまった。
「へ、変な事言わないでください!」
『なんだ。今のでイっちゃった?』
「なっ、にを」
『オナってんだろオレの声で』
『いやらしい水音がする』とまた喉で笑う音。
オレは一気に青くなって、ズボン越しのチンコに手を添えたまま固まってしまった。
バレてた?
『まぁそれは嘘だけど』
「はっ!?」
『でも声聞けば分かるさ。オレを誰だと思ってる?』
「………っ」
今度は一気に赤くなる顔に、シゴキさんが追い討ちをかける。
『なぁ、オレの聞こえるか?』
チンコに携帯を近付けたのか、クチュクチュという水音が耳に吹き込まれた。
あぁ、もう駄目だこの人。
やらしすぎて。
「シゴキ、さん…」
オレまで変になってくる。
『んっ、もう一回、呼んで、名前』
はぁはぁ言うシゴキさんの熱い息が聞こえて、シゴキさんがここにいるような錯覚を受ける。
「シゴキさん、シゴキさぁん…ぁ、あっ」
『っは、たまんね…っ』
我慢出来ずにズボン越しにチンコを揉んで甘えるような声を出す。
だって駄目だ。
シゴキさんの声を聞くとあの時の快感が嫌でも蘇るから。
『なぁ、仕事じゃないんだからさ、白木って呼べよ、』
熱く擦れた声で求められて応じそうになるのを何とか留めた。
たぶんその一線は越えちゃいけない。
気がする。から。
『なぁ、』
「たくみ、さん」
シゴキさんが息を飲んだ音がした。
『っくそ、』
そして荒い息遣いと、ギシギシと何かが軋む音。
「ふぁ、匠さん、たくみ、さ、あっあぁっ」
オレも我慢出来ずに直にチンコをシコり始めた。
『気持ちいいかっ?なぁ、はぁっ今どうなってる?』
「ぁっ、オレのチンコ、パンツどろどろにして上向いてるっはぁっ、あっ、気持ち、ビンビンチンコ気持ちぃっ、たくみさ、もっとぉ…っ」
『っは、淫乱…っ』
耳元に吹き込まれる熱い吐息と軋むギシ音に、オレは涎を垂らしてよがった。
「ぁっ、たくみさんったくみさんっ、もっともっとぉっ、オレのチンコ、ガシガシしてぇっ」
『チンコだけか?穴も欲しいだろ?』
「っふぁ、」
言われてオレはビクビク震えて携帯を取り落とした。
落ちた携帯に耳を当てて、ケツを突き出すように四つん這いになる。
『ってかもうずっとケツガン堀りしてるけどな』
『頭ん中で』と興奮した声で言われて、オレは片手でチンコ扱きながらケツの穴に指を這わせた。
「ぁっ、はぁっダメっ気持ちぃっシゴキさんのチンコぉっ」
中に入れるのは怖いから、キュンキュンしてる穴を揉むように撫でて押してこするだけ。
それでもこの間のシゴキさんのチンコを思い出してゾクゾクと身体が痺れた。
『はぁっ、自分でケツいじってんのか?オレのチンコそんなに良かった?』
携帯から聞こえるギシギシという音に合わせて指とケツをグネグネ動かす。
あまりの快感に涙が出てきた。
「ぁん…シゴキさぁん…」
『っ、は、匠さんだろ?じゃないとチンコやんないぞ?』
意地悪く言うシゴキさんの言葉通りギシ音がなくなって、オレはチンコ欲しさに夢中で叫んだ。
「や、たくみ、さ、たくみさ、ちょうだいったくみさんのチンコぉっ!たくみさんっチンコっチンコっぁんったくみさぁあんっ」
『あー、やばいクる…っ』
携帯の向こうから凄い速さでギシギシと音がする。
それに合わせてチンコとケツ穴を扱きまくる。
「ぁっ、あっ、チンコ気持ちぃっ!イっちゃうっ!オレっまた匠さんで、イっちゃぅうっ!」
ビュクビュクと背中をしならせて白濁を飛ばしたオレは、ドサリとまた携帯の上に倒れ込んだ。
『スタッフくん、大丈夫?』
「………はい…」
イった後の倦怠感と男同士でなにやってんだという自己嫌悪で小さく応える。
『実は今日はテレフォンセックスはおまけでさ、本題があるんだけど』
「は?」
こんな疲労感満載なのがおまけであってたまるか、と思ったけど、オレと違って息一つ乱れてないシゴキさんには確かにおまけなのかもしれない。
電話の度に誰とでもやってそうだしなこういう事。
それに何となく、悔しい気持ちになったのはきっと気のせいだろう。
きっと。
『で、スタッフくん明後日時間ある?』
「え?」
『撮影があるんだけど人が足りなくてさ、良かったら来て欲しいんだけど』
「あ………はい…」
ちょっと目を泳がせてから了承する。
シゴキさんとまた会うと思うと気まずいし色々蘇りそうで嫌だけど、その日は他のバイトも入ってなくて暇だから。
『よし、じゃあ明後日な。場所はメールするから』
チュッとリップ音をさせて電話を切るシゴキさん。
オレはそのリップ音より、シゴキさんの最後の言葉に眉をひそめた。
『楽しみにしてる』
……会えるのを、だよな?
何となく嫌な予感がするのを振り切って、オレはベッドの後始末に乗り出した。
シーツがどろどろだ。最低だ。
[*前] | [次#]