友恋-3-




バーベキューも終わり、片付けを始めると荒北くんは率先して動き始めた。
少しめんどくさがりなのか、適当に済ませようとするミヤくんに怒声が飛んでいる。
そんなやりとりはいつものことらしく、金城くんは特に気に留めていないようだった。
私とチカも荒北くんに怒られないように丁寧に片付けをしていると、急に水が飛んできた。

「ひゃっ!」
「エッエッ〜、遊ぼうやぁ。」

そう言いながらミヤくんはウォーターガンを構えている。
片付けはまだ途中だというのに、ミヤくんは金城くんたちにも水をかけ始めた。

「コラ待宮ァ!テメーいい加減にしろよ!」
「荒北は準備手伝わんかったけぇ、片付けくらいやったらええじゃろ。ワシらは準備したけぇ遊ぼうやぁ。」
「それもそうだな。」
「え、金城くん?」

真面目だと思っていた金城くんも、ミヤくんと一緒に水遊びを始めてしまった。
それに釣られるようにチカも川へ入っていく。
後ろから荒北くんの舌打ちが聞こえて振り返ると、今日一番の不機嫌顔になっていた。
ほとんど片付けは終わっているとはいえ、小さなゴミや調理道具が出しっぱなしになっている。
私は準備もろくに手伝っていないし、荒北くんに全て任せるのは気が引けて片付けを続けた。
何度か誘いに来てくれたミヤくんに"あとでね"と返し、ゴミを拾って行く。
大方ゴミも片付いた頃、首にヒヤリとした物が当たった。
振り返るとそこにはペットボトルを持った荒北くんが立っている。
先ほどより少し穏やかな顔は日焼けのせいか薄っすら赤くなっていて、何だか先ほどとは別人に見える。

「あんがとねェ。」
「えっ?」
「手伝い。正直助かった。」
「あ、ううん。私準備もあんまり手伝えてないから……。」
「そォ。」

荒北くんは興味なさそうな返事をしつつも私の横に腰を下ろした。
私も釣られて隣に座ると、独特的な笑い声が聞こえた。

「ハッ、遊びに行かねェの?」
「うーん、荒北くんが行くなら行こうかな。」

一人残して行くのはなんだか気まずいから。
そう思って口にした言葉は、いざ声にしてみると誤解を招きそうなセリフになってしまった。
ちらりと荒北くんを見れば先ほどより顔が赤くなっていて、案の定誤解させてしまったらしい。
そしてその誤解を解くより先に、荒北くんは立ち上がって私に手を差し伸べた。

「んじゃまぁ、行こーぜ。」

ニッと笑った姿が少年のようにあどけなくて、私の胸が跳ねた。
なんだ、いい顔するじゃん。
荒北くんの手を取り立ち上がると、私たちはみんなの元へ向かった。



川のほとりではすでにずぶ濡れになった3人が攻防戦を繰り広げていた。
そこに乱入するように駆け寄った荒北くんは金城くんからウォーターガンを奪うと、ミヤくんを集中攻撃し始めた。

「テメーはいつも緩すぎんだよ!」
「何のことじゃ?」
「ッせ!」

しばらくミヤくんたちを眺めていると、目が合ってしまった。
ヤバイ。
そう思ったのに逃げ切れずに、私も的にされてしまう。

「雛美ちゃんも遊ぼうやぁ!」
「テメー一人涼しい顔で眺めてんじゃねぇぞ!」

そんな2人に追いかけられ、私もすっかりずぶ濡れになってしまった。
ちらりとチカを見れば金城くんと仲良さげに遊んでいて、私はそこから距離を取るようにさらに逃げた。
追いかけてきた二人もチカたちの様子に気づいたのか、手を止めた。

「何かいけそうじゃのう。」
「うん、いい雰囲気だよね。」
「あいつらほっといて遊ぼうぜ。」

荒北くんの言葉に同意して、私たちは川に飛び込んだ。
冷たい水は火照った体を冷やしてくれて気持ちいい。
ただ服は水を吸って重たくなり、うまく泳ぐことはできない。
すかさずシャツを脱いで泳ぎ始めた二人が、私はとても羨ましかった。



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