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「はぁ、はぁ・・・くっ、」

誰もが寝静まり月明かりしかない夜道を息を切らしながら走る影があった。

走る足音は暗闇に響いている。


「・・!!はっ、ぁ」

そしてその後を続いて、また走る足音が響く。


「オイ、あの女どこ行った。」
「チっ見失ったか」
「あっちじゃねぇか」


後ろから追って来ていた足音は暫くしてから遠ざかった。

「・・・行ったわね」

ふぅ、と息をつく。
路地の影に入り、そのまま背中越しにある壁にもたれ座り込んだ。


ふと気付いて空を見上げれば空は微かに白じんできていた。

「――もう、帰らなくちゃ」

『あれ』

「もう、嫌だ・・・」

『今話しているのは私自身の筈なのに、誰か別の人が話してるみたいな感覚。』

「私はもう、」

『体も急に重たくなって、自分の言うことを聞かない。』

「――・・皆を」

『・・・なんだか、目の前も霧がかかってきたみたい。』

「――傷つけたくない」

『そういえば、どうしてさっきまで走ってたんだっけ』


そこで、意識がどこかに引っ張られるような感覚に襲われた。


目の前に広がる景色がぐにゃりと歪み、先ほどの霞がより一層酷くなってきた。


『あ、そっか。これは夢なんだ。』

視界が完全に白くなる直前、自然とそんな結論に達した。




『"あなた"は誰?』

「ミンナヲ」

『ミンナって誰?』

「キズツケテシマウマエニ・・・」

『どうしてそんなに苦しそうなの。』



意識がなくなる瞬間、暖かい雫が頬を伝って流れた気がした。





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