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膝を抱えて白石の顔を覗き込むようにして見れば、白石は数秒間私の顔をまじまじと見つめ、観念したようにゴロンとアスファルトの上に寝転んだ。

「汚いよ!」

「ええねん。寝転びたい気分やから」

小石が転がるアスファルト。白石は眩しそうに目を細めて空を眺めている。春の陽気は雲に隠れることなく私たちを空から照らす。
白石の様子をなんとなく眺めてから、ならわたしも。と体重を後ろへ傾けて冷たいアスファルトの上へ寝転んだ。

「下、汚いで?」

「寝転びたい気分になったからいいの」

小石が刺さる感覚と硬いアスファルトに決して寝心地は良いものではなかったが、空から降り注ぐ春の陽気はとても暖かく眠くなってしまう。
高校生にもなって駐車場で寝転ぶ2人。なんだかおかしくて1人で小さく笑った。

「せやな…そしてたら、今日はなんの日やと思う?」

「?わたしと謙也の記念日ではなくて?」

「ちゃうよ」

こちらに顔を向けずに空に語りかけるよう話し出す白石。その横顔を見つめて少し考える。
今日がなんの日か、なんて。4月14日、わたしと謙也の三年記念日で、そして。

「あっ」

「おっ」

「あれ…白石誕生日だっけ?確か14日生まれだったよね?」

「おお!よう覚えとったやん!」

驚きとうれしさが入り混じったような表情で笑う白石に、まさかこれが理由かと拍子抜けする。まあでも自分の誕生日と親友の記念日が一緒って言うのは、確かに言いづらいものがあるかもしれない。

ふと小学生の頃を思い出した。
クラス替えのすぐ後に誕生日を迎えるおかげで誰に知られる事なく、その特別な日がいつもと変わらない平日になるのは、白石にとってそんなに珍しい事でもなかったようだ。春生まれの宿命なのだろう。
それを毎年わたしは彼の隣で祝っていたのである。お隣さんという大きな理由があろうとも、当時の私たちの間には確かな友情があった。時にはランドセルの中にプレゼントを忍ばせ、時には寂しそうに帰る白石の後ろ姿を追いかけて、手を引いて自宅へ招き。
いつからか、たくさんの女の子たちや男友達に囲まれて誕生日を祝われる白石の姿に、もう私が祝わなくてもいいんだと寂しくなったのは懐かしい思い出だ。

「そっか、今日ずっと一緒にいたのに忘れててごめんね。誕生日おめでとう!」

「ありがとう、西野」

そう言って本当に嬉しそうに笑うから。
どきりと心臓が跳ねる感覚に顔に熱が集まる。
わたしには謙也がいるのに、今日の私は少しおかしい。久しぶりに会話したのに白石はずるいんだよ。照れているのを誤魔化すように白石から視線を外して空を見つめる。白石は面白そうに喉でクツクツと笑うと上体を起こして、寝転ぶ私を上から見下ろすようにして、なあ。と話を続けるように声を発した。

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