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それからはとても楽しい時間だった。
恋人のごとく手を繋ぎショッピングモールを歩き回るその心地はまあ悪いはずがなかったし、流石白石なだけある。エスコートもバッチリな上になかなかに女性客の視線を集めていたのはなんとも気持ちがいいものである。
まさか私がのぼりのエスカレーターで始めに乗せてもらえるだなんて、これほど感動したことはない。ちなみに謙也は御察しの通り、我一番にとエスカレーターに乗るタイプである。エスコートってなに、美味しいの?って聞いて来ないだけまだマシ。
まあしかしそういつまでも有頂天に舞い上がってはいられない。

「白石、学校の人とかに目撃されたらやばいのではと気がついてしまった私だけれど」

「なんやそれほんま今さらやな」

そう、そのことに気がついたのは十分お店を見て回りショッピングを楽しんだ後だったわけだ。繋いだ手も随分と馴染んでいる。それも離すのを躊躇ってしまうくらいには。
しかしそれとこれとはまた別の話になる。別に私や白石、謙也がどう思っていようが関係ない。噂とは怖いものだとわかっていたはずなのに。迂闊だった、どこで誰が見ているかわからないというのに白石と阿呆みたいに手を繋いで歩き回るだなんて。

「私ってどうしようもない馬鹿なのかもしれない…」

何が恥ずかしいね、だ。絶対私ホストにハマるタイプ。未だ繋がれた手を恨めしげにぼんやり見つめて、流石にもう離すべきだと手の力を抜いた。

その様子を白石はただ黙って見つめる。結局何も言うことなく繋がれた手はあっさりと離れていったのだった。そう、これが本来の形なのである。数年ぶりに話をして、またあの頃に戻れた錯覚を起こしてた夢見がちな私とそれに付き合う白石。ましてや私には謙也という恋人もいるというのに一体なにをしているのか。
一気に現実に戻されたような感覚に夢からさめたような気分だった。

「…そろそろ帰ろうか」

「…せやなぁ」

楽しい時間もこれで終わり。
帰路につく白石と私との間にはいつの間にか妙な距離が出来ていて、電車に乗るまでそれが埋まる事はなかった。