薔 薇 色 の 地 獄 。 | ナノ
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貴方と私とエスコート




ハロウィーンのお祭り。
元々は、収穫を祝い、悪霊等を追い払う宗教的な意味合いのある行事だった、のだが。


「リンタロウ!トリック!オア!トリート!!」
「エリスちゃんんん!魔女の格好良く似合ってるよー!!かわいいよー!!!」

今や宗教的なものなど微塵もなく。
街は仮装した人々に溢れていた。

「ね?魔女のエリスちゃん、似合っているだろう?」

「…そうですね」
「織田くんは素直だねえ。ねえ、太宰くん?」
「そうですねー」

織田作はいつものように。
太宰は、至極つまらなさそうに答える。

「太宰くん?そんなことを言っていられるのも今のうちだよ?」

ニコニコと笑っている首領が、この上なくうさんくさい。

「おいで、なまえ」

その名前に、太宰と織田作が反応する。エリスが迎えに行った扉の奥から、果たして呼ばれた彼女が顔を覗かせる。

「首領…やはりこれは…無理がある…」
「無理じゃないわよ!似合っているわよ!!なまえ!」

ぐいぐいとエリスに引きずられて出てきたなまえの姿は、いつもの真っ黒のワンピースに加えて、黒い猫の耳、黒く長い尻尾、大きい鈴のついた、赤いリボンのチョーカー。
その顔は、羞恥で真っ赤になっている。

「私の完全なる監修…黒猫だよ」

「…、」
「………!」

でれでれになっている首領。
目を丸くしている織田作。
すかさず携帯電話の写真モードを起動する太宰。

「なまえ!!!似合っている!!!!可愛い!!!」
「太宰さん、写真はやめてくれ!」
「勿体無い!なまえのこんな姿をお蔵入りさせるのは勿体無いからね!」

「せっかくだ。なまえ、その姿で街を歩いてみてはどうだろう?
今日はハロウィーンのお祭り。さぞ賑やかだろうね。
織田くん、仕事がなければなまえをエスコートしてあげなさい」

「…はい、」


太宰と同じようにデジタルカメラのシャッターを押しに押している首領が言う。

織田作は何の疑問もなく返答する。




「人が!多い!」
「…はぐれるなよ、なまえ」

織田作が、辺りを見渡しながら言う。

ヨコハマの街は仮装をした人々で溢れかえっていた。
街を歩く人々も、思い思いの仮装をしているため、黒猫姿もあまり違和感がない。
(太宰は仕事がある、と広津に捕まっていた)

「ほんとうに、お祭り騒ぎだな…」
「気を付けろよ」

織田作が言うが早いか、信号が変わると同時に人混みが一気に動き始めた。

「わ、織田作…!」

「…なまえ、こっちだ!」

織田作に手を引かれる。

「織田作、」
「…油断も隙も無いな…」
「すまない。ありがとう」

ぐっ、と力強く握られる。
人混みの合間を抜け、織田作はどんどんと進む。

その背中がとても頼もしくて。
握られた手が暖かくて。

ちょっと、くすぐったかった。

「やれやれ…」
「こう人が多くては、どうにもならないな」


人通りの少ない路地裏に、一先ず逃げ込んだ。
手はもう、離れていた。


「…カレー、食いに行くか」
「そうだな。そうしようか」

「それでは、お手をどうぞ、お姫様」

はぐれないように。
冗談混じりに差し出された手を、なまえはそっと握り返した。


「ちょっと待て、わたしはこの格好で行くのか!?」
「似合っているのだから問題は無いだろう」






『人混みに流されそうなところを腕を掴まれ助けられる。人の少ない方へぐんぐん手を引いていく背中を見て頼もしく感じる』

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ツイッター診断メーカーより。




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