微睡は水面深く。 | ナノ
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塔は高揚する


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「トリックオアトリート!」

今年も賑やかに、ハロウィンの仮装行列が、冬木の町を練り歩いていた。
綺礼は普段からは想像もつかないような笑顔を張り付けて、子供たちにお菓子を配っている。

そんな喧騒をやりすごす。

礼拝堂から中庭へ、そして居住エリアへ。
居間では名前が寛いでいた。

「トリックオアトリート…お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、か」
「あ、ランサー。はい、どうぞ」

手のひらに小さな包みが置かれた。
中身がクッキーなのは知っている。

昨日、衛宮の坊主の家で大量に作っていたのも知っている。


「イタズラは駄目ってか」
「そういうわけじゃないですが、余ったので」
「ふーん、」


「…トリックアンド、トリート!」

「わあっ!?」


何となく面白くなくて、名前に抱きついた。

「ランサー!?お菓子をあげたから、い、イタズラは無しですよ!?」
「トリックオアトリートじゃねえよ?トリックアンドトリート、って言ったんだよ、俺は」
「あ、アンド!?『お菓子をくれてもイタズラするぞ』ですか!?」

さすが、こういうことには聡い。

「トリックイエットトリートでもいいぜ?」
「ば、…っ!もう!イタズラしかないんですか、あなたは!!」
「誰彼構わず、ってわけじゃねえよ?
…名前だから、イタズラしてえの。わかる?」

まっすぐその目を見て、笑う。

「…、ばか、ですか」


真っ赤になって照れる顔。
そう。その顔がたまらなくいとおしくて。


「名前、」

「……、少しだけ、ですよ?」



遠慮なく、イタズラさせてもらうことにした。




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trick and treat…お菓子をくれてもイタズラするぞ。
trick yet treat…お菓子はいいからイタズラさせろ。


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