微睡は水面深く。 | ナノ
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宵闇+まどろみ


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雨が、降っていた。
明日は晴れるといいね、なんて会話を交わして床へついた。

が、雨脚は弱まるどころか、その強さを増していた。

「…、」

こうなってくると、心配事はひとつだけで。


「ランサー、いますか…?」

呼ぶ声は弱弱しく、夜の空気に溶けて消えた。
返事は、無い。

「!」

その刹那、一瞬だけ外がきらめいた。
その予想通りの、予想外の明かりにびくりと肩がすくむ。

「…いち、にい、さん…」

雷は嫌いだ。
あの闇を切り裂く光も、轟音も、
近ければ近いほど音は割れて、たまに空気が震えて。
ニュースで打たれたひとが死んでいたり、木が燃えていたり…、

とにかく、雷は嫌いだった。

先ほどの光から数え始めておよそ二十、
遠くでゴロゴロと音が鳴るのを聴いて、ああ遠くてよかったと安堵する。

「うう、完全に目が冴えてしまった…」

そして光っては数える、を繰り返す。
羊でも数えて寝てしまいたいが、やむことのない雨と雷は哀しいかな、それを許してはくれなかった。

光る、数える。

「いち、にい、さん、しい…」


ご、と数えた声と、轟音が重なった。


「わあああああああああああっ!!!」

「名前!?」


悲鳴を聞きつけたのか、さっと虚空からランサーが現れた。
ご丁寧に戦闘服、赤い槍を持っている。

「どうした!敵襲か!!」
「ら、ランサー…」
「あ?」

布団をかぶって涙目のマスター。怪しい人物も霊障も見当たらない。

「…?」
「あ、あの、ええと、その、」

どう説明しようかと考えあぐねていると、光る窓の外。

「ひっ、」
「ん?雷?」
「ええ、あの――――」

また近かった。言いかけたことばは爆音と、
自らの悲鳴に消えた。


「…何、マスターは雷が嫌いなの?」
「、きらい、で、す…!!」
「さっきマスターに呼ばれた気がしたんだが、間違いじゃなさそうだったなあ」
「…ごめんなさい、心配かけました…」
「いやまあ、いいんだけどね、俺も眠れなかったし」

よっこいせー、とベッドサイドに座る青い英霊。

「マスターが眠るまでは側にいましょーか」
「…そうしてくれると、助かります」
「なに、これもサーヴァントの務めですよ。
ほらほら、横になってさっさと寝ちまいなー」


ゆっくりと横になり、「ありがとう」と呟く。
ランサーは照れ隠しなのか、そっと頭を撫でてきた。

「名前」
「…、はい」
「おやすみ」

「おやすみ、なさい…」

サイドテーブルの小さな明かりがゆらめく。
しばらく優しく名前の頭を撫でていた手は、名前が眠ったことを確認すると、
名残惜しそうにそっと離れた。

「…とりあえず、雨が止むまでここにいますか」

手のかかるお姫様が、また怖くなって目を覚ましても、
すぐに駆けつけられるように。


「いい夢見ろよー」


そしてランサーは、眠る名前のまぶたに優しく、
そっと、キスをした。


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言峰とギル様だと、怖がってるのを見て喜びそうですよね。
…それもアリか…?


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