日常無限ループ
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朝は頭痛で目が覚める。
魔方陣の上でそのまま朝を迎えることもあったけれど、
今はランサーがいるのでそれも少なくなった。
名前は伸びをするかわりに、盛大に溜息をつくと、
昨日アイロンをあてたばかりの制服に袖を通す。
「おう、おはようさん」
台所へ降りると、だいたいランサーが朝食の支度をしてくれている。
「今朝は食えそうか」
「…トーストとヨーグルト」
「かしこまりました、お嬢様」
うやうやしく礼をして、ランサーはトースターをセットする。
名前は冷蔵庫からヨーグルトとジャムを取り出す。
「ランサーは?」
「ママレードで」
「はーい」
冷蔵庫を物色している名前の肩越しに、
誰かの手が伸びてくる。
「我はブルーベリーだな」
「ブルーベリーは昨日王が使い切ってしまっていますのでありません。
ママレードで我慢してください我が王よ」
「ぬ、買い置きも無いとは」
「今日買って帰りますので今朝はご容赦ください」
朝の会話じゃねえ、とランサーはハムエッグを焼きながら眉間にシワを刻んでいた。
どうしてか名前はギルガメッシュに対して敬語でうやうやしく接している。
ギルガメッシュもまんざらではないようで、名前のことは気に入ってるようだった。
しかし、名前はギルガメッシュに対して敬語を使っているが、
敬意はこれぽっちも持ち合わせていないようだった。
今も、喋り方こそ敬っているが、
会話の中身は「ブルーベリージャムは諦めてママレードにしておけ」である。
しかも「今日買って帰るからとりあえずママレードで妥協しろ」とも付け加えている。
敬語で中身を誤魔化しているわけでもないのに、あの英雄王は素直にママレードをパンに塗っている。
「…、あいつ、実はものすごいんじゃ」
「ランサー、呆けているとハムエッグが焦げますよ」
「おおわ!」
すこし燻っていたハムエッグを手早くお皿に移す。
トーストは焼きあがってママレードジャム。
そのかたわらにトマトとヨーグルト。
「いつもありがとう、ランサー」
「なーに、マスターも毎朝頭痛で大変だろ」
「ん、今朝は大丈夫でした」
「我に魔力を分け与えれば頭痛は無くなるであろう?」
「おいおい、名前は俺のマスターなんだから、勝手に魔力を持っていくなよ」
「元は我に与え続けていたのだぞ?横取りしたのはお前であろう、狗」
「なんだとテメェ、言うじゃねえか…」
「はいはい、王もランサーもそのぐらいにして朝ごはんです。いただきます」
ぱちん、と手を打っていただきます。
二人は呆気にとられながらも、浮いた腰を椅子に落ち着けた。
「…まあ、いずれ名前は魔力だけでなく、身も心も我の物になるのだからな」
「誰が決めたんだよ、誰が」
「我が決めたのだから、そうなる運命よ」
「はいはい、口喧嘩はいいですけど、宝具使ったらふたりともパス切りますよ」
「「!!!」」
これが毎朝の光景。
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言峰は夜中まで起きてて、
昼にごそっと起きてくるイメージです。