その世界線は砂糖菓子でできていた
----------------------
「ランサー」
いつもの、名前の呼ぶ声に。
何故だろう、胸騒ぎがした。
「ランサー。…ランサー、どこですか?」
「…名前、名前、どこだ」
「ここです。ここです、ランサー?」
部屋の前。
ドアの向こう。
ここにきっと、名前は居る。
「…入る、ぞ」
ドアを開ける。
部屋の真ん中に、名前は座っていた。
「ランサー…、?」
振り返る。
名前の、彼女には全く似つかわしくない、赤い瞳に、ランサーの背筋が凍る。
髪の毛も、しろい。
薄暗い部屋に、名前がぼんやりと白く浮かび上がっていた。
「名前、…おまえ…?」
「黒い、泥が…止まらないんです」
座っている名前の足元には、
黒い泥が広がっていた。
時折、ごぼりと音がしている。
「ごめんなさい。わたし、…ダメですね」
「名前…」
震えながら伸ばされた名前の手を、ランサーは握る。
じり、と少しだけ焼けるような痛みがあった。
「、…名前、お前は、…」
名前の腕が、ランサーを抱きしめる。
「このまま、ひとりで居るのは…嫌です…。
ランサー…、ランサー、そばに、居てくれますか…?」
「…、ったく。普段はワガママ言わねえのに。
こういう時だけは素直に言うんだな、お前は」
「そう、ですかね?」
黒い泥が変えているのだろうか。
名前は、微笑みながら呟いた。
きっと。
その槍で、
わたしを、ころしてくださいね。
「ああ…とことん付き合ってやるよ。名前」
その願いは、届いたのだろうか。
名前は、泣きそうな表情で、
微笑んでいた。
ちりちりと焼けるような痛みは、
とうに無くなっていた。
-----------------
ツイッターに置いてあるお題箱から頂きました。
「夢主が黒化してランサーを堕とす」
…お題、消化できてますかね?
リクエストありがとうございました。