画面の向こうにいる男の性器を夢想してしまっているのを、姫子は自覚のないまま音を立てて吸い付いた。
唾液が溢れてくる。
口端から垂れ落ちていったのにも、姫子は気付いていない。


〔ご主人様〕
『唾液で濡れた人差し指で、エッチな乳首を撫でてごらん…。優しく…そっとだよ…』
『ぬるぬるして気持ちいいね…。』
『今度はゆっくり指先を回して…。乳首どうなってるの?』

〔つばき〕
『唾液で濡れて、立ってます』

〔ご主人様〕
『声に出して言いなさい。』


声に出して…。
投げ掛けられたその言葉に、姫子は戸惑いながら、そっと口を開いた。


「…ち、乳首が、立ってます…唾液でヌルヌルしてます…」


かぁーっと、顔どころか体中が発火したように熱くなる。
静まり返った夜の帳の中で、こんな、…こんなにいやらしいことしている。
羞恥心と、被虐と、興奮。
姫子の膣は垂れ落ちそうなほど、とっくに濡れてしまっていた。


〔つばき〕
『言いました…。恥ずかしいです…。』

〔ご主人様〕
『でも嫌じゃない。そうだね?』

〔つばき〕
『…はい…、嫌じゃないです。』
『…興奮しました…。』


ドキドキとさっきから心臓が騒がしくて、落ち着かないままだ。
初めての事をしているからか、命令されているからか、姫子には分からない。
ただ、確かなのは、かつてないほど興奮しているということ。


〔ご主人様〕
『親指と人差し指で軽く摘んで…。』
『ああ、強くしてみようか。
ギュウッて、つねってごらん。』


「んんっ、は、は、ぁあ…っ」


〔ご主人様〕
『どっちが好きなのかな?
優しく弄られるのと、痛いくらい虐められるのと。』
『ギュッ、てもう一度してみて。』
『気持ち良いね…』
『ちょっと痛い方が気持ち良いね』


「っあ…あ…、い、痛い方が…気持ち良いです…っ」


何だか洗脳されているみたいだ。
姫子はぼんやりする頭でそう思ったが、肯定する返事を口にしたし、送信していた。
確かに気持ちいいと感じるのは、少し痛い方だった。…本当に?
そう植え付けられているのだろうか。
でも確かに本心なのだ。
今の、自分にとっては。


〔ご主人様〕
『部屋のカーテンは閉まってる?
閉まってたら、開けなさい。』


ちょうどベッド脇には窓があり、カーテンが閉まっていた。
姫子がその布地をスライドさせれば、目の前には狭いバルコニーと、その奥には夜の街が佇んでいた。


〔ご主人様〕
『柔らかいおっぱい、窓ガラスに押し付けてみようか…。』
『部屋の中も外も暗いからね。
大丈夫だよ、エッチな裸は誰も見てない。』
『…それとも見られたいのかな?』


ほとんどの人が寝静まっている夜とはいえ、高層マンションでもないこの部屋の窓で、そんなこと…。
そう躊躇う言葉は頭に浮かぶのに、姫子の体は“ご主人様”の言う通りに動く。
冷たいガラスに小振りな胸を押し付け、火照った頬もあて、片手に持ったスマホを見下ろす。


〔ご主人様〕
『冷たいガラスに押し付けた乳首、どんな感じかな?
痛い? ジンジンする?』
『違うね、気持ちいいんだよね…』

〔つばき〕
『冷たくて…、痛くないけど、でも、…変な感じで…。
乳首、気持ち良いです…』


姫子は乳首を押し付けて体を上下にいやらしく揺らしていた。
恥ずかしい。でも気持ちいい。
こんなの痴女のすることだ。
なのに止められない。
頭がおかしくなる…。


〔ご主人様〕
『窓を開けなさい』


(――…え…?)

思いがけない命令にビックリする。
姫子は逡巡したあと、恐る恐る内鍵を開け、窓に指をかけ…少しずつスライドさせていった。
夜の空気が入り込んでくる。
ほとんどが眠りについている時間に、聞こえてくる喧騒は恐らく繁華街からだろうか。


[≪ 前のページ次のページ ≫]

≪back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -