友人の再会

「なんで佐藤と田中がここにいるんだ?」
とは、坂井悠二。
「そっちこそ、フレイムヘイズと“ミステス”だって?吉田ちゃんまで?」
返すは、友人佐藤啓作。
「坂井君が、その“ミステス”だって知ってたんですか?」
訊ねる、吉田一美。
「いや、“ミステス”ってことだけで、誰かは…それより、平井ちゃんがフレイムヘイズ?」
聞き返す、友人田中栄太。
「なんでこいつらがこんなところにいるのよ!?」
怒鳴る、平井ゆかりことシャナ。
「……知り合い、だったわけ?」
「世間ってな狭えなあ、オイ」
呆れる、マージョリーとマルコシアス。
「貴様ら、何を考えてこの二人を巻き込んだ」
問う、アラストール。
「とりあえず、落ち着かない?全員」
シャンディアが仲裁に入る。
「ふむ、我々も含めたお互いの紹介と、立ち位置の確認をしようではないか。特にその五人は、お互いが知らぬ部分で、な」
ベヘモットの言葉に黙る。
「ああ、できることなら、早めに」
カムシンが一言付け足した。

本来、御崎市にはシャナというフレイムヘイズしかいなかった。そして、坂井悠二というミステス。
しかしそこへマージョリーが現れ、この街で活動するための協力者として目を付けられたのが、悠二の友人である佐藤啓作と田中栄太だった。
そして調律師であるカムシンとシャンディアがやってきて、協力者として彼らの友人である吉田一美の力を借り、調律。しかし、御崎市に巨大な仕掛けを施していた教授こと、探耽求究ダンタリオンの接近によって彼らは集まることを余儀なくされ、結果、知人の多さに唖然とした。
(こういうことって、あるんだね……)
シャンディアは呆れてため息をついた。それから、未だ困惑したように吉田を盗み見る悠二に視線を向ける。同じタイミングでマージョリーが口を開いた。
「ユージ、始めて」
「……ああ」
ゆっくりと頷き、悠二が説明を始める。
「吉田さんが、本来の安定を取り戻すための雛型みたいなもの……調律のモデルにする、イメージを提供してくれたって言ったよな?」
「ああ、その通りです。欠落によって歪んでしまったこの街を、彼女が抱く安らぎの姿へと近付け、矯正し、安定させる」
「そう。それが、調律」
悠二の確認に、カムシンとシャンディアが何事もなく答える。
「僕はここにくる直前、吉田さんと河川敷で会って、驚いた。彼女が、あの誰もがボーっとなってる……」
悠二やシャナ、悠二の友人らの視線が集まる。坂井悠二の母親である坂井千草を、吉田が連れてきたのである。
「……状況の中でも、吉田さんは影響を受けていなかったからだ。これはたぶん、彼女を一部としている自在法が、連中の仕掛けに、そのまま使われているからだと思うんだ」
「ああ、それは私も同感です」
術者が肯定し、緊張が走る。
「ふうむ、調律の起動と同時に乗っ取り、好き勝手にこの街の歪みを操っている、というところまでは儂にも分かるが……燐子程度がここまで器用な真似ができるものじゃろうか」
「うん、そこがわからない」
ベヘモットの疑問に、悠二が唸る。
「あの燐子は、フレイムヘイズの攻撃や接近にだけ反応して、攪乱をしているように思える。逆に言えば、それだけ、みたいな…」
「うん。…この宝具、『玻璃壇』だっけ、使える?」
シャンディアに頷くと、今度はマージョリーに確認する。マージョリーは子分の田中に命令した。
「出したげて」
「はい、姐さん。『出ろ』!」
田中の手にした付箋に力がこもり、『玻璃壇』の上に小さな人々の映像が映し出されていく。祭りのせいか、人が多いが、教授の仕掛けのせいか遠くの地域以外の人々は棒立ちになっている。
「次、行くぞ。『存在の力の流れを映せ』!」
悠二を伺い、次は佐藤が玻璃壇に向かう。すると、人影が消えてまばらな灯火が残された。
「すごいな、これが存在の力の眺めか…」
「前のときとはかなり違ってる。あの時は、建物の内外から、お構いなしに根っこみたいな自在法がグチャグチャに張り巡らされてたんだ」
「ああ。少し見りゃわかるけど、今回はどうも人通りの多い道路に沿って、同じパターンが並んでる感じだな」
悠二の呟きに、佐藤と田中が説明する。その様子を見て、カムシンが納得したようにため息をついた。
「ああ、なるほど。ここまで大規模な自在式が張り巡らされていたら、あちこちに妙な気配が感じられるのも道理ですね」
「カムシンのカデシュの血印も混ざっているはずだけど、近づこうとすると攪乱されるんだよね」
シャンディアの補足に、カムシンが頷く。
ふと、玻璃壇を見ていた悠二がぽつりと呟いた。
「河川敷ががら空きだ…?この場所こそ人通りが多いはずなのに、なんでだろう」

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