それから一ヶ月というもの、僕は仕事終わりに必ずといっていいほどその喫茶店へ足を運んだ。
いつもこの時間の人は疎らで、カウンターの一番奥の席が僕の指定席のようなものだ。

「こんばんは」
「お、おつかれ!」

きたきた、と満面の笑みで迎える彼、エドワードさんはいつもの格好で、入店するとすぐに声をかけてくれる。

( まるで家に帰ったみたいだ。)

「今日も寒かっただろ、」

と言いながらいつも頼むブレンド珈琲を出してくれる。毎回この珈琲を飲むと一日の疲れが飛んでいくみたいだ。

そうして珈琲をゆっくりと飲む。前と違うのは、エドワードさんとの会話が増えた事と、お店の中で知り合いが出来たことだ。

「今日は一番の寒波らしいからな!」

と後ろの席から話に混ざってくるのは最近知り合いになったヒューズさんだ。とても人が良いが娘さんの自慢が度を越えていてたまに傷だ。

けれど確かに此処へ来るあいだに何度も寒波の二文字が飛び交っていたな、と珈琲を啜りながら頭の片隅で思う。窓から見える外の景色をちらりと見るが今のところ雪が降っているわけでもないし、大丈夫だろう。

と、二杯目の珈琲をスコーンと注文する。

「そういえば今日は早かったな、順調だったのか?」

こぽこぽと落ち着く音をたてながら目線は手元に向けたまま訪ねられる。長い前髪がさらり、と流れて、綺麗だ。

「そうだな、この時間に居合わせるなんて珍しいよなー」

ヒューズさんは相変わらず呑気に珈琲を飲んでいるがいつもエドワードさんに仕事に戻れと言われているあたり、そんなにのんびりしていていいのかと思う。

けれどやはり顔見知りになった程度で相手の仕事やら生活を聞くのは気が引けて、まだヒューズさんのことは美人といわれる奥さんがいることと、今年で三才になる目にいれても痛くない(らしい)娘さんがいることしか知らない。

「そうですね、今日は大雪なんて予報もあるんで、早々に切り上げてきたんです。残りは持ち帰りですよ。」

だがお互い模索をせず、年齢や職業も気にせず話せるというのはなかなか心地好い。

とんとん、とパソコンの入った愛用の鞄を叩いて苦笑してみせると、エドワードさんも「大変だな、」と同じように笑って見せた。








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