「いただきます」
「召し上がれ!」
カルテは無表情のまま、ビーフシチューを口に運ぶ。
その隣では、フレンが拳を作り、緊張した面持ちで一連の動作を見守っていた。
ゆっくりと咀嚼して、飲み込む。
「………………どう?」
フレンが控えめに尋ねた。
桃色の瞳には、不安と期待と緊張の色が、混ざり合って溶け込んでいる。
やがてカルテは、スプーンを持っている手を下げると一言。
「……まぁまぁ美味しい」
たった一言だったが、フレンにとっては十分すぎる一言だった。
瞳を、まるで星を散らばせたかのように輝かせ、カルテを見つめる。
次いで、拳を勢いよく天井に向けて突き出した。
「やっ、やったーーっ!!」
嬉しさを露わにして、その場でくるくると回って見せる。かと思えばその場で跳ね始めた。腰まで伸びた銀髪が宙を舞う。
「……なにしてるの?」
「喜んでるの!」
「喜ぶ?」
首を傾げると、フレンは元気よく頷いた。
「喜ぶっていうのはね、嬉しくなることなんだよ!」
「嬉しい……」
なおも首を傾げたままのカルテに、フレンはにっこりとしたまま自分の胸へ手をやった。
「嬉しいっていうのは、この辺がぎゅうってなって、ぱああってなって、思わず笑顔になっちゃうの!」
「よくわからない」
「うーん、きっとそのうちカルテも分かるようになるよ! だってカルテには心があるんだもの!」
満面の笑みを浮かべるフレンに、カルテは小さく頷いた。
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