短い/会話文/ジャンル雑多/不定期





「ちゅーちゅーしませんか?」
「えっ」
風呂あがりのサボはソファの隣へと座る。自分が人から、というか俺からどうみられてるかわかっていて、こてん、と首をかしげた。
「エース、ちゅーーーってしねぇの?」
手にはふたつくっついている某コーヒーミルク味のアイス。まぁそうだろうとわかってた、わかってたけどなぁ
「…します」
アイスに手を伸ばそうとするとひっこめられた。
「なんだよ、ちゅーちゅーするんだろ?」
「もちろん」
にっこり笑ったサボが近付いてあっという間に唇がくっつく。
「ちゅー…びっくりした?」
「サボ…もう一回」
「いや、もうアイス溶けるから。はい、エースの分」
機嫌よくアイスに齧り付くサボは今日も小悪魔だった。



エースをからかいたいサボ







エースは産まれた時から炎だった。姿形は人間に近いが、常に体の周りに炎が揺れる。
エース自身は熱くないが、触れるものを焦がしてしまうため、ひっそりと岩屋の奥で過ごしていた。
それでも、猿妖のルフィ、天狗であるゾロや不死鳥と呼ばれるマルコがたまにエースを訪ねてくる。(ゾロは来ようと思うのではなくただ風に流されるまま辿り着いてくる)
それに、この山の主である、通称白ひげがエースを息子のように可愛がってくれた。
それだけで、生きるには十分だった。


いつもは気ままに流されてやってくるゾロが、妖狐を連れてやってきた。金の髪が揺れる九尾だった。
「こいつの話を聞いてくれ」
そう言うや否や、ゾロはエースの寝床である岩屋にもたれかかりすぐに寝息をたてた。
妖狐はため息をつくと、サンジと名乗る。
サンジはよく人型に化け、里にでて遊ぶという。如何にレディがかわいいかをエースがげんなりするほどに語った。そんなことを話しにきたのかと思った矢先、サンジがじっとエースを見つめた。
「あんたの、その炎は産まれつきか?それとも、妖になる前があったか?」
「あるわけないだろ。俺は産まれてからここからでたことがない」
「それはゾロにも聞いた。けど、ナミさん…里の情報に早い完璧なレディなんだが、ナミさん曰く、体に炎を纏う男がいる、ってんだ。周りのものみんな焦がしちまう。」
「な、んだって?」
「俺もあんたしか噂には聞いてなかった。炎を纏う妖なんてそうそういねぇ。それが人間なんてありえねえだろ。その人間は15になった日に炎がでたそうだ」
「それで、その人間は」
「…大地主の長男ってことで、秘密裏に地下牢に入れられっちまってる。表向きは病ってなってるがな。妖に憑かれたって、親は混乱してるらしい」
「そいつに会えるのか」
「会って確かめるのか?」
「もし、そいつが俺と同じ妖なら放っておけねぇだろ。地下牢じゃねぇ、外にだしてやりたい」


*
ゾロが起こした風に乗り、麓へと降りる。
途中道に迷いそうになるのをサンジがうまく誘導する。まずはナミさんのところへ行くぞ。麓へ降りたつとサンジはすでに人型に化けていた。ゾロは変わりない。エースも人型(といっても炎を抑える程度だが)をとるとサンジの後を追った。
炎を抑えるのは相当の力がいる。そのためあまり人型をとりたくない。山を降りればそこは白ひげの領域ではない。攻撃されることもあるとマルコからきいた。だからこそ、いざ、というときのために力を残しておきたい。




ナミという女の家につく。
ナミは3人を見るなり目を丸くした後、早々に理解した。付いてきて、と先導しながら炎がでた男について話す。
「サボが大地主の嫡男、ということは聞いたわね?普通なら、妖憑きがでたなら早々に手を打つけど…あのクソ親父は家名と財産が好きなのよ。もし息子が妖憑きなんて知れたら家名は一気に没落するからずっと隠してる。サボも、優しい子だからなにも言わずに、力を使うこともなく地下牢にいるわ。サボに炎が出ることをしってるのは両親と数人の使用人だけ。後は病で隔離ってことになってるわ。この使用人の中にわたしの友だちがいてわかったの。クソ親父はサボがもう人間じゃないとわかってすぐに養子を迎えた。このままじゃサボは殺される。」
「…他の妖憑きも殺されてきたんだろ」
「えぇ、そうよ。妖憑きは正気をなくして死を招く。だから早く手を打つの。でもね、サボはまだ正気よ。ずっと。異変は炎を纏うだけ。」
「だから助けたいのか」
「…助けたいのは個人的な理由!あんた、炎を纏う妖なんでしょ!?だったら、サボは仲間じゃないの?」
「俺以外に炎を纏うやつなんてみたことねぇ」
「だったら、これから仲間にして、サボを守ってよ」
ナミが足を止めた先に、高い塀が立ちはばかる。右も左も長く続いている。
「この先の地下牢にサボはいるわ。お願い。わたしの恩人を助けて」
ぎゅ、と拳を握ったナミが振り向く。しかしそこには、サンジとゾロしかいない。

「俺だって、俺と同じやつを助けてやりたいさ」

声に振り返る。淡く纏った炎が美しい男は月を背負っていた。




妖パロ





「「エース!!」」
ニヤニヤとサボとルフィが呼ぶのを見て、エースは思い切り顔を顰めた。
「うわっ!見たかルフィ!今のぶっさいくなエースの顔!」
「見た!すっげぇぶさいく!もう一回やってくれエース!」
「やるか!」
「なんでだよ〜オレとサボが呼んだだけでぶさいくになるなんてよ〜〜」
「そうだそうだ!」
「お前らが揃って呼ぶときはロクなことがない」
「ロクってなんだ?」
「ルフィ、そこじゃない。俺たちが呼んでもエースがこれじゃあなぁ。しょうがない、二人でいくかぁ」
「えーーー!!エース、行かないのか!?」
「ロクなことがないなんて言われたら誘えないだろ」
ぶーーーと頬を膨らませたルフィと、ジト目で見てくるサボにエースは早々に降参した。長引くとそれはそれで面倒臭くなる。
「わぁるかった!俺が悪かった!悪かったから早く要件を言え!」
ルフィとサボが目を合わせると、ニシシ、と笑う。
「エース!祭りに行こうぜ!」
「やきそば!わたあめ!りんごあめ!やきとり!」
キラキラとした瞳を向ける二人に、エースはぱちくりと瞬きをした。
「ほら、エースって祭りに行ったことねぇって言ってただろ」
「今日はバイトもねぇっていってたし!な!」
「ルフィのじいちゃんが浴衣貸してくれたし」
「なっ!エース行こうぜ!屋台の飯ってうめぇんだ!」

エースは祭りに行ったことがない、ということはなかった。小さなころ、少しだけ花火をみたことがある。中学の時は屋台でバイトしたことだってある。
でも、誰かと一緒に行ったことはなかった。
「しょうがねぇなぁ」
なんて口を叩きながら、二人の頭を撫で回した。



現パロ/エースが高校入学あたりから仲良くなったASL






ズシン、と自分よりも幾分身長も体重もあるであろう男が崩れた。
周りにいた男たちが一歩後ずさる。
「もう終わりか?」
ポキポキと指を鳴らせば、さらに後ずさっていく。
「おっ、鬼だ…!」
誰かが呟いた。そして倒れた仲間をおいて青い顔で一斉に逃げだす。

エースはその背を見送ってから、自分も校舎へと足を向けた。
校舎の窓からは黒い塊たちがエースを睨んでいる。汚い落書きだらけの校舎。どこを見ても男、男、男。黒い学ランの男たち。
誰が上で下かも知らない。ただ、自分はここでてっぺんをとるだけ。にやり、と自然に口角があがる。

どいつもこいつも、やりがいがありそうだ。見渡した校舎の端、窓にひとり寄りかかる白が目に入った。
白いシャツに金の髪。冷たい目がエースを見下ろす。
ぞくり、と背中を何かが走っていく。
すっと視線が外され、男は窓から離れていった。もう少し見ていたかったと思う。
タイムリミットは1年もない。あぁ、久しぶりだ。こんなにわくわくするのは。歓喜に震える体のまま、男がいたであろう部屋を目指した。



学パロ(鴉零的な)






as

朝の燦々とした日差しがステンドグラスを通し色のついた光が降りかかる。
瞳を閉じて祈りを捧げる姿は美しく、黒のカソックが青年の、まだ少年のような細い線を際立たせまさに絵画の一枚のようだった。
ほう、と見惚れていると背中がゆっくりと立ち上がる。扉へと向かう青年はまっすぐに前を見据え、何かに気づくと少し口角があがった。その先が気になり目を向けるとそこには、黒髪の青年が佇む。こちらの青年もカソックを着ているが、顔が険しくすぐに目を逸らした。こわい。それでも二人が気になりちらりと目をやる。
黒髪の青年が、金髪の青年を隠すように先に扉から外へと押しやりでていくところだった。扉が閉まる瞬間忌々しげに睨みつけていた先は紛れもなく神の十字架だった。


Abyssus abyssum invocat.
地獄は地獄を呼ぶ




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