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笑顔で見送ったその後で
 

 じゃあね!と手を振って駅のホームから彼女を見送る。他の人から見たら気持ち悪いだろうなあ、とか思いながらも笑みが浮かんでしまう。今日は楽しかったなあ、と思い返しながら改札を通った。神奈川に住む彼女とは、なかなか会えない。だから今日のデートはひさしぶりで、最高の一日にしようとデートプランにも気合いを入れたお陰で、彼女も楽しめたようだった。
 多分彼女は今頃電車に乗って、ヒーターの熱に顔を火照らせているだろう。彼女はヒーターが苦手だから、すぐに顔が真っ赤になってしまうのだ。彼女自身はその顔が真っ赤になってしまう体質を嫌がっているのだけど、今日も映画館で火照った顔をペシペシと叩いていて、それを隣で見ていた俺は、かわいいなあ、とずっと思っていたのだ。
 デート、っていうのは試合のときとはまた違う、ふわふわとした、雲の上を歩いているような感じがある。だけどその一方で、彼女が頬を真っ赤にしていたりだとか、その頬を押さえる小さな指先だとか、そんなところをいちいち拾い上げてかわいいと思ってしまうほど冴えている。
 男は恋をしたらバカになるって姉ちゃんに言われたけど、それってウソだと思う。だってこれだけ彼女の一挙手一投足に気を払って、映画は感動したんだろうな、とかカフェオレ熱いのかな、とか考えるなんて、絶対バカじゃできないもん。それともそれがバカになるってことなのかな。自分じゃわかんない。

 俺が家に真っ直ぐ帰って、手を洗ってうがいして、そんで部屋に入ってその日買ったものだとかプリクラだとかを整理している頃に、そのメールは来る。


『無事に家に着きました。今日はありがとう。』



「おかえりなさい、こちらこそ、今日は楽しかったよ、と…」


 このメールを送って、俺らのデートは終わり。忙しいだろうからと神奈川まで送らせてくれない代わりに、二人で決めた約束。
 おかえりなさい、と送るとただいま、と返してくれる彼女に、今日もまた俺はバカになるのだ。



 笑顔で見送ったその後で






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