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全く同じこと考えてたりして。
 

 カレンダーを見て気づいた事実に反射的に顔をしかめた。別にそこまでいやなわけではないのだが、習慣とは恐ろしい。深々とため息をついて、財布だけもって腐れ縁の家へ向かった。



 *



「やっと来た。」


 亜久津今年こそは忘れたんじゃないかと思ってどきどきしたよー。午後になっても来なかったら電話しようと思っててさ。


「うるせえ。」

「あ、ごめんね。で、どうする?」

「いつもの。」

「はいよー」


 カラカラと下駄を鳴らして奥に向かった河村は、くるりと途中で振り向いて、「すこし待ってて。」とわざわざ言い置いてから奥に引っ込んだ。出てきたときは既に私服になっていて、まあいつものことかと嘆息する。


「ケーキ買いに行くんだろ?付き合うよ。」

「てめぇは手伝わねえのかよ。」

「俺はまだ修行中だからね。お世話になってる優紀ちゃんにそんな生半可なものは出せないよ。」


 そういってへらりと笑うけれど、たぶんあの母親はこいつが握ったものが一つでも入っていれば泣いて喜ぶんじゃないか、と思う。
 今日は、あの母親の誕生日だ。



 *



 あの店だろう?そういって河村が指差したのは、確かに行こうとしていた、最近できたケーキショップだった。


「…んでだよ。」

「だってあの店はモンブランがおいしいんだろ。」

「わざわざ調べたのかよ、気色悪ぃ。」

「あ、ひどいなぁ。」


 困ったように太い眉をすこし下げて、けれど本気で言っていないことは理解しているのだ。
 ああ、楽だなあ、と思う。不本意にも頭に浮かんだあいつにそんなことを言ってしまったら、真に受けられて面倒だ。


「二人でケーキ買いに行くなんて、誰かに見つかったら誤解されちゃいそうだね。」


 恋人とか。そういってさっきと同じように笑う河村は、確かに楽だけど、その代わりタチが悪いのだ。




 全く同じこと考えてたりして。






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