07



「先生……! まだ……動けます」

 遠目からでも分かるくらい指先が変色している。相当痛いだろうに、涙を目にいっぱい溜めて、それでも零さないように笑っている。ひえ、やば、めちゃくちゃ痛そう。骨を折った記憶なんて前世でしかないから、痛みの程度が分かんないけど、見てるだけでこっちも痛い。

「治してきていい?」
「……ああ、程々にしとけ」
「はぁい!」

 先生に一応お伺いを立てると、渋々って感じだけど許可が出たので、かなり無茶苦茶する緑谷くんに走り寄ろうとした。ら、

「どーいうことだこらワケを言えデクてめぇ!!」

 ツンツン頭の爆豪くんが、ものすごい剣幕で爆発しながら緑谷くんに詰め寄った。マジヤンキーじゃん。
 爆豪くんの腕が緑谷くんを掴もうとした瞬間、私の隣から白い布が伸びて、爆豪くんを拘束した。捕縛布、って言うらしいけど、便利だな。使いこなすの難しそう。

「……ったく、何度も個性使わすなよ。俺はドライアイなんだ」

 だから個性かけようかって言ったのに。ぷんぷんなんだけど。

「緩名、治すならさっさとしてやれ」
「はあい」

 今度こそ緑谷くんに近寄って、ぽんと背中に触れた。

「わっ!」
「私の個性、治療できるから、やっていい?」
「えっあああの」
「時間ないしさっさとやっちゃうね、指貸して」

 戸惑う緑谷くんはほっといて、青紫に腫れた指に触れた。ぴく、と指先が動くのを見て、痛いよね〜、ごめんね〜。少しだけ力を込めて、個性を発動する。やるのは回復力の向上だ。かなりぐんぐんに上乗せしてるので、少しだけクラっとする。小さな傷なら慣れっこだけど、大きな怪我を治す機会ってそんなにないから、慣れていないのだ。少しずつ腫れが引いてきて、肌色が戻ってくる。痛みはだいたい引いたとは思うけれど、やっぱり本職のリカバリーガールのようにはいかない。あ〜、練習しないとなあ。

「ごめん。簡易だからすぐ元通りにはならないから、後でリカバリーガールにも見てもらって」
「そんな! あの、ありがとう……あ、あなたの個性って、」
「次、始めるぞ」
「だって、早く行こ〜。いけそ?」
「あっうん! 大丈夫です! ありがとう!」

 緑谷くんの、怪我をしていない方の手を引いて先生の方へ駆け足する。手に触れた瞬間緑谷くんの目が点になって、ちょっとの間を置いて顔が赤くなっていた。異性に慣れてないんだろうか。え、かわいい〜。



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