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※少し下ネタ注意です


「ね! ね! 提案なんだけど、お部屋披露大会、しませんか!」
「おっいいじゃ〜ん」
「ケッくだらねえ。寝る」
「老人かよ……あいた」

 爆豪くんクソ地獄耳。ベチンとデコピンされた。鈍い音鳴る時が一番痛いんだからな。


「わああダメダメちょっと待──!!」
「お邪魔しま〜す」
「オールマイトだらけだ! オタク部屋だ!!」

 一番手、緑谷くん。まじでオールマイト尽くしだ。フィギュア、ポスターは分かるけど布団とかラグまでオールマイト。ポスター、グラビアか? みたいなのも多い。この部屋で抜けんのかな。オールマイトに見守られながら……とか気まずそう。口には出てないはずなのに、瀬呂くんにチョップされた。エスパー?

「磨チャン、顔に出てるからね」
「まじ? 気を付けます、範太くん」

 名前で呼び返すと、目を丸くしていた。そっちが呼んできたのに照れんでも。意外と初心だね君。

「やべえ何か始まりやがった……!」
「でもちょっと楽しいぞコレ……」
「人の部屋見んのいいよね」
「緩名の部屋綺麗だったもんなー」

 お隣の常闇くん。扉の前に立ち塞がっていたのを、三奈と透にどけられていた。ドンマイ。人は時として諦めも大事だよ。

「黒! 怖!」
「貴様ら……」
「エアコンのとこかわい〜」

 コウモリみたいな羽ついてる。かわいい。カーテンとか椅子とか、ゴシックっぽい雰囲気で結構好き。すぐに追い出されたけど。

「キャンドル、燭台にしない?」
「……良いな」

 ひっそり提案したらわりと気に入ってもらえた。今度インテリア通販見ようね。

「わ、ミラーボールいいなあ」
「でしょ☆」

 青山くんのお部屋は、常闇くんとは正反対のギラギラだった。一生落ち着かなさそうだけどミラーボールは欲しい。お風呂の照明ミラーボールにしたいよね。持ってこいシャンパンって感じじゃん。電気代バカ高そう。

「LEDライトに薄い布被せるとかわいい映えの感じになるよ」
「イイネ☆」

 映え、大事だ。見る専だけど。
 二階の残る一部屋は峰田くんだった。ハアハアしてたのでスルーして三階へ。学生寮だから猥褻物持ち込むの難しいと思うんだけど、実際男子寮ってAV持ち込むって言うしね。ほどほどにしないと先生に没収されると思うよ。

「ワァー普通だァ!!」
「普通だァ! すごい!!」
「これが普通ということなんだね……!」
「言うことないならいいんだよ……?」
「これってしっぽのやつ?」
「あ、そうそう」
「へえ〜今度ブラッシングさせて!」
「いいよ」

 三階一部屋目、尾白くん。シンプルだ。チカチカするドピンクのラグとか持ち込んでやろっかな。テーブルの上に乗ってるブラシが、髪の毛用っぽくはなかったので当たりをつけたら正解だった。ブラッシング、ちょっとしてみたかったんだよね。

「難しそうな本がズラッと……さすが委員長!」
「おかしなものなどないぞ!」

 飯田くんの部屋は本で溢れていた。めっちゃ積むじゃん。眼鏡の数にお茶子ちゃんが噴いてた。

「形も全部同じやつなの?」
「ああ! 使い慣れているものの方がいいだろう」
「え〜違うのも見てみたい。イメチェンも大事だよ」
「む……そういうものか?」
「飯田が丸め込まれてら」
「緩名ーあんま適当に喋んなよー」

 切島くんに注意された。テヘペロ〜。でも飯田くんの違うメガネも見てみたいよね。丸いヤツとか三角のやつとか。意外とアリじゃない?

「チャラい!!」
「手当り次第って感じだナー」
「えー!? よくね!?」
「車にホワイトムスクのスプレー置いてそう」
「? どーいう意味?」
「チャラいって意味」

 あのタイプの間接照明置いてる人も絶対チャラいよね。実際ぐねぐねした細長いライト、どうぶつの森でしか見たことない。でも上鳴くんらしくていいと思う。うん。

「ウサギいるー! 可愛いいい!!」
「んきゃわゆい」

 口田くんのお部屋はかわいらしかった。動物グッズがいっぱいだ。うさぎの名前は結ちゃんらしい。かわいい。口元もひもひしてる。かわいい。

「動物のスリッパかわいいのあるよ!」
「……!」

 写真を見せるとコクコクと口田くんが頷いていた。犬猫が多いけどうさぎもいいよね。かわいい。

「釈然としねえ」
「ああ……奇遇だね。俺もしないんだ釈然……」
「そうだな」
「僕も☆」
「男子だけが言われっ放してのは変だよなァ? 「大会」っつったよな? なら当然! 女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?」

 散々に言われた男子たちがなんか変に燃えている。クラス全員で部屋王を決めるみたいだ。別にいいけど、私の部屋まだ段ボールだよ。部屋王て。

「轟くんおねむ?」
「ああ……ねみぃ」
「ねむろきくんだ」

 眠そうにしてるのが何人かいる。私も今日は朝起きたのでちょっと眠い。ここ最近、家から出られないこともあり起きるの遅かったから。
 爆豪くんは寝てしまったので、四階は後切島くんと障子くんのお部屋だ。

「わあ……」

 切島くんの部屋、今までで一番コメントに困る。彼氏にして欲しくない部屋、申し訳ないけどマジでそれだわ。特に腕の生えた時計と大漁が嫌。

「なんで時計腕生えてんの?」
「漢らしいだろ!」
「うん……」

 感覚分からなさすぎる。そっか。

「次! 障子!」
「何も面白いものはないぞ」

 障子くんの部屋、シンプル通り越して無だった。生活感もない。色々物輸入したろ。

「ピンクと白どっちが好き?」
「……緩名、何か持ち込む気か」
「えっすごいなんで分かったの」

 意思疎通された。質問の答えは無かったからピンクのうさちゃん座椅子持ち込も。

「おお!」

 瀬呂くんの部屋、スケベだわ。アジアンテイストで統一された、リゾート感のあるインテリア。めちゃくちゃ凝っている。

「スケベだ……」
「ちょいちょいちょい、なんで距離取んの」
「スケベだ……」
「基準が分からん」

 ハンモックいいな〜。今度使わせてもらおう。

「さっさと済ましてくれ。ねみい」
「和室だ!!」
「造りが違くね!?」

 和室だ。すごい。盆栽もある。

「頑張ったの?」
「頑張った」
「えらいね」
「ありがとう」

 轟くん、褒めると頭を傾げてくるようになったんだけど、大型犬の躾みたいだ。丸い頭を撫でておいた。冬になったらコタツ置いてみかんも持ち込もう。

「じゃ次! 男子最後は!」
「俺」

 砂藤くんのお部屋は、変哲のない感じだけどめちゃくちゃいい匂いがした。甘い。

「ホイップがあるともっと美味いんだが……食う?」
「KUU〜!」
「模範的意外な一面かよ!」
「わあい!」

 みんなが食べるかと思ってシフォンケーキを焼いていたという! いい人。好き。いい匂い。男子は手掴み、女子にはフォークを刺して振る舞われる。すごい、大きいな。めちゃくちゃ食べたいけどあんまりお腹減ってないんだよね。マイク先生と車の中でいろいろ食べたから……。高速のサービスエリアは神なんだ。

「食べないのか?」
「食べるけど……ちょっと多い」
「……半分にするか?」
「うん!」

 一口食べてジッと見つめていたら、障子くんが半分こにしてくれた。優だ。このクラス、基本的に優しい人間が多すぎる。さすがヒーロー科。シフォンケーキめちゃくちゃ美味しかった。次は紅茶のやつがいい、とリクエストしたら、いいぜ! と快く了承してくれた。砂藤力道、神?



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