せこくても勝ち

暗転。
暗いフロアに足から着地する。ゴロゴロとそのまま転がると壁にぶつかった。壁にぶつかった衝撃で背中が痛い。さっきまでの暴力の雨と比べれば全然マシだと思った。大の字になって少し考える。このまますり抜けて1階まで降りたが早いかなぁ。もう摩天楼の半分は過ぎた筈だ。それでもまだ地上までは階数がある。もう誰かと戦う気力も武器もなかった。
「ちょっとせこいかもしれんけど、生きて降りたもん勝ちやんな」
どうせCランクやし、途中でさり抜けられんようなるやろ、そしたら走って地上を目指そう。
先程ボコられたおかげですり抜けることへの恐怖は消えた。むしろ下手にあんな化け物とまた鉢合わせすることの方が余程恐ろしかった。


すり抜けにすり抜けて、ようやく地上が近づいてきた。思いのほか簡単にすり抜けることができて、もしかして俺Cランクやないんやないのとか自惚れていたのも束の間、ドンと床にぶつかった。足を強かに打った衝撃を逃がすようにゴロゴロを転がった。他の階より天井が高いことに気づいた。どうやら1階に着いたようだ。あとは出入り口まで走るだけだ。落ちた衝撃で少し足がおぼつかない。ふらふらしながらも力走しては出入り口のドアに手をかけた。隙間から冷たい風が吹いた。そういえば新年やなぁ。新年早々ろくなもんじゃねえわ。グッと力を入れてドアを開けた。開ければ雪が頬を濡らした。大阪軍警の警備のライトが目に痛かった。ふらふらと歩いて見知った顔のほうへ向かう。
「竹千代ちゃん、先おりとったんね」
「! 博臣……顔面やばいで」
「ボコられた俺もかっこいいやろ。あとごめん、力入らんから、ちょっと支えて」
そう言って竹千代ちゃんの肩を借りた。1人でひたすらに逃げてきて、やっと誰かの体温を感じた気がした。安心したのか力が抜けた。
「ああ……他の奴らもはよ降りてこんかなぁ」
「せやね……あと少ししたらきっと降りてくるよ」
竹千代ちゃんが摩天楼を見上げて言った。

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