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「うお〜〜キタ〜〜

仙台市体育館!再びっ」

はい、春高宮城県代表決定戦、当日です!
いやーとうとうです!3連戦の1日目。
ほんと、あっという間で「うおおおお」「フライングすんじゃねーボケェー!!」

あぁぁ!!
「翔ちゃん前見て前っ!」
そのまま私も走り出す。あーあーぶつかるー!
「ぎゃっ」
「うおっ、なんだこのガキ・・・」
「はぁはぁ、ぶつかりましたよね?すみません。」
ほら翔ちゃん!と、肘でトンッと合図する。
「あわっすすすすみませんでした・・・」
ぺこりとあたまを下げて、すぐにあげるとバチっと目が合う。


・・・ほんっと申し訳ございませんが、この方お名前何でしたっけ?!『刈り上げさん』としか記憶に無い!いや、初対面だしいいんだけど、この小骨が喉に引っかかってるような違和感よ!あー何だっけなぁ〜?!
と、胸中ぬおおおと思いながら、さも今気付いたかのように、「あ、条善寺の方だったんですね!」と言っておく。

「へぇ、ウチの事知ってるんだ?」
「えぇ、一回戦目の対戦校ですから。」
「へー。ね、君可愛いね、1年生?番号交換しねぇ?」

「エェッ?!」
かぱっと目と口を見開いて驚く・・・・・翔ちゃん。いや失礼な!まさか姉が?!みたいな顔されてる!ま、まぁ私も予想外である。まぁでもこれで潔子ちゃんは無事だ。
「あの、3年です」
「えっ?!マジで?全然見えねー!ま、いいや番号教えてよ」
「いえ、「だっ!!だめです!!!」

「あ?なんだこのチビ」
「ヒィッ!」
「翔ちゃん?」

「あの!お、俺の大事な姉ちゃんなんで!!だ、ダメです!!」




急に大きな声を出すから何事かと思ったら・・・翔ちゃんが・・・あの、へタれで怖がりで恥ずかしがり屋で単細胞でおバカな翔ちゃんが・・・!守ろうとしてくれたのだ!姉を・・・!!姉を!姉って誰?はい私です!
なんて事でしょう・・・!!何たる感動・・・!
しかも聞きまして?『大事な姉ちゃん』ですって!!大事って!!!

我が人生、一片の悔い無しっ・・・!!


と、感動に打ち震えていると
「や、やめなさいっ」と声が聞こえた。

「あっ華ちゃん!」
「さちちゃん!」
「「久しぶりーー!!」」

きゃーっと手を取り合い喜んでいるときの刈り上げさんと翔ちゃんはまさにぽかーんという顔だった。

そうです。お友達なのです。そりゃ3年間マネやってたらマネの友達くらい出来るってね。条善寺も、常に上位にいたチームではないから意外と試合会場でよく会ってたのだ。それに、うちは元々先輩がいないので、他校での準備場所がよくわからなかったから実は結構お世話になったのだ。
・・・まぁ、この出会い頭と、あと潔子ちゃんがナンパされたら華ちゃんと仲良くしておけば、刈り上げさんとか抑えれるかなーなんて思って近付いたんだけどね、予想以上に良い子で!!結果とっても仲良くなれたのだ。

「久しぶりだねぇ!今日は宜しくね!!」
「こちらこそ!」

うふふーあははーとお話してるうちに皆が追いついて来たので、ばいばーいと別れる。
よしよし、良い感じにポカンで終わった!

「翔ちゃん翔ちゃん」
「ハッ!」
「庇ってくれてありがとう!格好良かったよ!!」
「あっ!え、そっそう?へへへ」
ほにゃんと照れたように笑う翔ちゃん。ぬああああああ可愛い可愛い!!ナデナデして和んでると「そこのアホ姉弟さっさとしろー」とか言われた。コーチめ。ひどい。ヤキモチか!




烏野は3回戦。マネは時間を見ながら待機場所で荷物番。選手は皆さまアップ中。
第1試合、Bコートは青城だったよね、と思ってコッソリ確認。おお、いたいた狂犬ちゃん!えーとえーと・・・な、名前名前・・・あった!京谷くん!・・・いや出場選手一覧とか見てないっすよ。やっと刈り上げさんイコール照島さんがわかったとかそんな事・・・。でも仕方ないよね、だってアダ名がインパクト強すぎるんだよ!!
にしても、狂犬ちゃん中々出ないなー・・・イライラしてそう。まぁ見たところでどうにも出来ないんですけどね!!

そうして、1回戦、2回戦と終わり
ようやく烏野対条善寺の試合だ。今日はベンチは私だ。この春高予選、怪我人続出だからなぁ。手当があるから、と言ってベンチを開ける訳にはいかない。
だけど・・・誰が、どんな怪我をするのかはわかっている。

避けれないんだ。ならば、事が起こった時にどう動くのか、が重要。だからとにかく調べた。必要なものは手に入れた。練習もした。・・・主に翔ちゃんで、だけど。だって小さい頃からよく外で遊んではいっぱい怪我して帰って来てたからねぇ。率先して手当てして。ちなみに学校ではずっと保健委員だ。ま、とにかくここからは少しでも彼らの負担を軽く出来るようにするしか無いんだ。



「こんにちは。・・・暇なんですね・・・大丈夫ですか・・・?」
「ほんっとお前どんどん俺に対する態度が雑になってんな!」
「気のせいですよ!嶋田さんは来ないんですか?」
「アイツは仕事だ。」
「・・・お店大丈夫ですか・・・?」
「可哀想な目で見んな!親父が店番なんだよ!」
「・・・デートとか・・・あっ・・・」
「このやろう・・・」
入り口でトーナメント表を見てたたっつぁんさんです!お久しぶりです!烏野商店街、大丈夫かマジで!!そんなくだらない話をして体育館の中に入る。
公式WUも終わり、すぐに試合が始まる。

「いやっほーい!」
「フゥゥゥ!」
「ソォイ!」
「ウェーイ!」

・・・バレーの試合なのに掛け声が面白い事になっとる・・・。


第1セット、序盤は条善寺の臨機応援な攻撃に皆、これがか!みたいな顔をする。そうです、これです。事前に知ってたとはいえそこは体感しないとわからないから押され気味。でも翔ちゃんのスパイダーマンなレシーブ(姉としては怪我しそうだしやめてほしい)、大地くんの堅実な守備。そして、声かけのお陰で単細胞組含め皆、落ち着きを取り戻している。
それに、自由奔放な攻撃なら負けないしね!


そして第1セット終盤、影山の顔面ブロックが決まった。決まったという事は・・・


「うわあああ!影山あああ!!死ぬなあああ!!」
「おい血止まるまで交代だ。」
「鼻血なんて出てませんっ!!」
「ぶはっ!」
「出てるよなんでウソつくの」

出てる出てる!めっちゃ出てるから!両方から!キリッとしてる場合じゃないから!ウケる!!

タイムになり、すぐにティッシュを渡す。
「影山、目は?鼻血以外は大丈夫?」
「ハイ」
「ん、ちょっと見せて・・・よし、じゃあね、ココとココ、摘むように、ちょっと強めに抑えてて。あ、そうそう、そんな感じ。下向き気味で上向かないでね。」
「エ。」
「鼻血、上向いたら血が喉に逆流して噎せたりするからね、流れるがままのがマシよ。」
「!!」


よし、応急処置完了!!後はそのまま医務室へ。
少しして山口が戻ってくる。

その後の試合は、途中翔陽が抜けたりしたが、条善寺のシンクロ攻撃が失敗し、第1セットが終わる。


そして第2セット、翔陽と影山が再びコートへ。

早速、速攻と思いきやミスが出る。それを読んでいたのか大地くんのカバー・・・ノヤっさん曰く尻拭い。うあー格好良いなぁ!ここだとコートの声が凄く良く聞こえる。ちなみにわたしはさっきから「っしゃ!」「あっ!」「ふぬぅっ!」と小さい声が勝手に出て困ってます。そして視線が勝手に大地くんを追うので困ってます。




「・・・俺にはド派手なプレーは無理だけど、土台なら作ってやれる。


まぁ、存分にやんなさいよ」






くぁーーーっ!!!
格好良いぃぃぃぃぃ!!!!

あぁ・・・そうだった。思い出した、このシーンだ。前世で、澤村大地という人が好きだと思ったんだ。読んだ時は心の中で『きゃぷてーん!!』って叫んだ恥ずかしい過去まで思い出した。

あの時は澤村大地という人は、すごく大人って思ってた。でも実際は、やっぱり年相応で。結構な頻度でバスケ部の主将と昼ごはん争奪戦やってるし、授業中寝て焦ってたり、バカみたいに大口あけて笑ってたり、クラスメイトとテストの点勝負してたり・・・色んな顔を見て来た。なんだか懐かしいな。
最初の頃は、それこそ『あの大人な澤村大地さんはいずこ・・・』と思った事もあったけど、全部が大地くんなんだよね。年相応にヤンチャで、でもしっかりした考え方を持ってて、人を率いる力があって。・・・優しくて。温かい。


だから、好きになったんだ。





なんて過去を懐古してるうちに、第2セットも終わり、1回戦目、ストレートで勝利となった。




さぁ、明日だ。2試合もある。大事な試合だ。必ず、勝つ。ううん、勝てる。


信じて、頑張ろう。




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