2
 

「やっ谷地仁花です!」

「日向さちです、宜しくね!」
「しっシャス!!」

という訳で、潔子ちゃんが連れて来てくれたのはやっぱりやっちゃんだった。

「谷地さん・・・やっちゃんって呼んで良い?」
「はっハイ!」

へへ、可愛いなぁ!
潔子ちゃんも嬉しそうだ。

やっちゃんが仮入部となりしばらくして・・・翔陽とはすっかり仲良く?なっているようだ。いつもの皆との帰り道、やっちゃんが増えた。翔陽とやっちゃんの後ろ姿を見ると、なんだか微笑ましくて、嬉しくなる。なんかさ、こう、似合うんだよね、身長差が良い仕事してるんですよ!

「また顔面が緩んでるぞ。」
「大地くん!えーだって翔陽とやっちゃん仲良さそうだからさぁ。身長差がいい仕事してない?!」
「身長差?え、女子ってそんな事考えるのか・・・」
「うん!それにさ、やっちゃんが華奢だから体格の差もわかると、あー男の子なんだなーって!いつか翔陽にも可愛い彼女が出来て、その子を一生懸命守っていくんだって思うと、大きくなったなぁって」
「・・・さちは日向の事となると完全に母親目線だな」
「生まれた時から見てるからねぇ。それはそうとさ!練習試合の申し込み、増えたね!」
「あぁ、頑張らないとな。」
「練習試合が増えるってさ、皆の事、飛べない烏って言う人がいなくなっているからだよね。」
「!そうか・・・そうだな。そうだよな!」




これで、本当の全員集合だ。




練習試合、そうです東峰がヒモ付けるようになった日です。この日、烏野が勝利した。
変人速攻が決まるとやっぱり気持ちいいなぁ。やっちゃんの驚いた目!!試合後の翔陽との会話は私も全くよくわからなかったけど。



翌日、更衣室で入部届けをじっと見つめるやっちゃん。悩んでるんだろうなぁ。



「・・・やっちゃん、昨日試合初めて見たんだよね、どうだった?」
「凄かったです!あ、あんな腕もげそうなのに!」
「あははっ。やっぱり生で見ると迫力が違うよね。・・・でも、ルールを覚えたら、もっと面白いと思うよ。」
「!あ、あの、日向先輩は・・・」
「さちでいいよ!日向2人いるしね!」
「へぁっわわわ私なんかがそんないいんですか?!?!」
「いいよいいよー。どうしたの?」
「その!なんで、マネージャーをやろうと思ったんですか?」
「私は元々バレーやってたんだけどね、テレビで全国大会に出てる烏野を見たんだ。で、どーしてもここでバレー部に入りたかったの。翔陽がここ入りたいってのも知ってたから、少しでも力になりたかったんだ。」
「・・・はー・・・凄いですね・・・」
「私は入りたくて入った人だし、バレー経験者だから。・・・でも潔子ちゃんは違うよ。」
「えっそうだったんですか?!」
「・・・バレーもマネージャーも未経験よ。何だって始める前から好きって事無いじゃない?ーーーーーー成り行きで始めたものが少しずつ大事なものになっていったりする。」




「スタートに必要なのはチョコっとの好奇心くらいだよ。」



「!」


「潔子ちゃんの言う通りだよ。・・・それにね、やっちゃんが入部してくれれば、私達はすごーーく嬉しい!初めてで、何も出来ないなんて当たり前だよ。何か知りたい事があれば教えるし、気付いた事があったり、やろうって思う事があれば、力になるよ。」
「!!・・・ありがとう、ございます・・・!」
「それにね、もし入部しなかったとしても、こうして知り合ったのも何かの縁だからね、後輩と先輩だけど、お友達だよ!」
「!」

さぁ、やっちゃんが立ち上がって、自分で進み出す一歩目だ。




その後、無事にやっちゃんはお母さんに入部宣言したらしい。晩御飯のとき、翔陽がそれはそれは嬉しそうに話してくれた。そしてやっちゃんが烏野のポスターを作りたいと言ってたから写真を撮る事になったと教えてくれた。




こ・れ・は・・・!!







「・・・やっちゃん写真撮るの上手いねぇ!!」

私?勿論見学である。やっちゃんほんと上手いっ!!凄い躍動感ある!!

「やっちゃんその写真、素材として使い終わったら欲しいな・・・欲しいな・・・!!」
「エッ?!い、良いですケ「本当?!ありがとうありがとう!!お礼にこの写真あげる!!」

と、待ち受け画像を送っておく。勿論、ぺちゃノヤと翔陽のツーショットである。これを貰って嬉しくない人はいないでしょう!!ふふー!!



「エッ・・・あ、ありがとうございます・・・?(日向と・・・誰・・・?)」



「・・・姉ちゃん恥ずかしい・・・」


聞こえない!!!







そして数日後、出来立てのポスターを頂戴する。

「ありがとおおおぉぉぉほんっとにありがとおおおぉぉぉ!!!」
「イッイエイエ」
「やだ翔ちゃん格好いい・・・可愛い・・・格好いい・・・」


「?!?!」
「・・・さちはブラコンだからね。・・・慣れてね。」
(なっなるほど・・・)



これこれ!このポスター超欲しかったんだよね!!部屋に飾っておこう。うん、そうしよう!!

ポスターが街に貼られるようになった頃、やっちゃんが正式入部となった。ちなみに
ジャージを渡す時の「ようこそ!烏野高校排球部へ!!」っていう、両手の親指で背中を指差しする例のアレ、今だに影山が中々出来なくて、めっちゃ怖い顔でやっててくっそ面白・・・可愛かった。






そんなこんなで日々は過ぎてゆく。明日は休日だ!勿論テスト期間に入りテスト勉強の為休みとなったのだ。
2年生は、再び田中の家に集まり最終追い込みをするらしい。
ここで私の渾身の仮テストの出番である。
・・・実は過去問なんかを纏めたものは既に渡しているのだ。あ、勿論縁下に。・・・涙目で感謝された。もう俺アイツらどーしたらいいか悩んでて!!ほんとありがとうございますありがとうございます!!と。どんだけなんだよあの2人・・・と縁下の苦労を思うとこっちも涙目だ。


私はこの仮テストを田中の家に届けに行くつもりだ。というのも、冴子さんに会う為だ。

上手くいって補習が無くなった場合、冴子さんがバレーを見に来る機会が無くなるんじゃ無いか・・・『応援に来る機会が無くなる。』そこが一番心配なのだ。
家にいるかはわからない。勉強会は午前中から行うらしいので、昼前には渡しに行く。その時いなかったら、教えたげるとか言いながら待つつもりだ。

彼女は春高で素晴らしい応援団を連れて来てくれる。そこは変えちゃダメだ。
ここで私が仲良くなれれば、今後の予選なんかも応援にも来てくれるだろう。それに私自身、冴子さんの性格が好きなので、ぜひ仲良くなりたい!




と、準備している前夜、大変な失敗をしている事に気付いた。




何てこった・・・!!田中の家、知らない・・・!!翔ちゃん助け・・・寝てるし!早寝早起きに育ててしまった私の馬鹿!!田中に直接聞く?!でも寝てそう!勉強の事は断られそう!縁下・・・だめだ気を遣わせて取りに来てくれそう・・・!それだと目的が達成出来ない!家知ってそうな人・・・。主将の家に全員の連絡先やら住所の書かれた用紙があったような?大地くんに連絡してみようかな。
メールを送ってみる。
“遅くにごめんね、起きてる?”っと。

・・・・・・緊張する・・・

〜〜♪


ヒャーーー!!まさかの電話!うぇ、あっどっどうしようってでででで出なきゃ!!

「もっもしもし!」
「おー。何かあったか?」
「ご、ごめんね遅くに!!」
「ん、いいよ。」
「いやあの、田中の家、知ってる?」
「田中の家?知ってるけど、どうした?」
「あのね、・・・・・・」

と、事情を説明する。・・・うん、落ち着いてきた。

「成る程な。田中ん家、ちょっと解り辛いから一緒に行こうか?さち1人で行かすのも心配だし。」
「え、い、いいの?」
「うん。あー・・・ついでに俺らも一緒に勉強しないか?俺もわかんないとこ教えて欲しいし」
「わぁ、いいね!3年生皆で集まる?」
「・・・・・・そうだな、声かけとくよ」
「じゃあ皆には昼から集合にして、午前中に、田中ん家に行こっか」
「そうだな、どこで待ち合わせる?高校の最寄駅からバスだから駅でいいか?時間はどうする?」
「じゃあ10時くらいでいい?本当にありがとう!集まるなんて初めてだね!楽しみにしてる!」
「いいよ、・・・俺も楽しみにしてる。・・・おやすみ」
「おっ、おやすみ」


ボフッとベッド へ俯けで倒れ込む。




緊張したぁぁぁ・・・!!
いやー今まで電話したことあったっけ?!だって部活もクラスも同じですよ?!電話で話す事なんかあっても1、2回じゃない?!
うわーうわー・・・い、いい声でしたご馳走さまですありがとうございます!!しかもおやすみだって!ふへっ耳が幸せ・・・。
はっ明日服どうしよう?!私服とか見せる機会無いし!!がばっと起き上がりクローゼットを開ける。
・・・いやちょっと待て。べっ別にデートな訳無いんだからそんな気合いや入れた格好はおかしいわうん。勉強会なんだからラフでいいよね。うんうん。

ちょっとは、可愛いって思われたいけど・・・

あ、いやもう寝ます。寝ましょう。おやすみなさい!













(皆で、かよ・・・(遠い目))


前へ 次へ


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -