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「ーーーで、来月になったらーー


期末テストあるの・・・わかるよね?







ーーーわかるよね?」








はい、阿鼻叫喚である。




あっちこっちで大変なことに!「縁下捕まえろ!」「影山が息してません!!」と叫び声が飛び交っている。ぶふふふウケる!面白いなぁ!しかも翔陽はなぜコーチに行くかなぁ!OBだし失礼ながら秀才タイプじゃ無さそうだしっ!!ほんっとおもしろ「俺高校入ってから60点満点の小テスト、二桁以上の点数とったこと無いんですけど大丈夫ですか?!」








・・・・・・・・・ん?




・・・なん・・・だと・・・?






「・・・翔ちゃん?」

ばしっと口を抑えて、真っ青な顔をする翔陽さん。

ごめんねぇ、聞こえたわよ?

「・・・お姉ちゃん、毎日毎日毎日毎日予習と復習がどれほど大事か言ってたよね?ちゃんと終わったか確認したときには、終わったーって言ってたよね?・・・ね?」
がしりと肩を掴む。
「ヒッ・・・」
「小テストって・・・前の授業の復習だよね・・・?」
「ごっごめっ・・・」
「・・・お姉ちゃんに、嘘ついてたの・・・?」
「ヒィィ!!」
「・・・小さい頃から、嘘はついちゃ駄目って・・・これもお姉ちゃんいつも言ってたよね?」

「ひっひなちゃん、お落ち着いて!!」
「菅原くん家庭の問題に口出さないで下さる?」
「!サーセン!」
(スマン日向!無理!)
(そんなスガさん助けてぇえ!)



何てこった・・・!!!何の為に毎日口を酸っぱくして確認してたと思うんだ・・・!これだよこの補習回避のためだよ!!言いたく無い時もあったし、しつこくて疎まれたら、嫌われたらどうしようとか悩みながらも言ってたのに・・・!!

あぅ・・・しかも・・・う、嘘つかれてた・・・翔ちゃんに・・・嘘・・・


ぽろぽろ



「う、うわああああ姉ちゃん!!ごめん、ごめんなさいごめんなさいぃ!!」
「ぎゃーひなちゃん泣いてるー!!」
「翔ちゃんが嘘ついたあぁぁぁぁ!うわぁん!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!」


「狼狽えるな!!」



「テストまでまだまだ時間はあるんだ・・・」


翔ちゃんがぁぁ・・・お姉ちゃん悲しい・・・


「このバカ4人抜きで烏野のMAXが発揮できるか?!いや出来ない!!」
「嬉しいような悲しいような」
「やってやる・・・全員で東京行ってやる・・・!」
「目ぇ据わってる!!」
「怖い!!」

うぅ・・・。

「それと、日向!」
「ハイィ!!」
「ぅぶっ」

目の前が真っ暗になったと思ったらわしゃわしゃされるので咄嗟に掴む。こ、この感触はタオル・・・大地くんのタオルで涙どころか顔ごと拭われてる。

「さちがどんな気持ちでお前に言ってたのか、わかるか?わかるよな?」
「ハイ・・・」
「姉ちゃん悲しませたら駄目だろ。こんな良い姉ちゃんどこにも居ないぞ。ちゃんと反省しなさい!」
「ハイ!・・・本当にごめんなさい・・・」

「ん。よし!ホラさち、日向も反省してるし許してやれ。な?」
「うぅ・・・」
顔からタオルを離して大地くんを見上げる。と、ぎょっとされた。と思ったら再びタオルを顔に当てられてわしゃわしゃされる。
「い、いひゃい」
「お、おぅスマンっ!だっ大丈夫か?!」
「う、うん?もう大丈夫」

すーはーと深呼吸して、真っ直ぐ翔陽を見つめる。

「翔ちゃん、もう嘘ついちゃ駄目だよ。」
「ハイ!!」
「ん、約束だよ。」






「さすが大地お父さん!」パチパチ
「誰がだ、誰が!」




まぁ、という訳で練習、勉強、練習、勉強の日々が始まった。
まだテストまで時間はあるというのに。
翔陽は、本当にまじめに勉強しはじめた。まるで受験の時のようだ。毎日のように、姉ちゃんここ教えてー!と突撃訪問がある。たまに部屋から叫び声が聞こえるのは、多分研磨くんとのメールだろう。

翔陽の訪問が無い日は夏ちゃんが、お兄ちゃん遊んでくれない!お姉ちゃん遊ぼー!と突撃訪問だ。
ちなみに夏ちゃんは翔陽以上に素直である。宿題終わったか聞くと、終わった!ほら!とわざわざ持って来てドヤ顔だ。終わって無かったら堂々と「まだ!」とドヤ顔だ。くそう可愛いな!!

私は日々の授業と休み時間にテスト対策をし、本当のテスト前には見直しで大丈夫なように準備しておく。テスト前は授業を真面目に聞けば結構出るとこわかるしね、1学期の期末テストならまだ範囲も狭い。

そして、私にはもう一つやる事があった。

ふっふっふっ・・・これこそ私の3年間の努力の結晶といえよう。ばさりとソレを机の上に広げる。
1年の時からテストの度に、先輩にテストで出題された問題を聞き、纏めていたのである。つまり、私の手元には過去数年分のテスト問題がある。そしてその時の教科担当の先生の名前も。先生という人も人間である。癖があるのだ。つまり絶対ここ出す、とかがある程度よめる。これを元に勉強すれば最低でも赤点は取らないはずだ。私なりに分析し仮テストも作っておく。文章読解が苦手な子には、文章はどこぞのバレー部物語にしておいたら頭に物語が入りやすいハズ。
とまぁせっせとそんな事をやっているのだ。しかも全学年分、全教科だ。本当は普通科の分だけやろうと思ってたんだけど、まさかの自分が進学クラスになってしまったので、結局全部になったとゆー・・・。まぁ長期休みとかにやってたんだけどネ。自分の勉強にもなったし良い事が多かった!
確か影山は現文、翔陽は英語だ。翔陽は回答欄ズレてたとか、影山は読解問題だった気がする。回答欄のズレとかだとアドバイスくらいでいいかと思ったし、ここまでしなくも、とは思ったんだけど・・・何せ影山の学力が未知数だ。



この補習だけは、原作回避したい。
唯一私が出来る事だ。
今回の遠征は烏野が強くなれる、進化出来る事がわかってる。半日でも早くなれば、翔陽は今のままでは駄目だと早く気付けるかもしれない。

・・・ただ、ここに至るまでに気付いた事がある。多分、バレーに関しては変わらないんだろうという事。潔子ちゃんのTシャツの四字熟語とかは変わった。だけど、青城戦とかはもう点数まで同じだった。だけど・・・だから、テストなんかは努力と対策で何とかなる。翔陽にとって少しでも経験を積む事は、必ずプラスになる。1セットでも多く試合をして欲しい。とにかく願うのはそれだけだ。

そんな想いで3年間やってきたこのテスト対策。




そうして過ごしていたある日、潔子ちゃんが嬉しそうに走って4組にやってきた
「さちっ!」
「!潔子ちゃん?」

この嬉しそうな顔は、もしかして・・・

「1年生の子で、仮入部してくれる子が見つかったの!」
「えっ本当に?!うわぁ凄い!さすが潔子ちゃん!」
「日向がね、1年で部活に入ってない子探して協力してくれたの。」
「翔陽が!さすが我が弟!」
「ふふふっ。でね、今日見学に来てくれる事になったから・・・」
「わかった!準備は任せて!!・・・大変だったよね、本当にありがとう・・・!!」
「ううん、いいの。じゃあまた部活でね」


本来、潔子ちゃんは人見知りだし口下手だ。仲良くなればそんな事全然無いんだけど。
たくさん努力したんだ。今まで見た中でも1番の笑顔だ。本当に、嬉しい・・・!!



「大地くん!」
「どうした?」
「あのね、潔子ちゃんが1年でマネージャー探してくれててね、やっと1人仮入部で来てくれる事になったの!」
「えっ清水が?!」
「うん!自分で探したいって言って、頑張ってくれてたの!」
「そうか・・・!清水が・・・!」

大地くんがまたお父さんのような顔になっている・・・


「今まで部活してなかった子で、1年生ってことは、上級生で背も高い人達とは関わり無かったと思うの。皆でわらわら寄ったり取り囲むと怖がっちゃうかもしれないから、あまりそういう事が起こらないようにして欲しいの。特に顔怖い系。」
「・・・旭とかだな。」
「ふふっ!そうそう。」
「わかった、任せろ!」


よしよし!
きっと、連れて来てくれるのはあの子だ。翔陽以上にビビりだし。
初対面で必要以上に怖がらせる必要無いし、皆が優しい事はわかってるから、先入観が無ければ打ち解けやすくなると思うし。


楽しみだな、あの子はこれからの烏野に必要だ。
不器用だし相当ヘタれだけど、やるって決めたら全力で取り組んでくれる子だ。
・・・それに入部する事によって彼女自身、成長出来る。そんな彼女の成長に、少しでも力添えできれば、こんなに嬉しい事は無い。





会えるのが楽しみだ。




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