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第2セット。ローテを回して挑む。当たり前だけど、他の人、つまりエースである東峰にマークがいく。

「・・・日向に頼ってばかりもいられないです。日向が活きててこそ俺達も活きる。ちゃんとエースらしい働きしてみせます。」




なんてこった!





「旭くんが・・・!!格好いいこと言ってる・・・!」
「おお・・・」
「育ったなぁ・・・!」
「親戚か」
「ついこないだまで、キノコ収穫してたのにねぇ・・・」
「だからそれ何?!」
いやはやお母さんは嬉しいよ・・・!!


そして第2セットが始まる。
ちらりと観覧席見上げると、女子バレー部の姿が。応援来てたんだ。原作ではどうだったかな。来てたっけ?・・・だめだ考えないでおこう。
大きな声で声援を送る。

だって、原作にはいなくて、関係が進んだから応援に来た、とかだったら・・・って、考えると落ち込むもんね。いやまぁあちらは試合帰りだろうけども!


試合は進む。一進一退の攻防という感じだ。
だけど、3月とは違う。
変人速攻効果もあるんだろうけど、東峰の、エースの気持ちというか、試合への姿勢が違う。何度止められても気持ちを切らさない。それがどれだけ大切な事なのか。
それに、この試合は東峰VS伊達工というイメージが凄く強いけど、実際に観ると、ツッキーがいい仕事してるんだよねぇ!止められる事はあるけど、フェイントしたり、コースの打ち分けも上手いよね。ブロックもワンタッチ多いし。
あー本気モードのツッキーになって欲しいなぁ。でも彼のココロを動かすのは絶対、私には無理だもんなぁ。逆に地雷踏みそう。それに、今は今で結構本気だしねぇ。

応援しながらそんな事を思っていたら突然先生が「烏野にも壁はあるんです!!」って叫ぶからびっくりしたら東峰・月島コンビがブロック決めたとこだった。
いーねぇーデカいの二枚!!
ウェーイと先生とハイタッチ!試合は進み、マッチポイントとなった。
翔陽は下がり東峰が前衛。ラスト一点だけど、ブロックに阻まれボールは後方へ。
それをノヤが拾う!再び返そうとするも押し合いに。そして、押し負けてしまい再びボールが烏野のコートへ。




誰もが落ちると思ったその時。


西谷が、足でボールを上げた。





一瞬、何が起こったのかわからなかった。ポカンと口を開けるだけだった。

ギュッとスパイクの音が鳴り、東峰が助走距離を確保。それを見て、無意識に立ち上がった。そして、出てきた言葉。

「っもう一回!」

よく、漫画や小説で『心が一つになる』という文を読む事があるけれど、今、この時がまさにそうだった。
コートの皆が、控えにいる人が、願った。
だからこそ影山の選択は

ネットから少し離した、高めのトス。

飛び上がった東峰の姿。なんて逞しいのだろうか。全てを託された本当の、エースの姿だった。



ドガッという音。ボールは白帯の上を転がり、伊達工コートに落ちる。





ピーーーーーーと、試合終了の笛の音が響いた。

「ッシャアアアアアア!!!」


もう、何だか胸がいっぱいだ。

「ちょ、コーチ!!勝った!!」べしべし
「おぉ・・・」
「わー勝った勝った!わー見ましたノヤの足!わあ、わあああ!!」べしべし
「わかったから腕を叩くな。」
「だって!勝っ!そっかー!東峰が!」べしべし
「わぁったから日本語喋れ!そして叩くな!痛ぇーよ!」
「日向さん落ち着いて!」

あ、か、勝った!そりゃ勝つのは知ってたわよ!いやいやノヤっさん足で上げた!あ、足って!あ、あーあーあった、あったわ。あっそうだよこの試合だわ!えっセットのラストボールは全部東峰だっけ?!とまぁ脳内パニックな状態である。どうやらその間コーチの腕を叩いてたらしい。すんません。でも痛いは嘘だ。か弱い女子だ私!



カラカラとボール籠を押しながら外へ向かう。

だけど、ようやく実感してきた。
この伊達工に勝利したという事実は、あの3月の試合を経験している人にとって、こんなに大きい事だったとは。
あぁ、まだまだこの余韻に浸っていたいのに、時間は止まってくれないのだ。

キャア、という黄色い声。青城の試合だ。


あー・・・明日か・・・。

とか思ってたらバチンと及川と目が合う。

「さちちゃ〜ん」

ぎゃーまた手振りやがった!だからファンの目が怖いから!!あっ岩ちゃんが殴った!ナイス!グーよグー!サムズアップしたら返してくれた。優しい。

「ほらほら進めー」
「おぉお!」
「フグゥ!」
でーんと背中を押されたと思ったら籠ごと前を歩いてた東峰に激突した。私悪くない。
誰でぃ!と思ったら我らがキャプテン・・・

「うははは、悪い悪い。」
えぇ〜・・・わ、悪いと思って無さそうな程爽やかだ。
「・・・はぁ〜大地大人気ない・・・」
「うるせ!」

うん??
私と東峰の頭の上にはハテナマークが浮かんでいるだろう。そしてそれが見えたであろうスガちゃんに気にしなくていいと言われた。そうですか。

その後は皆着替えて、観覧席に移動し青城との試合を観戦。

「澤村〜!」
「道宮」
「おめでとー!すごいじゃん!!」

嬉しそうだなぁ道宮さん。・・・可愛いなぁ。
澤村も嬉しそう。

・・・なんか、やっぱりこう2人の姿を見ると、踏み込んではいけない領域を感じる。
大地くんの私に対する態度が家族的なものならばあの子への態度が恋人への態度なのかな。でも、だとしたら・・・やっぱり、私には過剰な気がする。
うん、駄目だよね。ちょっと考えなきゃ。


そのまま皆とは、少し離れた位置に座り息をつく。



それよりも、明日だ。


明日、烏野は・・・。


伊達工に勝った時、心の底から嬉しかった。嬉しくて仕方無かった。

明日って考えるだけで胸が痛い。





そして、その日は撤収となり、学校でミーティングし、解散となった。
















「今日の伊達工戦はな、言わばビールの一口目だ!」
(ウンウン、分かるわぁその気持ち。)

「烏養君未成年にもわかる説明をって日向さん何頷いてるんですか!」

(ひえぇしまった!!)

「ちっ父が!!こっこっコーチと同じセリフを!」
「驚かせないで下さいよ〜も〜」
「すみません・・・」

(あばばばば危ねーー!!!)



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