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「翔ちゃん忘れ物ない?」
「無い!姉ちゃん電車っしょ?俺チャリだしもー出る!」
「うん、あっコレ持っていきなさい。」
「?何この袋?」
「何ってゲ●袋・・・」
「〜〜〜!!姉ちゃん!」
「あははっ行ってらっしゃい!後でね〜!」


朝からそんな会話をした予選初日。
仙台市体育館。皆の一歩後ろ、荷物を持って歩いてると面白い。「アレはまさか烏野の・・・アズマネ・・・!」とか「5年留年してる」とか言われ放題。東峰の素を知ってるからこそウケる。

合宿のとき撮ったノヤとの写真見せて『実は彼、子持ちでして・・・』とか言ってみたい・・・。

アレっ?今までの旭くんへの噂を総合したら・・・

「スガちゃんスガちゃん」
「ん?」
「『5年留年して成人してもバレー部に居続けてエースやる』って超ワイルドじゃない?」
「ブフッ!ちょ、やめてひなちゃん!」

どうやら根本的にそう見られることから変えたいらしい。なんじゃそりゃ!

と、そんな話をしながら歩いてると

「おいアレみろみろ かわいっ」
「お前声かけてみろよ」

なんて会話が聞こえてきたので
「田中、ノヤ!GO!」とけしかける。
けしかける必要無くガードに行ってたけど。

「あのっすみません」
「はい?」
パッと振り返ると、違う高校の人。選手かな。なんだろう?
「あの、その〜」
?なんだ??
「!!ヒィッ!」
「は?」
「すいませんでした!!!」
「???」
目を泳がせたかと思えば真っ青になって走り去って行った。何なんだ?!

「・・・さち」
「大地くん?」
振り返ると大地くん。
「ほら、行くぞ。」
「あ、うん・・・。さっきの人何か用事あったのかな。」
「ハァ・・・。気にすんな、遅れるぞ。」
「あっごめんね!」

そして伊達工の青根くんにロックオンされた東峰。これさー本当失礼だよねぇ。何だよロックオンする癖って。この子将来大丈夫か。

・・・言ってやろ。

「ーーー今回も、覚悟しといて下さいね。」

ガシッ
「ちょっとすみません。青根くん?」
「?」
「おっ可愛い系の方のマネージャーさんじゃん」
「貴方に用事はありません。青根くんさ、小さい頃人に指さしちゃいけませんって教えて貰わなかった?」
「・・・」

ギョッとされた。なぜ。

「教えて貰ったのか貰ってないのかどっち?」
「・・・」
「答えれないの?教えて貰って無いなら仕方ないけど、その癖直したほうがいいよ。失礼な行為だから。高校生で許して貰えるうちに治しな。社会人になったら通用しないよ。只でさえ外見で誤解されるんでしょ。損するよ。」
「・・・!(コクリ)」
「わかって貰えたなら良いよ。1回戦、必ず勝つから、良い試合しようね。」
「(コクコク)」
うんうん、素直でいい子だ。

ばいばーいと手を振って別れる。さー行こうか!と振り返ると。

「さち!もーすぐ絡まない!言ってる事は間違って無いけど!心配さすな!」
「ひなちゃん!もーびっくりさせないでよ!」
「「さちさんかっけぇー!」」
「プッ!さすがお母さん・・・!」

す、すみません・・・!でもほら将来を考えると言ってあげた方がいいじゃん!と言い訳しつつ待機場所に向かう。その後、潔子ちゃんと横断幕を付けに行って、試合前練習のお手伝い。
今回は潔子ちゃんがベンチのため、再び二階応援席へ。そこで気付いた。忘れてたー!!

「あっ!さちちゃん!!」

出た大王様!

「お久しぶりです。そしてさようなら!」
「あれ〜どこ行くの?ベンチはもう1人の子だもんネー?応援しないのー?」

凄くニヤニヤして言われた。イラっとした。
でもその通りで行き場が無いので戻る。まぁそんな長い時間じゃないし、他のメンバーさんもいるし!

「わーさちちゃんと観戦出来るなんてラッキー!」
と意気揚々と隣に並んで肩を組んできたので、すかさずはたき落とす。
「あっ岩泉さん!助けて下さい!」
と及川さんの横をすりぬけて岩泉さんの隣へ移動。つまり私・岩泉さん・及川さんの並びだ。

「さちちゃんひどくない?!」
「おいクソ川他校に迷惑かけんじゃねぇ」
「岩ちゃんまでヒドイ!何にもしてないし!」
「ありがとうございます岩泉さん!!」
「いや、及川が悪かったな。」
「えぇ無視?!無視なの?!」
ギャーギャーと騒ぐ。
もーうるさいなぁとコートに視線をもどす。

「ヒッ」

だ!大地くんがめっちゃ見てる!!あの顔は怒ってる!
「ちょっと及川さんうるさいから静かにして下さい!!」
「えぇ〜?!俺のせい〜?!・・・!あーなるほど!」
及川さんもコートへ視線をやったかと思うと再びニヤニヤ笑い出して、先程よりも大きい声で


「そういやさちちゃん、岩泉が好きって言ってたよね〜」



なんて言うから今度はもっと大きい声で岩泉さんが「は?!」と叫ぶ。
いやだからうるさいってああああ大地くんめっちゃ眉間に皺寄せてるぅ!!
「だからうるさいって!ファンなだけですー!」
「ゴメンゴメン!」

も〜本当勘弁してよー!ニヤニヤする及川を睨みながらもようやく静かになったところで試合開始だ。

1回戦は常波との対戦。
田中とノヤの声がここまで聞こえてきて、早速注意されてて思わず笑ってしまう。

確かあっちの主将が大地くんと同中だったよね。
こうして上から見ると、皆の動きが凄く良くわかる。正直、常波との実力差ははっきりしていて、烏野が上回っているのほ明らかだ。
けれど、皆が本気で向かって行っているのがわかる。どんな相手だろうと常に全力で取り組む。烏野の良さはこういう所だ。


この試合で、古兵 烏野の復活。『飛べない烏』
はもう居ないんだという事を他校が認識する。

黒いユニフォームを着た翔陽が飛ぶ。
まさに鳥が飛び立つように。


飛ぶ度に、「なんだあの10番スゲー」とかザワザワするんだ。そうでしょうそうでしょう!あれ弟なんですよ!天使なんですよ!と鼻息荒くしていると岩泉さんに
「アンタ随分嬉しそうだな・・・」と言われたのでニッコニコで弟なんですーと自慢しといた。ら驚かれた。そーいや似てるかもな、と言われて嬉しくなった私は翔陽の可愛さをこれでもかと岩泉さんに語る。岩泉さんが引いてようが関係ない!すると及川さんがまた岩ちゃんズルいと騒ぐので苦労するだろうと岩泉さんを労うと、わかってくれるか!そーなんだよ!と、今度は岩泉さんが及川さんの愚痴を言い出す。何故か妙に打ち解けてしまった。最終的には岩ちゃん呼びになった。日向家コミュ力素晴らしい。しかし会話を聞いてたであろう金田一くんが「手のかかる子供の愚痴を言うママ友のような会話」と言ったので納得!岩ちゃんさんもお母さんぽいよね。いやーわかるわー・・・あっ殴られてる。


そんなこんなで試合は烏野の勝ちで終了。・・・ちゃんと見てたよ!!

「翔ちゃん格好良かったよー!勝てたね!次も試合出来るね!」
「姉ちゃん!うん!」

あぁ勝って喜ぶ翔ちゃんの可愛さプライスレス・・・!

2回戦は1時半から。
それまでにお昼を食べて、軽くアップして試合を待つ時間。
大地くんのところへ行く。

「大地くん、さっき試合前うるさくしてすみませんでした!」
「あー、いや、煩かったのは及川だろ。」
「いや、ちゃんと止めれなかったからさ。本当にごめんね。」

さっき試合終わってからは謝れなかったから気になっていたのだ。

「ん、なら次からは気を付けてな。」
「はい!」
「あ、それとさ・・・」
「どうかした?」
首の裏を手でかき、目をそらせ、少し気まずそうな顔をしている。
何だろう?

「さちって、ああいう、青城の4番みたいな奴がタイプなのか?」
「え。」
「さっき言ってたろ。好きだとか。つーか好きなの?」
「えっ好きじゃないよ!」
「じゃあ好きなタイプとか?」

好きなタイプ?うーん。格好良いとは思うけど。青城でいうところのお母さんポジションだよね。うーん・・・そーいや大地くんと似たような感じ?とするとタイプなのか?でも大地くんってお父さんぽいよね。うーん。っていうかなんでこんな事を聞いてくるんだろう。


「・・・なんで?」
「え?」
「なんでそんな事聞くの?」


だってどうでもよくないか?
そう思って聞くと、はぁ〜〜っと溜息をつきながらがりがり頭をかくと
「お前だからだろ」
真っ直ぐ目を見てそう言われた。

「へ・・・?」

「お前の、さちの事だから気になるんだよ!で、どーなのタイプなんですか?!」
「いっ?!ちっ違うと思います!!」
「よし!」
「うわぁっ」

そう言ってがしがしと私の頭をぐしゃぐしゃにして去って行った。












・・・何だあれは。
い、今から試合なんですけど!!何なの!

「さち、顔赤いけどどうしたの?」
「なんっ何でもないよ潔子ちゃん!!行こう!」
「?うん。」



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