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「ひげちょこ発見!」
「ぅおわあああ!!」

本日のドリンクなど準備を終えて、体育館へ向かう途中、ヒゲちょこを見つけたので足音立てず近付き、声をかけた。ら、この反応である。・・・ノヤもだけど皆の私への反応ひどくないっすか。

「こんなとこで何してるの?」
「エッ、あ、いやっ、その、」
「キノコ収穫終わったみたいだねぇ。」
「え?!き、きのこ・・・?」
「ん、これ部室の鍵。着替えたら返しに来てね。」
「ひなちゃ、えっあっちょっ!・・・きのこって何・・・?!」
まだ制服姿だったため、鍵を渡して返事もせず立ち去る。

良かった良かった。



体育館に入ると、丁度先生達もいて、コーチの件が伝えられる。
武田先生と目があったので、無言でサムズアップすると嬉しそうに返してくれた。
わーい烏養コーチだー!・・・監督とそっくり過ぎる・・・!
そして、すぐにガヤガヤと聴こえてきて、烏野町内会チームの皆さんが入ってきた。


挨拶がてらビブスを配っていく。
「ここにジャグ置いておきますので、皆さん自由に飲んで下さいね。」
「おぉ・・・女子マネ・・・!羨ましい!俺らんとき居なかったしなぁ。」
「あ、みたいですねぇ、私が入ったのも随分久しぶりだったみたいで。あっあとコップは使い終わったらそこに入れといて下さい、後一応タオルも置いておきますね」
「おー、サンキューな!」

うわーたっつぁんサン!
たっつぁんサン格好いいなー。背、高いなー。あの伊達工の3年に似た人いるよね!
あっ嶋田さん!!!どうしても行きたい嶋田マートの嶋田さんっ!!!

「あ、あのっ嶋田さん!」
「うん?どうしたの?」
「し、嶋田マートがとっても安くて良いお店だと聞いたので伺ってみたいのですが、場所、教えて貰えませんか?!」
「えぇっマジで?!じょ、女子高生にそんな事言われる日が来るとは・・・!!」
「ハァ?!マジかよ!な、ウチは?!滝の上電器店っつーんだけど!」
「お前ら大人しくしろよー。で、うちクリーニング店なんだけど。」
「あっズリぃ先輩達!ね、今度大学生のお兄さん達と合コンしない?!あのあっちの子達も入れてさ!」

いや必死過ぎて怖いわ!

私はあの輪切りにされた豚が笑ってるという最高にキュートな袋(本物)が欲しいだけなんですぅ!嶋田マート情報はよ!と思って適当に流してると、




「あっ!!アサヒさんだっ!!」



ひげちょこの登場である。
おう、いやその前にだな。
・・・翔陽はなぜ壁に引っ付いている。




そのまま試合に参加する事となった東峰。これ幸いと町内会チームの方々と離れてビブスを渡す。

「鍵はー?」
「あっ、うん、ありがと・・」

相変わらずの猫背だ。
「これ旭くんのぶ・・・ん!」
と、渾身の力を込めて
ビブスごと背中を叩いておく

バヂッ
「い"だっ!!!」

うん、いい音!
げんきげんき!

そして、そのまま試合が始まる。



潔子ちゃんと得点係をしながら試合を見る。

「・・・ねー潔子ちゃん」
「なに?」
「コートに、皆、居るね。」
「!・・・うん。」
「前まで当たり前って思ってたけど・・・当たり前じゃないんだね。」
「・・・・・・うん」

たった2人いなかっただけなのに、こんなにも光景が違ったんだと改めて気付いた。
コートの外には武田先生と烏養コーチ。
やっぱりこのふたりがいると、『烏野高校排球部』感が増すなぁ。

視界の端で烏養コーチのポカン顔と武田先生のウッキウキ顔を見ながら再びボールの行方を追う。

「っそこのロン毛兄ちゃんラスト頼む!」

東峰にトスが上がる。
けれど、再びブロックに阻まれた。

その瞬間、キュ、というシューズの音がしたと思ったら、トン、とボールがふありと上がったのだ。

紙面と現実では全く違うんだ。だって、私は見ていた。一部しか描かれなかったあの試合の全貌を。部活に参加出来なかった期間、彼の努力はこの一球に全てを費やしていたんだとわかる、レシーブだ。


胸が、苦しい。


「ーーだからもう一回」
「トスを呼んでくれ!!エース!!!」


こんなにも心の籠った声を聞いた事が無い。

ぼやけていく視界をクリアにしようと、何度も瞬きをする。


「菅原さん!もう一回!!」
「決まるまで!!」
影山の声が聞こえる。




ねぇ、次はあんたの番だよ。





そう思った時、東峰の雰囲気が、変わった。顔が、変わった。




「スガーーー!!!」

「もう一本!!!」










あぁ、もう。
本当に、良かった・・・。














「よ"がっだー!!」

だめだー!恥ずかしいけどそんな事考えられないくらい涙腺崩壊したー!

だってだって!大丈夫って信じてた!信じてたけど不安だったんだもん!!!ぁぁぁああ良かったよーー!!!





「ぶはっ!!さちさん何号泣してんスか!!」
「田中に言われたくないし!!」


涙流しながら怒って、笑われて。・・・幸せで。



「東峰のせいだ!ばーかばーか!全然飛べてないし!!!」
「 そーっスよ旭さん!全然ジャンプ出来てないんじゃないんすか!一ヶ月もサボるからっっ!!」
「うん・・・スミマセン・・・」
「ばーかばーか!」
「ひなちゃん最早只の悪口」
「ププッ罵倒ボキャブラリー少な。」
「っ!ツッキー!」
「お前らウルサイ!スミマセン、続きお願いします!」
「ぎゃっ大地くんに怒られた!東峰のせいで!」
「えっ俺?!」
「うん、いい加減にしようなお前ら。(ニコツ)」
「「・・・スミマセン・・・」」













「なースガ、ひなちゃんがキノコの収穫がどうとか言ってたんだけど意味わかる?!」
「ブファッ!」
「えー俺も知らねぇ!何すかそれ!」




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