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そのまま試合は進んで、烏養コーチが翔陽のことちんちくりんって言ったから後でどうしてやろうと思ったりしてるうちに第2セット。


いやぁ自分にびっくりだわ。私あんな大声でるんだ?!ってぐらいの音量で叫んでた。


「翔陽!!!!!」
「?!日向!!」


そのまま翔陽に駆け寄る。
「っ!怪我無い?!痛いとこない?!」
「びっ・・・くり、したぁあ!」

ギリギリ正面衝突は避けられた。が、バッとしゃがんだので結局おデコをボールが掠ったようだ。少し赤くなっている。

「うわあああ!ゴメンなぁあ!!」
「大丈夫かー?!」

座り込んだままの翔陽に皆がわらわら集まってくる。取り敢えず掠ってしまったところに絆創膏をペタリと貼っておく。
「もー・・・バカ翔陽!なにぼーっとして、っ!!」

背後からものっ凄い悪寒がしてすかさず翔陽から離れる。スマン。

「・・・何ボケェーっとしてた・・・試合中に・・・」




そこからはじまる、1点の話。
本当、影山くんは良く見てくれているなぁ。
出会えて良かった。出会ってくれて、本当にありがとう。
ねえ翔陽。中学の時、ずっと1人だったのは、きっとこのチームに、このメンバーに出逢う為だったんだよ。


「それでもお前は!今の自分の役割が、カッコ悪いと思うのか!!」

「思わない!!!」


「よし!!」



いやー影山くんは結構翔陽の事好きっていうか、認めてるよね。自分の力を生かせる相手というか、ほんとに相棒って感じで。唯一無二の存在というか。・・・良かったねぇ翔ちゃん。


そうして試合が終わった。
町内会チームの皆さんをお見送りして、皆で円陣を組んで片付けて。



「烏養コーチ!」
「あー、マネージャーの。」
「あのちんちくりんの姉で3年日向さちです。世界一可愛い弟ですので、宜しくお願いしますね?」
「・・・オ、オウ・・・」
「これ、今までのスコアと、練習メニューと、選手名簿です!」
「あ?名簿?」
「特徴とか癖とか一通り纏めてみました。まぁ実際に見て頂ければ問題無いと思うんですけど」
「へぇ、いや俺も初めて会う奴らばっかだからよ、目ぇ通しとくわ。ありがとよ。」
「いえいえ。烏養監督、お元気ですか?」
「あ?ジジイか。まだ入院してっけど、元気っちゃ元気だぜ。・・・そーか3年は面識あるんだったな。」
「はい!今度、お見舞い連れて行って下さいね!今後とも、宜しくお願いします!」
「おー、ありがとな!」



片付けも終わり、着替えて皆で帰る。
潔子ちゃんは家が近いので、すぐに別れ道となった。手を振って、再び皆が歩出す。

ふと前を見ると、先頭のほうに翔陽や影山、田中、ノヤ。ちょっとあけて縁下、成田、木下がいて、少し後ろには山口くんとツッキー、その後ろは東峰、スガちゃん、大地くん。


あぁ、今日は何度も実感してしまう。
やっと皆が揃ったのだ。嬉しいなぁ、これからは、この光景が当たり前になるんだ。自分の口元がゆるゆると緩んでいくのがわかる。

と、突然視界いっぱいに大地くんの顔が!

「おーい。立って寝るなよー。」
「ぅぬあっ!!」
「!あっ!ぶね!」

あんまりにも驚いて足を滑らしてしまった、ら、
咄嗟に腕を掴まれてコケるのは回避できたようだ。

「び、びっくりしたー!!びっくりした!!」
「悪い、大丈夫か?!」
「う、うん、大丈夫」



どうやら少し立ち止まってしまっていたらしく、少し集団と離れていたので、そのまま大地くんと並んで歩き出す。

「・・・ふはっ」
「!何?」
「さちサン、口元緩んでますよ。」

ニヤッと悪戯っぽく笑う。
み、見られていた・・・!

「!う、うるさいですよ大地さん!あなたこそ試合終わってからずーーっと緩んでますよ!」
「えっ!」
「えっ気付いてなかったの?!円陣組むときもずーっと緩んでたんですけど?!」

と言うとパッと手で口元を覆い、マジか、と小さい声で呟く。ちょっと照れてる・・・可愛いし。

「へへへっでもさ、やっと皆揃ったね!本当嬉しい!」
「そうだな。ま、課題は山積みだけどな。」
「うん、でも良かった。本当に良かったねぇ。頑張ってね、主将!」
「おう!」

皆の背中を見ながら最後尾を歩く。
1番先頭の賑やかな声がここまで聞こえてきて・・・夜ってわかってないわー絶対。

「あー、ところでさ・・・」
「ん?」
見上げてみると、チラリとこちらを見下ろして、そのまま視線を前に戻して、小さい声で言う

「あのー、町内会チームの人に誘われてたろ。」
「へ?」

誘われた・・・?え、誰に何を?!
どちらかというと嶋田マートに行きたいのは私だから私が誘った?ようなもんですけど。

「嶋田マートに行きたいのは私だけど?」
「いやそっちじゃ無えよ!ご、合コン!」
「えぇっ?!」

誘われた?!誰に?!いやそんな見られても!
一体い・・・・・・あー・・・あー!

「あははは聞こえてたんだ!今思い出したよ!」
「い、行くとか言って無いよな?」
「言ってない言ってない!忘れてた!」
「そ、っか、そうだよな。」

見上げながら言うと、ほっとしたような、嬉しそうな笑みを見せる。

えぇぇ・・・なんでそんな反応するんだ・・・?

「えー、そんな事気にしてたの?」
「いや気にするだろ」
「え、なんで・・・あ、そうか、マネとはいえそうゆう行動して教頭とかに目つけられたら迷惑かかるもんね。」
「は?いやそーじゃなくてだな・・・」
「違うの?」
「違うよ、お前だからだろ。」


うん?


「お前に、・・・さちに行ってほしく無かったって言ってんの。」



え。


なんで。何でそんな事言うんだらう。
そんな真剣な顔で。

「俺はーー「姉ちゃーん!!」


ビクりとお互い肩がはね、ばっと前を見る
「影山がいじめるー!!」「ハァァァ?!日向ボゲェ!」なんて騒ぎ出したから
「えっ!こ、こらあんまり大きい声出さないの!」

そのまま走って前方にかけていく。


た、助かった・・・!!
何を言おうとしたんだろう。


なんで、あんな・・・真剣で、熱い、目で。
バレーに対する目とも少し違う気がして。





いや、でも、気のせいだ。うん、気のせいだよ。
そのまま影山かかってこい!なんて言いながら先頭集団に混じって帰路についた。











後ろでスガが、旭のへなちょこが大地にうつった!なんて言ってたのなんて知らないままに。










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