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修学旅行1日目は移動と奈良。
法隆寺、東大寺へ行き鹿と戯れる。
鹿せんべいって凄いよね!とにかく鹿が寄ってくるのだ。奈良の鹿ってかしこいのだ。「鹿せんべい、欲しいねんけど」「くれる?くれるやんな?」と、お辞儀してくる。だがしかし!本能のままグイグイ来るのだ。集団で。
前世でも行った事があるので知ってはいたものの、自分の身長が違う事をすっかり忘れていた。


「ぎゃあああ」
四方八方囲まれ動けない!


「ふはっ日向こっち」
と澤村が助けてくれて
「あーびっくりした!ありがとう!」
「おう・・・ぶふっ・・・」
「ちょっと笑いすぎ!」
「いやー日向と鹿間違って鹿を助けそうになった」
「そんな小っちゃくないし!」
「ははっ悪い」

普段とは違う景色。修学旅行マジックなのか
本当に普通に目を合わせて話せて、笑い合う事が出来た。
久し振りに見る、柔らかい笑み。
それが嬉しくて。

自己満足に過ぎないけど、この修学旅行中、あの日の事をやっぱり謝りたいと思っていたのでほっとした。




それは数日前に遡る。
部活の休憩中、私は1人部室掃除をしていたところにスガちゃんがやってきた。

「お疲れー」
「お疲れ!どうかした?」
「タオル取りにね。」
なんて話をして、そのまま掃除を続行していると、ふいに「ねーひなちゃんさ、」と話しかけられる。
バケツで雑巾を絞りながら「なにー?」と返事をすると

「大地と何かあったでしょ」

と爆弾が落ちて来た。


驚いて思わず雑巾を落としてしまいボチャンと音がなる。

「な、何もないよー・・・」
「いやその反応で?!」
「で、デスヨネー・・・」

と、あっさりバレてしまった。

そのままスガちゃんが優しく何があったか聞いてくるので、
私が配慮の足りない事を言ってしまって、澤村を怒らせてしまった事。嫌われたかもしれない事。
こんな自分はここに必要無いんじゃないかと思って謝る事も出来ない事をぼそぼそと話す。

「・・・」
「な、何よぅ」
「はー・・・ひなちゃんってバカだよね」
「う」
「バカってかマイナス思考過ぎ」
「ううう」

「だって「だってもさっても無い!」

「大地がそんな事でひなちゃんの事を嫌いになるわけ無いじゃん!!そんな心狭い奴じゃない!」
「必要無いとか!!思うわけないじゃん!なんでわかんないの!もっと大地のこと信用しなさい!」
「ばかばか!もー本当ばか!
そんな事でうじうじしてんなら、配慮の無い事を言ってごめんって謝って、大地がどう思ってんのかちゃんと向き合え!」



あまりにその通り過ぎて
ぐうの音も出ない。

そんな事で誰かを嫌いになる人じゃないことはよくわかってる。


そうだよ、後ろを向いてぐじぐじして、この先やってける?
何より・・・このままでいいの?
自己満足でもいいじゃないか。前へ進め。


「うん、うん・・・そうだよね。ちゃんと向き合う。」

そして、そのまま修学旅行中に何とかする事!を約束させられて今に至る。




とはいうものの、どこでどうやって言えばいいのだ・・・と考えているうちに1日目は過ぎて行き、2日目となった。

今日は京都。午前中は体験学習。いくつか選べる中、私達のグループは京焼体験にした。
出来上がったら後日送ってくれるのだ。東峰のグループも同じだったようだが、完全に引率の先生と思われていてガラスのハートにヒビが入ってるのを目撃。


その後の班行動では、それぞれが行きたい場所をピックアップして場所を決める。
どうしても行きたい場所があった。
私の念願の白峯神宮。

「ーー白峯神宮って何があんの?」
「スポーツの、特に球技の神様!」

「うおおおおかっけえ!このお守り!」
「へえ、黒地が烏野っぽいな」
「さちちゃんこれ!サッカーボール可愛い」
「えへーそうでしょそうでしょ!絶対欲しかったんだ!」

好評そうで何より!
普通サイズのお守りと、ボールに紐が付いている、ブレスレットのようなお守りを買う。

皆が買い終わるのを、少し離れた場所で待っている。
買ったばかりのお守りを早速カバンに付けようとガサガサしていると
「もう買い終わったのか?」
と澤村が近付いてきた

「うん」
「良く知ってたな、こんな神社があるなんて知らなかったよ」
「学業の神様とかいるから、スポーツもあるかなーと思って探してみた」
「へえ。・・・で、早速付けてるわけか」
「うん。・・・」
「・・・貸して」

もだもだしてると、するりとお守りを持ち上げられる。付けてくれるのかな、なんて思っていたら、そのまま澤村のポケットの中に。
「?」
そこからガサリと袋を取り出す。中身は私が買ったものと同じお守り。
同じやつ買ったんだと思っていると、澤村が買った方を私の鞄に付けてくれた。

・・・ん?
なんで?
きょとんとして澤村の顔を見上げると

ほんの少し目を泳がせて、なんだか、照れたように
「・・・交換」

なんて言う。

「・・・なんで?」

「・・・あー・・・なんとなく」

全く同じものだし、良いけど。
なんでだ。

「?なら澤村もカバンに付けたらいーのに。」
「え。」
「そしたらお揃いだ、し・・・」
「・・・」



『お揃い』
『交換』



・・・じ、自滅してしまった。
何これ恥ずかし過ぎる・・・!!

「ば、バレー部皆で!ね!お揃いにしよう!うん!」
「おっ、おう・・・」
潔子ちゃんと東峰の分も買ってくる!と言い逃げた。













「・・・・・・」
「スガ、ニヤニヤすんのヤメロ」
「へぇ〜ほぉ〜・・・。自覚したって事でOK?」
「チッ」
「あははは!!頑張れ!」
「・・・・・・おう」






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