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色々あった夏休みも明け9月になった。
すっかり忘れていたけれど、今月は修学旅行がある。行き先は奈良・京都。そして大阪USJだ。
奈良と京都の午前中は班行動。その後の京都散策とUSJは完全自由行動らしい。
修学旅行となると、高校生活1番のイベントでもあり、付きものとなるのが色恋沙汰でもある。
班に関しては担任曰く自由にグループを作って良いとのこと。


澤村は1年の時と比べ、身長も伸び、ガタイも良くなり・・・元々精巧な顔付きな事もありそこそこモテる。菅原は言わずもがな。
人気のある2人と一緒に行動したい女子はそこそこ居るわけだ。


そんな私はゆきちゃんと一緒に組む事を決めてはいるものの

「ね、日向さん、俺らと一緒に組まない?」
「あー・・・」


ゆきちゃんはモテる。
非常にモテる。
所謂高嶺の花だ。
ので、こうしてチャンスを掴もうと男子からお誘いが多い。彼女本人に話しかけ辛いので私に言いにくるのだ。
誘ってきた子は前々からゆきちゃんにアピールしている子だが、本人はそんなに悪い人ではない。しかしゆきちゃん自身はしつこい人は好きでは無いのだ。

何て断ろうかと思案していると

「ひなちゃんらは俺らと同じ班になるって約束してるから駄目だべー。」

驚いて顔をあげるとスガちゃんがそう言ってくれて、助けてくれたんだとわかる。

「あ、そうなんだ、ごめんね!」
と直ぐに退散してくれた。

「スガちゃんありがと。」
へろりと笑ってそう言う。

「いーえ。でも本当に一緒に組まね?俺と大地プラスひなちゃん芹沢で」
「・・・さちが良いなら、私は良いよ。」
「ゆきちゃん・・・えと、でも、本当にいいの・・・?」
「いいに決まってんだろー。なぁ大地!」

呼ばれて振り向いた澤村とばちっと目が合う。




正面から目が合うのは、随分と久しぶりな気がした。





あの日の翌日、私は普段通りに接しようと決めた。というかそれしか出来ない。
主将とマネージャー、クラスメイト。
立場上話さない事なんか出来ないから表面上は何事も無かったように映るように。
まだ1年が戻って来ていないのに、ここで私達がギクシャクしてしまうと、チームに影響を与える事になる。それは絶対に避けなければならない事。澤村にしてもその気持ちは同じだろうと思った。
避けられるかもしれない。でも、こういう時はどちらかが普通にしてれば相手も普通にせざるを得ないものだろう。

だけど、朝、目が合って、「おはよう」と言った時。
フイと目を逸らされ、「おはよう」と返された。



痛かった。心臓が、ぎゅうっと締め付けられた。



それでも私の居場所は、ここしか無い。
側に居たい。




でもね、やっぱり、怖い。
ここに居たい。それ以上に、澤村に・・・



嫌われたく無いよ。










そんな私に、澤村は

「勿論いいに決まってる」
と笑顔で言うのだ。


それに安堵すると共に、あぁ、気を使ってくれたんだろうと思うととても申し訳なくて




それでも浅ましい私は嬉しくて
「ありがとう、宜しくね」
そう答えを返した。




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