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修学旅行2日目の夜、旅館で美味しいご飯を食べ、温泉に入った後、暑かったので少し涼もうと旅館の裏庭のベンチでぼーっとする。



・・・昼のアレは一体何だったんだろう。
何で交換・・・
わ、わからん。わからんけど!う、嬉しいかも・・・っていやいや、そんな事よりも謝らなきゃいけないのに全然チャンスが無いではないか!
は〜・・・どうしよ・・・

「ーー日向?そんなとこで何やってんだ?」
「うえっ?」

思わず立ち上がって振り向くと、そこには我らがバレー部3名

何という漫画的展開・・・!!ベタすぎる!


「あ、あ〜そうだ俺先生に話があること忘れてた!旭っついてきて!大地は同じ部屋のやつに言っといてねー!」
「え、俺も?」
「おう、わかった。」

っ!ちょスガちゃん!!

どうしようって、ど、どうしようも無いんですけどね!スガちゃんの目が今だろって言ってる!

少々パニックをおこしているうちにスガと東峰の姿が見えなくなり澤村と2人っきりになる。


「何だアイツら・・・。
で、日向はどうかしたのか?」
「や、暑くてちょっと涼んでただけだよ」
「あぁ、確かにここ、涼しいよな。空気も綺麗だし。でもあんま長くいると風邪引くぞ」
「あーいや、もう戻ろうかと」
「そうか・・・。なら、俺も戻ろうかな。」
「・・・」
踵を返し澤村が私に背を向ける

あああああ帰ってどうする!
はっと顔を上げた時に目に飛び込んできた彼の背中が、あの日の背中と被る。

ダメだ。このままじゃだめだ。


ギュッと目を瞑り、息を吸う。

「さっ澤村!」
「ん?」


「この間!その、ごめんなさい!!」
ばっと頭を下げる
「えっ?!」
「1年が練習休んだ時のこと!!」
「!」
「わ、私、皆がバレー好きだから戻ってくるって勝手に思って、でも澤村は悩んでたのに」


ああ言いたい事がまとまらない


「悩んでたの知ってたのに、あんな能天気な、
あの、全然配慮してなくて」
「いや、あれは俺が」
「しかも結局何にも行動しないままで、ごめん、本当にごめんなさい」
「日向、」
「あと謝るのも遅くなって、こんな時間たってからで」
「・・・うん、わかったから、」
「わ、私臆病で!ごめん、本当に、あの、澤村が私を許せないのもわかってるし」
「・・・いや、」
「でもきら、嫌われたかと思うと怖くて、こわ、くて、さ、避けたり、とか最低で」
「さ、澤村に、ひっ必要無いって言われたら、って怖くて」
「ほんと、本当にごめん、ごめんね、ごめ」




その時ぶわりと、何か暖かいものに包まれた。
驚いて目を瞠るも視界が歪んでよく見えない。
聴こえてきたのは自分のものではない、トクリと波打つ心臓の、音?




「〜〜あぁもう」



今度は頭上から声が聴こえて、

「え、」





抱き締められている?




「泣くな。」





そう言われて、いつのまにかボロボロと涙が出てきていて、どんどん澤村の服に染み込んでいっている事に気付く。

「ご、ごめ、な、泣くとか、卑怯だ、」

「あーもー、本当、俺、情け無い・・・」

「なん、なんで澤村は悪くなくて、私が、っごめんね、」

暖かい大きな手が頭を撫でている。

「違う、日向は悪く無いよ。
・・・俺の方こそ、お前に八つ当たりしてごめん。」

穏やかな、低い声。

「俺も、ずっと謝りたかった。」
「お前はアイツらを信じてた。だからそう言っただけだろ。
あの時は俺も全然余裕が無くて、お前に八つ当たりして最低だった。怖がらせたよな」


優しい声。



「うぅ」
「俺もお前にああ言われて、もっとアイツらを信じてやろうって思ったし。自分に余裕が無くなって、周りがちゃんと見えてない事にも気付けた。」
「だから、感謝してる。」

「う、うえええ」

「な、だからお互い様って事で。」
「なんでそんな優しいのばかじゃないのぉぉ」

クスリと笑うと
頭の上にとん、と顎をのせられた

「それに、こんな事でお前を嫌いになったりしねえよ。そんな小さい奴と思われてんならちょっとショックだけどな」

「だって、」

「お前は俺にとって・・・烏野のバレー部にとって必要な存在だよ。」


その、言葉が
どれ程嬉しかったか。


今度こそ涙腺崩壊した私はありがとうとごめんねを繰り返して、ひとしきり泣いてしまった。










「・・・落ち着いたか」
「あい・・・すみません・・・」
「どういたしまして」

腕の力が緩んで少し離れる。温もりが消えた身体に、さっきより少し冷たく感じる風が吹いた。

・・・冷静に考えるとだき、抱きしめられていたんですよね、澤村に。か、顔が上げれない・・・と、視線をウロウロさせると・・・目に入った水溜り
「ああああ服、服、ごめんね鼻水も?!ああああ」
「ははっ」
「どうしよお詫び、お詫びする!」
「いいって、気にすんな」
「気にするよ!うわああああどうしようごめんねごめんね」
「おいまた泣くなよ」
「も、もう泣かないぃ」
「ん、お前は笑ってる方がいい」
「ひぃ!でもお詫びはする!何か、」
「(ひぃ?)あー・・・じゃあ、さ、お願いが」
「っ!何?!何でも言って!!」





「えっと、あー・・・名前で呼んで欲しい、なぁと・・・」




「え、?」

「俺も名前で呼びたい」










・・・なぜ。




「じゃあ、その、だ、だい・・・」

「・・・」

いやそんなじっと見て待たないで下さい!!




「だ、大地くん!」

「ふはっ顔、真っ赤。君無しは?」



「か、勘弁してください・・・」

「まぁいいか。
ありがとな。・・・さち」


「!!!」

「さ、いい加減戻るか。」

「・・・うん。」







その日の夜は、何だかふわふわしてしまって、
中々眠る事が出来なかった。










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