昼過ぎ、1人の男が執務室で書類を片付けていた。どんだけ書いても判をおしても積まれたままの書類にはー、とため息をついた。


くそ、沢田のやつ自分が休暇とるために僕にこんなに書類まわしやがって。あ、沢田と言っても綱吉のほうだ。妹のほうは最近、というかここに来てからずいぶんと頑張っていたから休みをやった。なのに沢田といったら「みあが休み!?じゃあ俺も今日は休みね」「ちょ、待ちな」「んじゃ、そうゆうことで」と電話を掛けてきて話の途中でブツと切られた。明日、絶対に咬み殺してやる。時計をみれば午後3時。いつもなら沢田が茶と茶菓子を持って「休憩にしましょうか」と言ってくる。けど今日はいない。いつも飲みたくなったらでてきたのに。やっぱり沢田に休みなんかやらなければよかったとか思った僕。


「哲」

「はい!」

「茶淹れてきて」

「わかりました」


哲に淹れさせた茶を口に含む。……なんか違う。沢田の淹れた茶と何かが違う。何かと言われたらわからないけど。あ、茶菓子がない気のきかないやつめ。


「哲、茶菓子がないよ」

「茶菓子、ですか?」

「うん」





今まで恭さんは茶菓子なんて口にしていただろうか?いや、していない。少なくとも俺が茶を淹れていたときは口にされなかった以前に俺がださなかった。今はみあさんがその役目をしているため、恭さんの茶の時間にでるものなんて知る由もない。


「恭さん、お持ち致しました」

「ありがとう」


そう言った恭さんは自らお盆を持ってソファへ向かった。いつもなら仕事をしながら茶を飲んでいたのに。たった1ヶ月で俺が知らない恭さんが増えた気がする。その俺の知らない恭さんを生みだしたのはみあさんだろう。いくら学生の時に共に仕事をしていたといえど数年のブランクは大きいだろう。だがみあさんはそれをものともせず恭さんに話し掛け、仕事中に今までありもしなかった休憩時間を作った。さすが沢田さんの妹さんというのか、みあさんの人柄なのか。それとも………





はー、2度目のため息がでた。このため息はなんなんだろうか。チラリとみた向かい側のソファはがらんと人気なんてあるはずもなくて、なんだか変な感じがした。って、それが僕の普通だったじゃないか、いや、僕がこうしてソファに座って茶と茶菓子を飲み食いしてることが可笑しいんだ。僕はとうしたんだろうか。たった1ヶ月あまりで沢田とこうする事が当たり前になってしまうなんて。


「哲」

「はい」

「これ、片付けておいて」

「ですが、まだ…」

「いいんだ」


我に返った僕はお盆を下げさせた。でも、明日のこの時間は沢田がいて、きっと茶と茶菓子を持って「休憩にしましょうか」と言うんだろう。


いつのまに群れてたんだ


20111207




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