きみのうしろ



アルヴィンにはずっと不思議に思っていることがあった。
ジュードと一緒に二人で出かける時何故か彼は自分の隣を歩かずに一歩後ろを歩く。
あえてその理由を聞いたことはないけれど、気にはなっていた。
そんなことを考えながら街中を一緒に歩いている今日も、相変わらずジュードは一歩後ろに居てアルヴィンに着いてくる。
その顔は嬉しそうに、またどこか恥ずかしそうに頬を染めながら着いてくるから自分と二人でいるのが嫌だというわけではないのだろう。
むしろ自分は彼に好かれているという自信すらあった。
「んー…なんでだ?」
「え?アルヴィン何か言った?」
自分でも無意識のうちに言葉に出てしまっていたみたいでジュードがこっちを見上げてきた。
「いや、なんでもな…くはねぇな。
 まぁ気になってたし丁度いいか。
 なぁジュード、なんでお前いつも俺の隣じゃなくて後ろを歩くわけ?」
「えっ…そ、それは…その…」
アルヴィンが歩きながら尋ねるとジュードは一瞬驚いて、そして次にまさかそんなことを聞かれるとは思わなかったという顔をして口ごもった。
道の真ん中で俯いて立ち止まってしまったジュードを怪訝そうな顔をして見つめる。
「何か理由があるんだろ?
 俺の横を歩きたくない理由。
 気になってたんだよね、だってほら俺たち一応恋人同士なんだしさ、普通隣を歩くだろ…ってえ、ジュード君?」
どんどんジュードの頭が下がっていったと思ったら今度は耳まで真っ赤に染まって行くのが見えた。
「ア、アルヴィンごめん、違うんだ…歩きたくないとかそんな理由じゃなくて…」
集中して聞いていないと街のざわめきに消されてしまいそうな声でジュードが話し出す。
「その、後ろを歩いてるとアルヴィンのことを見ていられるから…」
「は?」
更に小さくなったジュードの声にアルヴィンはビックリして目が点になった気がした。
聞き間違いかと思ったのだ。
だってジュードがそんなことを考えているなんて思ってもいなかったから。
「だ、だから!横を歩いてるとアルヴィンが見えないから後ろを歩きたかったんだよ!」
ジュードの張り上げた声に周りを歩いてた人がぎょっとした顔でこっちを見たのがわかったが、正直今はそれどころじゃなかった。
つまりあれだ、ジュードは自分のことをずっと見ていたいと言ったのだ。
アルヴィンは柄にもなく自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
「くそっ、そんな殺し文句どこで覚えてきたんだよこの優等生は」
手の甲で口元を隠すようにしてアルヴィンは呟くと、反対の手で目の前にいるジュードの手をとって裏道に向かって歩き出した。
「ちょ、待ってアルヴィン!どこに行くの!?」
そんな言葉が聞こえてきた気がしたが無視だ、無視。
人ごみから抜け出して薄暗くて野良猫くらいしかいない裏道に入ったとたんアルヴィンは歩くのをやめた。
「うわっ」
突然立ち止まったためそんな声と共に背中辺りにジュードがぶつかる感覚がした。
それを気にせずに振り向いたアルヴィンは壁にジュードを押し付けると彼が何かを言い出す前にその口を自分の口で、塞いだ。
「…んっ、あ、ちょ…まってアルヴィ…」
ジュードが何か言おうとするたびに口付けを深くした。
壁についていた手をジュードの背中に回して抱きしめる。
ジュードの口内は甘くて、もうアルヴィンの舌がジュードの口内で触れていない場所なんかないとでもいうように舐めとっていく。
やっと開放された頃にはジュードは息も絶え絶えになっていて、アルヴィンが支えていなかったら地面に崩れ落ちてしまいそうだ。
「はぁ、はぁ…アルヴィン…どうして」
「お前がそんな可愛いこと言うから悪い。
 本当はこのままこの先にだって進みたいのを俺は我慢してるんだぜ?」
口では軽く冗談のように言っているが目がこれは冗談ではないと語っている。
そんなアルヴィンの様子にジュードは何も言えなくなってしまう。
一粒の汗が額から流れ落ちて行くのがわかった。
心臓がドキドキ言い過ぎて、今にももう破裂しそうだった。
「……ま、今は何もやらないけどな。」
「え?」
そう言うと抱きしめてた腕からジュードを開放して今度は彼の左手を自分の右手で繋いだ。
「何々、ジュード君はこんなところで俺にあんなことやそんなことをして欲しかったの?」
「…なっ!そんなわけないでしょ!」
いつものアルヴィンの様子に戻ってようやくジュードもホッと一息ついたのもつかの間、
「まぁそれは宿屋に帰ったらのお楽しみってことで」
そんなアルヴィンの楽しそうな言葉に本日何度目かの顔を真っ赤にしたジュードがいた。
「あ、それよりアルヴィン、手!手を離してっ!」
そのまま表道に向かって歩き出したアルヴィンに焦ったようにジュードが言うが、アルヴィンは一向に離してくれる気配はない。
それどころかぎゅっと指と指を絡ませて更に繋がりを深くされた。
「これで隣歩いてても寂しくないだろ?」
「なっ、だ、誰も寂しいだなんて言ってないじゃない」
「じゃあ俺がジュード君が後ろばっかにいて隣にいてくれないと姿が見えなくて寂しいからってことで」
そんなことを平気で言えるアルヴィンはずるい。
「もう、アルヴィンはほんとずるいよ。
 そんなこと言われたら…僕だってずっと手を繋いでいたくなるじゃない。」
二人はお互いを見つめあうとくすっと笑って宿屋に向かって歩き出した。

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