告白



今日も夕方ごろ街に着いて宿屋に部屋を借りに向かった。
最近はモンスターも強くなってきたこともあって若干皆疲労の色が浮かんでいる。
それは僕も一緒だったけど、宿屋への足取りは重たかった。
だって最近僕はアルヴィンと同じ部屋になるだけでやたらと緊張してしまう。
それにこの胸のドキドキが聞こえてしまうんじゃないかと不安でたまらない。
僕だってもう子供じゃない、この感情が何ていうのかくらい知っている。
…僕はアルヴィンのことが好きなんだ。
だから僕はいつだって二人きりになったら本を読むことにしていた。
その間だけは本に熱中してアルヴィンのことを忘れていられるような気がしているから。

「優等生君は今日もまた読書かよ」

そんなアルヴィンの言葉にさえも本から顔を上げることは出来なかった。
だってアルヴィンの声を聞いただけで僕の心臓は破裂するんじゃないかってくらい脆いんだ。

「なぁ、たまには外に出かけよーぜ、ジュード君」

そう言ってくれるのは本当に本当に嬉しいんだけど、そんなことしたら嬉しくて心臓が止まってしまうかもしれない。
だからいつだって答えは決まってる。

「ごめん、今ちょうどいいところなんだ」

そう言うとアルヴィンから何時も通りの返事が返ってくる。
きっと今日もそうだろう。
『あっそ、じゃあ俺は出かけてくるから』
僕はその言葉がアルヴィンの口から発せられるのを待った。
だけど今日に限っていつまで待ってもアルヴィンから定例になってる返事が帰ってこない。
怪訝に思った僕はちらっと本から目を離してアルヴィンのほうを向いた。
そしたらそれはアルヴィンが僕の持ってる本を奪い取るのとほぼ同時だったみたいで、気がついたら僕の読んでいた本は無造作にベッドの上にほおられていた。

「何するんだよ、アルヴィン!本を返して」

ちょっとムッときてそう言った僕にアルヴィンは少し難しい顔をして

「おまえがいつもいつも本にばっか熱中してるのが悪い」

と言い切った。

「…え?」

それはどういう意味なんだろう。
僕はこめかみの辺りに指を添えて考えてみる。
アルヴィンは僕が本に熱中して一緒に出かけないのが面白くないらしい。
…それはつまりあれか、まさかとは思うけどあのアルヴィンが本に嫉妬してるのか?
その結論に至った時僕はあまりにびっくりしてぽかーんとしてしまった。
まさか開いた口が塞がらないなんて状態に本当に自分がなるだなんて。
それにそんな些細なことにアルヴィンが嫉妬するだなんて思ってもなかった。
でもこれは全部自分の想像で、もしかしたら全部自分の勘違いなのかもしれないけれど、それでもよかった。

だって僕ばっかりアルヴィンを好きだと思ってた。

一方通行だったはずの好きの気持ちは、もしかしたら今は少しは交わっているんじゃないだろうか。
そう思うと僕はなんだか口角が上がっていくのを止められなかった。
嬉しい、そんな気持ちが胸いっぱいに広がった。
相変わらず難しい、そしてどこかばつが悪そうな顔をして僕の前に突っ立っている長身の彼を見上げながら僕は言った。
…今なら言える気がした。

「ねぇ、アルヴィン、僕はアルヴィンが大好きなんだ」

それは僕が生まれて初めてした告白だった。
アルヴィンは突然の告白にビックリしたのか、目を軽く見開きながらも何も言わずに僕を見下ろしている。

「アルヴィンと二人でいると胸がドキドキして今にも破裂しそうになるんだよ。
 だから極力二人でいるのを避けたかった。
 …怖かったんだ、この気持ちがアルヴィンにばれてしまうのが。
 気持ち悪いって思われるんじゃないかと思うとずっと言えなかった。
 それにとても二人で居て冷静でいられる自身なんてなかったんだ」

言ってしまった…でも僕は、ずっと心の中を支配していたもやもやとしたものが晴れた気がしていた。
アルヴィンがどんな返事をしてこようと、それをそのまま受け入れようと思えた。

アルヴィンが口を開くまでほんの数分、いや数秒だったかもしれない。
静かな部屋に自分の心臓の音だけが大きく響いている、そんな気がする。

「ジュード…俺もジュードのことが好きだよ」

嘘つきな彼のことを皆は信用出来ないっていうけれど、僕はこの言葉だけは信じようと思った。
だって何故か一瞬泣きそうな顔をして、それでもアルヴィンは僕のことを抱きしめてそう言ってくれたから。

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