キミとのセカイ18




11月も下旬に入り寒さが刻々と厳しくなってきたある日。
ガチャンバリンッって盛大な音に僕は飛び起きた。
えっ、な…何があったの…!!?
まだ少し寝とぼけた頭で横を見るとアルヴィンの姿がない。
僕より早くこの人が起きるなんて珍しいな、と思いつつも閉められたドアの奥の音がした方に視線をやる。
なんだか嫌な予感しかしないんだけど、見に行ったほうがいいだろうか?
そう自分で自分に問いかけながらも何があったんだろうという好奇心に負けて恐々とドアを開ける。
すると床の上には卵が2つ落下してくしゃりと潰れているのと、お皿が2枚程割れたのだろう欠片が散乱していた。
コンロの上にはフライパンの上でベーコンだったと思われる黒い物体が焼かれた跡がある。
オーブントースターにはこれもまた真っ黒な墨とかしたパンが入っているように見える。
そしてその傍にはしまったという顔をしたスウェット姿のアルヴィンがいた。

「ア…アルヴィンどうしたの?…大丈夫?」

「あ、あぁ…悪い、起こしちまったよな」

今の惨状を見る限りではきっとアルヴィンは朝食を作ろうとしていたんだろう。
でも料理が苦手で一切やらないと言っていたのに…どうして?
僕はアルヴィンが空腹を我慢出来ないほどそんなに寝坊しちゃったんだろうか、と思って後ろを振り返って時間を見たけれどまだ8時になったところだ。
今日は休日で確かバイトも休みだといっていたし、普通ならまだ寝てる時間だろう。

「もしかして…料理をしようとしたの?」

自分の中でほぼ確信に近い質問を投げかけると、アルヴィンは少しばつの悪そうな顔をした。

「…今日はなんかやたら早く目が覚めて、ね。
 毎日ジュード君に料理作って貰ってるから今日くらいは俺がやってみようかなー…って思ったんだけどさ。
 やっぱり慣れないことはやるもんじゃないな」

最後は苦笑しながら肩を竦めてそう言うアルヴィンだったけど、僕は内心少しびっくりしていた。
だってあのアルヴィンが、生活能力の欠如したような人が、自分から料理をしようだなんて思うことは凄いことなんじゃないだろうか。
たとえそれが失敗に終わったとしても。

「そんなことないよ、僕アルヴィンが料理作ってくれようとしただけで嬉しいよ?
 失敗したっていいじゃない、僕だって初めて料理した時はとても食べられるものじゃないものしか出来なかったし」

「へぇ、おたくみたいな優等生にもそんな時期があったとはね」

「そりゃそうだよ、誰だって最初から完璧に出来るってわけじゃないんだから」

僕はそう言うとしゃがんで割れたお皿の破片をそっと拾い集めてゴミ袋に入れ始める。
するとアルヴィンもまぁそりゃそーだわな、とか何とか言いながら自分の傍にある欠片を拾い始めた。
卵の殻も拾い集め最後に雑巾で綺麗に拭くと元の綺麗な廊下が姿を現す。
ふぅ、と一息つくと再度悪かったなという声が上から降ってきた。

「気にしないで。
 でも今日の朝食どうしよう、卵もベーコンもパンも残ってるので最後だったから食べるものが何もないよ」

そう困ったように言う僕にアルヴィンは少し考えるように顎を手で触りながら

「ん――じゃあ今日は外に食べに行くか」

という素敵な提案をしてくれた。

「えっ?ホントに!?やったぁ!」

外でモーニングなんてしたこと一度もないから、嬉しさのあまり口から言葉が勝手にでてくる。
アルヴィンはそんな僕を見てクククッって笑った後じゃあ準備でもするかと一言呟くと脱衣所に入っていった。

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