キミとのセカイ11




アルヴィンと一緒に生活をするようになって早2週間がたった。
僕もアルヴィンも夏休み中なので、彼がバイトに行っていない時間は常に一緒にいることになる。
何か特別な用事のない限り必ず夕方頃には帰宅してくる彼に、一度だけ友達とかとの付き合いは大丈夫なのかと聞いたことがあるんだけど、子供はそんなこと気にしなくてもいいんだよって返された。
…確証はないけどきっと彼はそんな子供な僕に気を使ってくれているんだろうな、って思う。
僕なら一人での留守番なんて慣れてるし平気なのに。
アルヴィンの生活スタイルを崩してしまっているのかもしれない、そう思うとなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
だって大学生ってもっと遅くの時間までバイトしたり遊んだりしてるイメージが僕にはあったから。

今日もお昼頃にアルヴィンはバイトに出かけていった。
僕の家事ももう慣れたもので、彼がいない間に洗濯をしてはたきをかけ、この前発掘した掃除機で部屋を掃除する。
ただ、未だに未知の地帯であるクローゼットは開けられずにいた。
ここは今度アルヴィンが休みの日にでも掃除をする予定だ、まぁあくまで僕の頭の中での勝手な予定だけど。

「あ、そうだ今日アルヴィンにバイトが休みな日を聞いてみよう」

そう決めるとそれ以外の場所に掃除機をかけていく。
部屋はもちろん廊下と脱衣所、玄関まで掃除をすると電源をOFFにしてふぅと一息ついた。
これで後は干してある洗濯物を取り込んで、夕食を作るだけだ。
この前炊飯器を発見出来たおかげで美味しい炊き立てのご飯が食べられる用になって僕はほくほくとしていた。

「今日は…肉じゃがにしようかな」

そうと決めると下準備だけはしておく。
炊飯器にといだ米をセットすると6時には炊けるようだ。
そうしてとりあえずの家事をやり終わると僕はこの前の読みかけだった本を読むことにした。
これけっこう面白いんだよね、熱中しちゃって時間を忘れてしまうのが玉に瑕だけど。


チクタクチクタクという時計の音が聞こえなくなるくらい熱中して読んだせいか、残っていた3分の1くらいは直ぐに読み終わってしまった。
今の僕は読んでいた本の主人公と同調して物語の主人公になったような気分だ。
今なら物語のラスボスだった大きなドラゴンにだって戦いを挑めるような気がする。
そんなことを考えながら時計を見ると早6時を差すところだった。
同時にピーピーピーとご飯の炊けたことを知らせる機械音が聞こえてくる。

「いけない、早くしないとアルヴィンが帰ってきちゃうよ」

そう思って急いで洗濯物を取り込んでいると、遠くでガチャリという音がしたかと思うと「ただいまー」という声が聞こえてきた。
僕は少し大きな声で「おかえりなさい」と返事を返す。
これも最初の頃は少し違和感があったんだけど、今ではごく普通のあいさつとなっていた。
ドアを開けてアルヴィンが部屋に入ってくる。
ベランダにいた僕はけっこうな量の洗濯物を持ちながらヨタヨタと部屋に戻ると、その荷物をアルヴィンが受け取ってくれた。

「ありがとうアルヴィン」

そう笑って言う僕にアルヴィンはなぜか一瞬顔を逸らしたかと思うと

「青少年が洗濯物に潰されたら可哀想だからな」

といじわるな返答が返ってきた。

「もう、僕はそこまでか弱くなんてないよ」

ちょっとムッとしながらそう言い返す僕に

「そーかー?じゃあまずはそのひょろんひょろんなその体系どうにかしろよ」

アルヴィンは笑って失礼なことを言ってくる。
確かに僕はまだ子供だしアルヴィンほど筋肉がついてる男らしい身体をしているわけじゃないけどさ。
でも人のコンプレックスを逆撫ですることないじゃないか。

「どれだけ食べても太らないんだよ、それに家事だって結構体力消費するし運動の代わりにだってなるんだからね。
 それなのに…そんないじわるばっかり言うアルヴィンには夕食作ってあげないからっ」

「それは困るわ、悪かったよジュード君、謝るから機嫌なおしてくれよな?ね?」

アルヴィンは持っていた洗濯物を床に落とすと両手を顔の前で合わせて謝ってくる。
いつもならそれで許しちゃうんだけど、今日は違うんだというのをアピールするかのごとくだんまりを決め込んでいる僕に、アルヴィンは更に畳み掛けるように

「明日は俺1日バイト休みだからさ、ジュード君の家事の手伝いもするし」

そう言ってくる彼にやっと僕はしょうがないなぁという顔をして許してあげることにした。
今日の朝の企みが実行出来そうだったからだ。

「へぇー、アルヴィン明日一日休みなんだ。
 じゃあ一緒にそのクローゼットの中掃除しようよ、手伝ってくれるんでしょ?」

「……え?どこ、を掃除するって?」

「だからその未知の地帯を、だよ。そう言ってるじゃない。
 まさか前言撤回とかしないよね、僕あそこの中がいつパンクして雪崩のごとく物が落ちてくるのか不安で仕方がないんだ。
 その近くで布団ひいてる身としては、おちおちぐっすり寝てもいられないよ」

そうニッコリ笑って言う僕にアルヴィンはガックリと肩を落とすと「どーしてもやるの?」と聞いてくるので「もちろん!」と答えておいた。




こうしてアルヴィンは貴重な休みをクローゼット内の整理で終わらせることになった。

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