キミとのセカイ9




買い物は家から歩いて10分くらいのところにある小さめのスーパーで済ませることにした。
アルヴィンが働いているショッピングセンターに行ってもよかったんだけど、この暑い中たとえ10分でも余分に歩きたくはない。
今日は野菜炒めにしよう、そう思って買い物籠の中に必要なものだけを入れていく。
あの家には本当に何もないからそれだけでもけっこうな量になった。
本当はお米も買いたかったんだけど、とても持って帰れそうになかったので諦めた。
近々アルヴィンと一緒に買いに行こう、あれ?でもあの家に炊飯器なんてあったかな、そんなことを考えながら帰りの道を歩いていると額から汗が流れ出るのがわかる。
それを片手で拭うと、あともう少しで家に着くからと自分に言い聞かせ暑い道程を重たい荷物を引きずるように持って歩く。
そんな暑い昼間だからか誰ともすれ違うこともなく、ようやく家まで辿り着く頃には僕は汗びたしになっていた。
誰もいないのはわかっていたけれど、もうこれは昔からの癖みたいなもので「ただいまー」と言いながらドアを開ける。
返事の変わりに閉め切った部屋特有の生暖かい空気が僕の横を通り過ぎていった。

冷蔵庫に買ってきたものを詰め込むと部屋に入って冷房のスイッチを入れる。
漸く一息つきちらっと時計を見るともう2時になろうかという時間だ。
そろそろ布団を入れたほうがいいだろうか。

「あ、いけない洗濯物をまだ干してなかった」

洗濯しっぱなしで買い物に出かけちゃったんだった。
思い出して脱衣所まで行くととうの昔に洗濯は終わっていたみたいで、後は干すばかりになっていた。

「えーっと、ハンガーは…っと」

辺りを見渡すと洗剤の入っていた横の棚に適当に突っ込んである。

「よかった、ないかと思った」

ちょっとホッすると、ひとつずつハンガーに掛けそれをベランダの物干し竿に掛けていく。
少し干すのが遅くなっちゃったけど真夏だしまぁ問題ないだろう。
ついでに布団は取りこんでおいた。
お日様の香りがしてとても寝心地がよさそうだ。

「さて、と。宿題でもしようかな」

僕はボストンバックから一冊の本を取り出した。
厚さが3センチ程もある所謂冒険ファンタジーで、読書感想文を書くために読まなくちゃいけない。
カチカチという時計の音と冷房特有の機械音、それとたまにページを捲る時のぺらっていう音だけが室内に響いている。
そんな空間はなんだかとても居心地がよくて、僕はつい本に熱中してしまった。
丁度3分の1くらい読み終わった頃、切りのいい所で顔をあげて時計を見るともう5時半を差していた。

「そろそろ洗濯物も乾いたかな」

読んでいた本を机に置いてカーペットの上から立ち上がるとベランダに行って洗濯物を取り込む。
それらを丁寧に畳むと、僕のものはボストンバックに仕舞ってアルヴィンのはとりあえず机の上に置いておいた。
バスタオルとかは元の位置に戻しておく。
ついでにベッドの上に脱ぎ捨ててあったスウェットも畳んでおいた。
確かアルヴィンは6時には終わるって言ってたから、何もなければ6時半か遅くても7時には帰ってくるだろう。
そう見越して僕は料理に取り掛かることにした。


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